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第103話【 吹き荒れる霊力と魔力 】


 <ゴフォオオオ━━━━━━━━━ウゥ>


世界樹シルの言葉を聞いた瞬間、スルトから鋭く炎が上がる。

その表情は、再度悪しき悪魔を見るかの様な目をしていた。


エルは咄嗟に、仮死状態のまま倒れゆくアルガロスとスルトの間に入り手を広げる。

前回……、スルトが突然アルガロスを襲った事が頭をよぎったからだ。


地面に横たわるアルガロスの前で、手を広げたエルから強大な魔力が噴き上がる。


スルトの霊力とエルの魔力がぶつかり合い、草原にはいくつもの渦が出来ていた。


「ちがう! 違うんだよスルト!! 俺達が考えてるのは……」


<バリバリバリゴフォ━━━━━━ォォウゥ>


そう言いかけた時、更に別の強大な霊力がエルとスルトを握り締める様に吹き荒れた。

緑色の精霊、世界樹の護衛でもあるドリュアスが目を吊り上げながら霊力を放ち、2人を睨んでいたのだ。


【 ここは神聖な世界樹の草原。争うなら私が排除する 】


更に膨れ上がるドリュアスの霊力が、スルトやエル達の身体を締め付けていく。

そんな緊迫した中、世界樹のシルがスルトへと歩み寄り手を伸ばした。


そして、興奮しているスルトの腕に<ポンッ>と触れた。

その瞬間…。


<バシュンッ>


突然小さく、黒い塊になるスルト。

この姿は、スルトが平常心、もしくは探索する時に敵に見つからない様にしている姿だ。


それを世界樹のシルが、強制的に操作したのだ。


【 おろっ? おろろっ?? ちっちゃいのか? 】


スルトは短い首を左右に振り、自身の身体の状態を確かめている。

その間に、カルディアがアルガロスへと近付き瞬時に回復魔法を掛ける。

そして、仮死状態から戻ったアルガロスを抱きかかえる様にして上半身を起こした。


アルガロスはまだ少し苦しそうな表情をしているが、大丈夫なようだ。


その様子を世界樹のシルが確認した後、スルトの方に目をやった。


【 スルト、落ち着いて下さい。これから言う事をよく聞いて下さいね 】


【 ん? ろろ? 】


スルトは困惑した表情をしているが、世界樹のシルが言っているので聞かざるおえない。

小さな黒い塊となったスルトを手のひらに乗せ、世界樹のシルは淡々と語っていく。


【 虚言に似た流説のマヴロス・オーブ。その真実と解読に要する時間は、この罪深き人間の寿命より遥かに長い時が必要かもしれません 】


【 マヴロス・オーブの言われが仮に真実で、既にいち個体として機能している現状から……、猶予はあまり無いと考えられます。もしかしたら、解読中に本格的に復活するやもしれません 】


アルガロスはエルとカルディアに支えられ、よろけながらもも立ち上がり、シルの言葉に耳を傾けていた。


【 それより…… 】


【 罪深き人間…このアルガロスに、悪魔を呑み込ませる事が出来れば、マヴロス・オーブの恐怖から逃れる事が出来るかもしれないのです 】


【 古のマヴロス・オーブ。その存在を逆手に取り、我々を優位にする事が出来る。これは精霊界や下界にとってわずかですが安政を意味する事かもしれません 】


エル達も、スルトも世界樹シルの語りに静かに耳を傾けていた。

しかし、エルには疑問が……。


「……もし、悪魔を呑み込む事が出来なければ……?」


<フォッ………>


世界樹の草原に霊力の風が緩やかに漂い、草木を優しくたなびかせている。


エルの問いかけに、シルの小さな口が重く動く。



【 マヴロス・オーブもろとも無へと遷移させます 】


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