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勇者の後始末  作者: ルケア
2章
10/44

9話

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

 夜が徐々に明けていく時間帯に、アンカリアス辺境伯軍は魔王とその取り巻きの元に辿り着いた。幾百幾千の魔物が軍に襲い掛かってくる。


 向こうの領域内に入ってしまったのだ。前方から襲い掛かってくる魔物に軍は防戦一方になってしまっている。だがこれで良い。無用な犠牲は出さない方が良い。


「ほれほれ、寝ている者を起こして参れ。パワースワップ! 今起きずして何をすると言うのか。ガードスワップ! 漸くと奴さんのお出ましじゃぞい。スピードスワップ!」


 交換の勇者が次々と襲い来る魔物とこちら側の兵士の能力を入れ替えていく。乱戦になることは許されない。それでは負傷する者が多くなりすぎる。


 外側の兵から徐々に強化させていく。交換の勇者の本領発揮だ。大軍対大軍の場では個々の能力よりも連携がものを言うとはいえ、強すぎる個々の力をどんどんと入れ替える。


 交換の勇者には見えている。どれだけの力があるのかどうかを。他の勇者には無い、そう言う目をしている。だからこそ、効果的に能力を交換できるのだが。


 防御陣形を崩さず、来る魔物を撃退し続ける。これで軍隊を動かすのに金が掛からなかったら歴代でも上の成績を残せただろうに。魔王の能力を確実にスワップ出来れば、どれ程の強さを誇るのか。


「さあ、見えたぞい。人狼の魔王が出てきおったぞい。パワースワップ! ……やはり無理か。作戦はそのまま続行、魔王の相手は勇者が務める。おんしらは防御陣形を崩さず」


 魔王の能力を奪うのには失敗した。だが、幾多の魔物の能力は奪った。効果は魔法が切れるまで。たとえ死んだとしても、急に入れ替わることは無い。


 この1戦を乗り切るだけの時間は優にある。兵士は焦らず、襲い掛かってきた魔物の対処をするのみ。自分よりも弱い魔物だ。簡単に切り伏せることが出来る。


「のお、交換の。奴さんは何時になったら仕掛けてくるかのお」


「心配せんでも15分も我慢できまいて。もう少しゆっくり待っておれ剣聖の。魔王はおんしらにまかせるぞい。儂には荷が重そうだ」


「何をいう。そこまでやられては待機組が馬鹿らしくてやっておれんよ。最後の良い所は掻っ攫わせてもらおうかのお」


 隣に控えるのは剣聖の勇者。剣を持った時の身体能力上昇という制限のある能力ではあるのだが、剣を持たせれば、誰よりも強く。さらには剣まで強化するという壊れっぷり。


 歴代の勇者の中でも5本の指に入ると言われている猛者である。65歳という年齢にも関わらず、腰も曲がっておらねば、体幹の衰えも知らず。


 今回の作戦の切り札とも言える勇者が、この剣聖の勇者だ。彼がいれば魔王の討伐は何事もなく行われるだろうとの風格がある。


「やれやれ。儂の居る間に魔王に出くわすとはな。魔王も運がない。ちょいと突いて出鼻を折ってやるのも面白いと思うのだがな。どう思う?」


「起きたばかりで、いきなり何を言うかと思えばそれか。まあ手を出せるのであれば出してやればええ。その方が手っ取り早くて良いかもしれんのお」


「おんしがやれば、出鼻どころか腰が砕けてしまうわい。重力の」


「なあに。そこまでやっては魔王が逃げるでは無いか。ちょいと手加減をしてやるのよ。まあ任せておけ剣聖の。仕事は直ぐにやってくるぞ。グラヴィティプレス!」


 重力の勇者が魔王のいる一帯を重力で押さえつける。躱す間もなく地面に縫い付けられた人狼の魔王だが、重力に逆らい、両足で立つ。


『ウオオオオオオオオオオオン』


「さあ来るぞ、剣聖の。後は任せたぞ」


「任せておけ。軽く屠ってやるわい」


「全く。若いもんは待つという事も出来んのか。兵士諸君。魔王が突っ込んでくるぞい。道を開けよ。巻き込まれるで無いぞ」


 重力が何倍もかかる力場から脱出し、魔王が襲い掛かってくる。兵士は防御陣形を保ったまま道を開ける。剣聖の勇者までの道を開ける。


「はああああああああ!」


『ウオオオオオオオオオオオン』


 剣と爪がぶつかると同時に爪が折れた。いや、爪を切ったと言う方が正しいのかもしれない。剣聖の持つ剣はただの鉄の剣だ。決して聖剣なんぞではない。まあ聖剣なんてものはこの世界には存在もしていないのだが。


「温い! 温いわあああああ!」


『ウオオオオオオオ…………』


 人狼の魔王の首が飛ぶ。血飛沫を上げて吹き飛ぶ。それで勝敗は決した。魔王が討ち取られ、勇者の勝利となった。だが、戦いはここでは終わらない。


「魔王は討った。攻勢に出よ。密集陣形解除。各個撃破せよ」


「「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」


 魔王は討ち取りはしたが、魔物はまだまだ沢山いる。これを処理してからが本当の戦いだ。何の為にここまで軍を進めたのか。その意味を考えなければならない。


 単純に魔王を討ちにきた訳では無いのだよ。此度の戦争は領土獲得戦争。人間対魔物の戦争だ。人間側が領土を貰いにやってきたのだ。


 急な山間部の隣に巣食う魔王を討ち果たしたのだ。ここに作ろうとしているのは新たな鉱山の町。何が採れるかはまだ不明だが、何かしらの鉱石は採れるだろうと踏んでいる。


 山間部に魔物がいないのかと言われたらそうではない。山間部にも魔物は住んでいる。人間の住めないような所でも、魔物は住み着く。それの睨みも効かせねばならない。


 暫くは開拓と山間部の魔物の調査だ。山間部にも魔王が居るのであれば、本気で老骨に鞭を打って山間部を登っていかなければならない。


 それだけは勘弁願いたいと、勇者の誰もが思っていることだ。そう言うのは若いのに任せるとする。自分たちは此処の防衛を任されようではないか。


 その後も開拓と調査は順調に進み、大きく開けた土地が出来上がるまで、兵士は木を切り倒し続けた。後は此処に町を築くだけである。

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