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第102話【 望まぬ言葉 】


【 仲間を悪魔の(ひつぎ)にしてしまった罪 】



世界樹シルの言葉がエルの心を締め付ける。

その言葉を呟いた瞬間、突然シルを起点に、無数の古の文字が浮かび上がり渦を巻きだす。


<ドババババッ>


その文字が草原一帯に広がり、一部の文字だけがアルガロスの回りをゆっくり回転しながら浮遊している。


世界樹が術式を一度展開してしまえば、何があっても誰も止められない。

そんな状況を見て、モサミスケールは不安を感じた。


【 シ、シル…。アルガロスは…… 】


【 分かっています。マヴロス・オーブらしき塊の判別と刻印の解呪が出来るかどうか試してみます 】


そう言いながら、世界樹であるシルはキリリとした表情で再度アルガロスの方へ向いた。


アルガロスは目が黒くよどんでおり、首を垂れながらその場に立ちすくむ。

この時既に、彼は仮死状態となっていたのだ。


世界樹シルの小さな口からこぼれ出る音が、アルガロスを包んでいく。


     【 塊状の広義、狭義 】


       【 摘みあげ 】


        【 摘出 】


        【 ……… 】


       【 定義、分析 】


        【 解読 】


        【 判読 】


       【 洗浄、浄化 】


        【 ……… 】


マヴロス・オーブと思しき塊がアルガロスの身体に施した魔法式を2次元、平面に置き換え、公式通りの文字、模様を摘みあげて、それにそぐわない魔法式を摘出する。

そして事象を簡素に読み取り分析していく。

その後は、解読、解呪と進んでいくのだが……。


「んっ……」


気絶していたカルディアが目を覚ます。


「カルディア!気がついたんだね。よかった」


カルディアを気遣うエルは、座り込んでいるカルディアの肩に手を触れた。


<ポウンッ>


エルの手が、温かく柔らかく輝いている。

気がついたカルディアに、再度状態回復の魔法をかけたのだ。


「大丈夫よエル。ありがと! それよりアルガロスは……」


「悪魔の刻印を解呪出来るかどうか、シルが試してくれてるんだ」


そう言いながら、エル、カルディアは、心配そうにアルガロスの方に目をやった。



  <ゴフオォォォォ━━━━━━ウゥ………>



古の文字が渦を巻きながら消えていく。

それは、儚く、もろく……。

世界樹のシルは、無表情でアルガロスを見つめていた。


【 ……やはり解呪は不可能です 】


大地、生命の源である世界樹ならと抱いていた希望が、その言葉によってエル、カルディアの小さな希望が崩れ去っていく。

さらに……。


【 悪魔特有の魔法式があるようで、既にアルガロスは悪魔と…… 】


世界樹のシルは、悲しそうに罪深き人間のアルガロスを見つめていた。


【 不偏の等質……。同一化しています 】


エルの眉間に深い筋が入る。

シルからこぼれ出た言葉の意味が、ぼんやりだが分るからだ。

でも、そうですかと受け入れる事が……。


「ど……同一化って……!?」


【 全ての理解は出来ませんでしたが、既にいち個体としてアルガロスと悪魔は機能しています 】


世界樹シルの衝撃的な言葉を聞いて、エルの小さな望みが空洞化していく。

言葉無く唖然としているエルの近くで、突然……。


<ゴフォオオオ━━━━━━━━━ウゥ>


スルトから鋭く炎が上がる。

その表情は、再度悪しき悪魔を見る目になっていた。


「ちがう! 違うんだよスルト!! 俺達が考えてるのは……」


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