18話
OFUSE始めました。
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ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
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さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
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「アンカリアス辺境伯様、領内にいるユースタニス様より、早馬が届きました」
「解った。一読する。渡してくれ」
「かしこまりました」
ユースタニスは政には才能があったのだが、軍事に関しては全く駄目な子であった。自分で武器を振るうのも駄目であったが、軍を率いる事にも才能は無かった。
何と言うか、自身の管理する兵がやられると言う事を酷く嫌っていたように感じる。それは悪いことではないのだが、捨てなければならない時もあるのだ。それを解っていて出来ないのが駄目なのだ。
その分政に関しては非常に優秀とまではいかないにしても、十分な考えを持っており、今ではロバートの下に置いて使っているのだが、政では思い切ったことが出来るのが不思議な所だ。
政も戦も、人を切り捨てると言う点では変わらない。何処かで切り捨てなければならない時が来るのだ。それを嫌っていては全体で齟齬が発生する。
そして、最終的には大事となり、大損害を被ると言うのが一連の流れだ。政では出来て、戦では出来ないと言うのが少しばかり気にはなるところなのだが、今の所は問題無いだろう。
……ほう、ロバートの実績を売ったか。第一王子に売ったのだな。まあそれも当然と言えば当然か。第一王子には実績らしい実績は無かったからな。まあどの王子にも実績など無いのだが。
それにしても、この契約書は本当だろうか? いや、本物は領内にあるのは解るのだが、この契約内容を本当に結べたのかに疑問が残る。こんな奴を特使に選んだのか?
次期王だと言われた第一王子が取るにしては、いささか疑問が残るな。さて、何処の派閥が仕込んだ毒であったのか。それが解らんことには判断できんが。
少なくとも、書簡には正副で契約書を2枚作り、1枚は保管しているとある。その辺りは抜かりはないか。契約書1枚であれば、無かったことにされたであろうからな。
これほどの無能を遣わせたのは一体誰なのだろうな。余りにもこちら側に有利な条文過ぎて、ユースタニスを疑いかねんような文章であるのだが。
「誰か居るか?」
「お呼びでしょうか?」
「ロバートを呼んできてくれ。早急にだ」
「かしこまりました」
実績を売るのは問題ない。餌として第二王子に売るかもしれないとチラつかせたのは良い。問題は実績の口止めが何もされていないという点だ。こちらで話してしまう事も考えられない無能が使者でいったという事か?
流石にそこまでの事は書いてはいないが、まあこれは口止めをしておく方が後々使えるだろうからな。精々踊ってくれれば良いだろう。
後は、8割では無く、9割でも良かったとは思うな。第二王子に売るのであれば、9割でも売れただろうからな。まあ流石にこれは削除してくれと言われるだろうが。
鉱山の開発費をと書いてあるが、期間については何も書いていない。つまりは、鉱山を開発し続ける辺境伯家に金が入り続けることになる。
しかも開発費という事は、鉱山の利益を除いた額という事と読める。わざとそう書いたな。要するに赤字部分だけを清算しろと言っているのだろう。
そうすれば、開発すればするほどに辺境伯家に金が入ってくる。幾ら辺境伯領が動くとはいえ、テリシニアを手放す頃にはもの凄い金額が流れる仕組みになっている。
それを見落とすような間抜けが特使として行ったという事なのだから、大した所では無い所が動いたか? 私の留守に行けば、売り渡して貰えると勘違いをしていたようだな。
まあ特使は間違いなく死ぬだろうな。そういう所は解っていても出来るのだから解らないな、ユースタニスは。人が死ぬことを恐れているようには思わんのだよ。
自軍が死ぬという事に対して過剰に反応していると言った方が正しいのかもしれんな。特に、自分が割り当てられた兵士が死ぬのを良しとしない。それでは戦は勤まらん。
内政か軍務か。何方かで使えれば問題はないがな。両方とも使えないとなると色々と難しい所があるのだが、これだけ政の事が出来るのだから、もう少し頑張って貰おう。
「失礼します」
「ああ、入れ。ユースタニスから書簡が来ているぞ」
「ユースタニスからですか? と言うと、父上が警戒していた話ですか」
「ああ、そう言う事だ」
契約書の内容をロバートに見せる。さて、何と反応するのか。実績を売ったことを怒るのか、それとも契約内容で気になるところが見つかるか。さてさて、何方であろうか。
怒ることもまあ良い。初めて自分で上げた実績だからな。それに関しては仕方がない部分ではあるのだが、契約に仕込まれた毒を何処まで見抜けるか。それも試さねばならんからな。
「ユースタニスは私の実績を売ったのですね。しかも法外に高く売りつけたという事ですか」
「額面はそれだけではないぞ。期間を書いていないからな」
「期間を? ……そう言う事ですか。今後の開発費の面倒も見るとあるのですね」
「そう言う事だ。それに口止め料は含まれていない。だが、口外は禁止だ。そちらの方が恩も売れるからな。向こうは何時それについて言われるのかを気にし続けなければならないからな」
「確かにそうですが……よくもまあこんな条文になりましたね?」
そうだろうな。そう思うのが普通である。余程ユースタニスが上手くやったのか、特使が愚か者だったのかは知らんが、こちらに都合が良すぎるのだ。
何かの罠ではないかと疑う程だからな。一応、帰り道には気を付けるが、一体どの派閥が毒を入れにきたのかを調査しなければならなくなった。
大したことでは無くて良かったがな。しかし、やられたからには知らん顔していては、図に乗るだけだからな。何かしら対処をせねばなるまいて。
第一王子の取り巻きの一部なのだろうが、何処が怪しいとも言えんな。一番怪しいペインモラン辺境伯はそもそも第三王子を推していたはずだ。となるとそこは違うだろうな。
それでも、纏まった金が入ってくるのは良いことだな。流石に第一王子が反故にすることは無いとは思うが、反故にした場合は大々的に公表をしてやらねばなるまい。さて、どう動くのが正解か。