7話
OFUSE始めました。
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ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
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さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
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出張だよ出張。またこうして10日もかけて馬車旅をしてきたわけだ。父に現地を見て来いと言われたからな。工事の進捗と、工事費の算定を貰って来なければならない。
街道の修復は既に終わっているんだよ。そんなに何日も放置出来る訳がない。査定官が帰ったその日には領都へ早馬を飛ばして、近くの町で大工や冒険者を雇って工事をしていたんだよ。
私が到着したころには街道の復旧は終わっており、関所の建物の工事が終わるだろうと言う算段になっている。工事が遅れていなければな。
なに、工事の遅れはよくあることだ。前世よりそうだ。工事は早く終わるときもあれば、ギリギリの事もある。何なら遅れることもしばしばあるものなのだよ。
完成検査に行ったのは良いが、出来ても居ないという事は多々あるのだよ。それでも工事完了の判を押さねばならない時もある。無茶を承知で工事が終わっていたと言わないといけない時もある。
そんな事には慣れている。最も、ここ最近の天気は悪くはないと情報が入っている。雨が降ったのはそれ程多くはない。余程で無ければ、この滞在中に工事が終わるだろう。
私の心の中は落ち着いている。国費が5割も入る工事だが、それは街道だけ。そっちさえ終わっていれば、後の事は些事として片付けても良いのだよ。どうせ国費の算定は終わっているだろうからな。
私の今回の出張は完成検査なのだよ。工事が恙なく終わったことを確認するためだ。兵士を寄こしても大丈夫だと最終判断をするために来ているのだよ。
これも父からの勉強をしろという事なのだろうな。まだ内務次長となってからそこまで月日が経っているわけではないからな。現場を見ることも1つの仕事なのだよ。
現場を知らない者に管理を任せる事ほど怖いことは無いからな。兄もまた課題を出されていることだろう。もしかしたらもう1つの魔王災の方を管轄しているのかもしれないな。
兄の方が経験は豊富だからな。私ではまだまだな点が多く有る。それは自覚しているとも。まだまだ研鑽が必要だ。交渉力もまだまだ付けなくてはならない。
現に今回の査定の時も父であれば、主権を放棄させたうえで1割の費用ももぎ取れていたのだろう。もしかしたら2割は貰えていたのかもしれない。
それを思うと、私ではまだまだだという事なのだよ。楽勝の査定だったのだ。もう少し引き出せたのではないかと思うのだよ。
当時の事を振り返れば、主権を放棄したことに頭が持っていかれて、相手に負担を要求するフェイズは終わったと思ってしまったのがいけなかったのだろう。
主権を放棄させたうえで、さらに要求をする。それが出来なくては今後、辛い戦いになった時に相手の思う様にやられてしまう。それでは駄目なのだよ。
先に最大限の要求をしなくてはならないんだ。そこからじりじりと下がりつつ、妥協点を見出さないといけない。前回のあれば例外だ。
相手がわざわざボールを投げてきてくれたのだから、さらにもう3歩踏み出さなければならなかった。それが結果的に1歩になろうが、それはそれで良いのだ。
立ち止まって受け取ってしまった。前に行けたのにも関わらずだ。利益の最大化を考えていかなければならないのだ。その程度の事で立ち止まってはいけなかったのだ。
……馬車が止まったな。関所にまで着いたのか。道中大きく揺れることは無かったな。違和感なく木道に出来ているという事だろう。それは良いことだ。
「到着致しました」
「解った。外に出る」
さて、関所はどうなっているのか。……ふむ、一見して、出来上がっているように見えるな。既に建物も出来上がっている。門は簡易的なもので構わない。それで問題は無い。
さて、それでは出来形検査だ。関所としての機能が正しく作られているのかの検査をする。まずは、ここの工事の責任者に会わなければならんな。一通り説明をさせねばならん。
「さて、今回の工事の責任者は誰だ?」
「俺だ、です。あー」
「言葉は話しやすいようにして結構。普段の口調でいい」
「そ、そうか? ならこれで行かせてもらうぜ、貴族様」
言葉は解りやすい方が良い。話し慣れない口調で話されても解りにくくて堪らない。こういうのは上の者から言わないと向こうは解ってくれないからな。
こういうのは現場言葉で構わないんだ。形式を考えれば駄目なんだろうが、こういうのは形式ではない。大事なのは中身だ。中身さえ整っていれば当時の口調などはどうでもいい。
要するに、私が父や兄に説明ができる様に説明をしてくれないと困るんだ。言葉の変換は私がやる。現場言葉で良いんだ。それを難しく言おうとするから余計に解らなくなるんだよな。
門に建物、厩にそれぞれ待機者の宿泊所、待合室に責任者の机まで。設計通りになっているのか、不足が無いか、または過剰な部分が無いのか。それを一通りチェックしていく。
此度に任せた業者は中々に腕がいい。作られたものが殆ど一致している。これであれば、私も簡単に報告が出来そうで安心した。
では最後に出来高検査と行こうか。街道工事と関所工事はちゃんと分けて算出されているのかを検査しないといけない。街道の方は国費が入るからな。
……ふむ。出来高もちゃんと分けてくれてあるな。感心感心。こういうのは分けないといけないんだが、分けずに一緒に算出してしまう事が多く有る。
工事業者に入る金は同じだからな。だから平気で雑費などが国費の方に紛れ込んでいることがあるんだが、今回の業者はしっかりと管理をしてくれているようだ。
「出来形、出来高検査は完了した。これは原本だろう? 控えは用意してあるのか?」
「用意してある。問題はない」
「結構。では原本を貰って行く事にする。此度の工事はこれにて完了とする。街道の出来形検査については帰り際に最後確認をしていく。以上だ」
まあ言いたいことはあったが、目は瞑っておくべきだ。関所の方に酒代が含まれていたが、その位は見逃さないと辺境伯家としての度量が疑われる。
酒は士気高揚に必要な物資だからな。遅滞なく工事が完了していたんだ。多少の事は良いだろう。父も兄も問題にはするまい。この程度の事はよくあることだ。
流石に補助の方に入っていたら訂正させるがな。補助の入る方には問題は無かった。であれば、これで1件落着である。思った以上に時間が余ったな。
まあ最後に木道の部分だけ見て終わりにしようか。思ったよりも早く帰れるな。それは良いことだ。予定通りに事が運ぶことは良いことだからな。これで街道関係は一通り終わりだな。