29話
OFUSE始めました。
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さて、今日は査定の日だ。現在は査定官と一緒に現地に行っている最中である。もうすぐ到着するのだが、何ともまあ若い査定官が来たものだな。
査定官にも年齢はある。同じ人なのだから当然ではあるんだが、査定にもある程度の人材を寄こしてくれないと纏まらない時があるのだよ。今回の査定は無事に纏まるのだろうか。
若干どころではなく不安なのだ。若い査定官であればやり込めることは可能だ。可能だが、判断が遅いという可能性がある。何分経験が浅いからな。何処まで見ていいのかが解らないだろう。
普通はそういう時にはベテランを付けるものではあるんだが、今回はついてこなかった。ついてこなくても良いのかと本気で疑ったんだが、本当についてきていないらしかった。
まあやりにくくはあるが、こちらの要望を押し通すには容易い相手だろうな。新人査定官には悪いが、こちらの要望は150%で行かせてもらう。通れば儲けものだ。
普通であれば通らない事も要望してしまう事にする。新人の査定官1人とは舐められたものだ。やり手の査定官を連れてこなかったあちらが悪い。此処は強気で押すべき時だ。こういう時に手を緩めるべきではない。取れるのであれば、取っておくべきだ。
さて、現地に着いたな。堤防は勿論の事直っている。直したんだから当然の事ではあるんだが、まあそれは置いておくとしてだな。ともかく査定の始まりはこちらから主導していかなければならないだろうな。まあその辺は何方でも良いのだが。
「では、まずは今回の魔王災の被害状況を説明しましょう。今回の魔王災は河川を下ってきたことによって引き起こされました。それをこの区間で食い止め、両岸約1㎞が被災。そして、その近辺がさらに被災を受けたという状況である」
「あの、河川堤防が被災したとあるんですが、どの区間が被災したのでしょう? 現地では解らないのですが?」
「既に工事は着工し、終わっております。こちらに資料を用意いたしました。ご確認をください。この辺りの地図の写しと被災のあった場所の位置図となっております」
「既に工事は終わったのですか? あの、私は現地で何をみればよろしいのでしょうか。これでは机上査定でも良かったのでは無いですか?」
机上査定とは、現地に行かずに会議室や応接間で書類だけを見て魔王災の被害の査定を行う方式だ。勿論その方式でも構わないのだが、普通は現地査定を行う。というか、向こうが指定をしてくるんだがね。こちらが机上査定を申請することは出来ないのだよ。
そんな事も知らないのか? 本当に素人が査定官になった感じだな。勉強させるつもりで居るのかもしれないが、それではベテランを1人付けないとどうにもならんではないか。
まさかアンカリアス辺境伯家が舐められているわけではあるまいな。実績を買ったからと言って、身内になったと思われているのであれば、飛んだ勘違いだ。
私はしっかりと搾り取る予定で居るんだぞ? 身内な筈がない。手加減をする気など更々ないというのに。まあこういうのは送り込んできた奴が一番悪いのだ。次期王が一番悪いんだよ。
「あちらをご覧ください。あそこはまだ工事中です。尤も、河川堤防は既に全て修復済みであり、今は周辺被害の工事をしているところではありますが」
「あの辺りにも被害があったのですね。なる程。それは今回の魔王災で被災されたと考えてもよろしいのでしょうか?」
「それを判断していただくのが査定官のお仕事でございます。我々は被災か所を直しているだけに過ぎません。放置すれば、その地の利用が出来なくなりますからな。建て直すのは当然のことであります。今後はこの地を何方が統治されるのかは解りませんが、被災状況を残したままで引継ぎをするわけには参りませんので」
「それはそうでしょうね。解りました。あちらも魔王災での被災という事で処理しましょう」
当然の事ではあるんだが、辺境伯家は動く。それはもう動いていく。前線が押しあがるごとに、辺境伯家は変動していく。その後ろを誰が統治するのかはその時の派閥の中で決めることだ。
その時に変な土地を与えたとなっては辺境伯家が疑われないといけない。土地はなるべく整地しておき、使いやすいようにして与えていくのが普通である。例外はそこにはない。
基本的には辺境伯家に守られて生活する貴族家は、辺境伯家の様に、土地を余らせたりはしない。辺境伯家はわざと土地を余らせている。その自然の要害で魔物を食い止める為だ。
全てを開発した方が辺境伯家は発展するだろう。その分魔物被害も大きくはなるんだが。ぶっちゃけると、手が回らんのだよ。辺境伯軍も勇者も有限だからな。
だから、今回の様な魔王災が起こった地点は、魔王災と関係の無い工事も同時に行う。勿論査定官にバレない様にだな。整地は必要ない工事である。
クレーターの処理や、盛り上がった地形を均すのは当然だが、魔王災以外の土地の整備もしている。それは勿論の事黙っておく。設計書はあくまでも別物で行っている。普通は魔王災と認められないからな。だが今回は認めてくれそうな気がしている。
話の持っていき方次第な所はあるにせよ、辺境伯家の工事も一部魔王災として取り込めそうな気がしている。今回の査定官は甘々だからな。何も解っちゃいない。
ベテランを寄こせとは言わないが、こういう時に丸め込まれないようにするためにもベテランは付けるべきだ。新人ならば特にだな。私は丸め込む気満々で話を進めるつもりである。




