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08 切っ掛けのメール


「ん?」


 エリオットが艦長席に座っていると、メールが届いた。


 送ってきたのは、第三皇女のルイーゼロッテ様だ。


 こういった通信技術は、まだ技術の解明が行われておらず、発掘された陸上艦同士でしか行えない。


 賢人会議中立国では、次々に新しい商品や技術が開発され、時代の最先端を行っているが、それでも手紙は紙を使い、郵便で送るしかないのだ。


 そのため、基地と称される要塞や軍港には、駆逐艦などの小型艦が固定されていて、それで通信を行う。


 司令部イコール陸上艦となっていることがほとんどだった。


「ビデオメール?」


 メッセージには、ご褒美じゃ、としか書かれていない。


 なんとなく嫌な予感がするが、無視するわけにもいかなかった。


 動画を再生すると、感想を書いて提出するようにと前置きがあり、何かが始まっていく。


「……ん?」


 シャワー室か? 湯煙が見える。


 誰かがシャワーを浴びている姿が、後ろ斜め上から映されているが……髪の長さからして女性だった。


 こ、これが噂の、と、盗撮動画か?


 なんでも、小さな撮影機が開発されて、トイレや更衣室などを密かに隠し撮りしている動画があるらしいのだ。


「ふんふんふ~ん♪」


 こ、これは……ソフィア少尉の声か……?


 髪の色や背丈も合致する。


 貞操帯に包まれた自分の分身に、ガッチリと力が入るのがわかった。


 こういう状態なので、自分で処理をすることができない。


 なのに、この艦に乗っているのは自分をのぞいて若い女性だけなのだ。


 ちょっと廊下ですれ違うだけでも、良い匂いがしてきたり、食堂で朝食をとるだけでも、チラチラと視線が送られてくる。


 服従の首輪を着けられている身とはいえ、あまりにも酷い環境だった。


「…………?」


 チラッとソフィアに視線を向けるが、不思議そうに首をかしげている。


 これは……盗撮されたことに気が付いていないんだろう。


 これの感想って、どう書けば良いんだ!


 音楽が好きだと聞いた通り、鼻歌を歌いながら身体を動かして、ソフィアはシャワーを浴びている。


 長い髪の毛が濡れて肌に吸い付き、豊かなお尻が、フリフリと動いていた。


 や、やばい……。


 これを見ていることがバレたら、どうなってしまうかわからないが、感想も送らなければならない。


 最後に、なにか事件でもあったら、そこに触れないのは奇妙な感想になってしまうだろう。


「ううっ……」


 最後まで見るしかなかったのだが……動画内では何事も起こらず、シャワーのお湯がキュッと止められた。


 髪と身体を拭いたソフィアは、少しだけ身体をこちらに向けると、カメラの範囲から出て行く。


 チラッと胸のふくらみが見えたが、それは立派なものだった。


 か、感想って、どうすれば……何を書けばいいんだ。


 書くときに動画の内容を思い出してしまうし、貞操帯をされているから、自分で処理もできないし、最近、少し過敏になってきていた。


「んっ!?」


 そのとき、急にイメージが脳裏に浮かんだ。


 アルビナフォン要塞の司令官が病気で倒れ、副司令と要塞陸上艦との間で摩擦が起きているイメージだ。


 しかも、今、要塞に陸上艦は二隻しかいなかった。


「アルビナフォン要塞が落ちる!?」


「どうしたのですか、いきなり」


 副艦長のトリシアが、自分の席からエリオットに声をかける。


 言葉が言葉だったので、少し驚いている感じだ。


「アルビナフォン要塞が手薄になるときが見えた。今、要塞司令官は病気で倒れていて、副司令と要塞陸上艦には摩擦が起きている……しかも、要塞には陸上艦が二隻しかいない」


「変な妄想をしていたんですね」


 ゴミを見るような目で、トリシア中尉がエリオットを見る。


「ち、違う! こ、これは、その……刺激されなくても、予知が働くことはあるんだ!」


 トリシアは、冷たい目でその言い訳を聞き流した。


「……ご存じかと思いますが、アルビナフォン要塞はニュートラルテリトリーを出るとすぐにある魔王軍の要所です」


 ダークテリトリーの入口は狭く、このアルビナフォン要塞を抜けて、何カ所にも枝分かれしていく竜脈になっていた。


「ここが勇者によって落とされた関係で、我が軍は今、劣勢を強いられているのですが……」


「落とせるかも知れない。ソフィア少尉、ここからアルビナフォン要塞まで何時間かかる?」


 ここからなら、それ程には遠くないはずだが……。


「竜脈が混んでいなければ五時間です」


「そう、ユーナなら三時間ね」


 え? そんなにぶっ飛ばしたら、乗り物酔いで戦えなくなると思うんだけど……。


 陸上艦は、水の上の船のように、地上の竜脈にプカプカと浮かんでいる艦だ。


 スピードを出すとあちこちにぶつかって船体が傷付くし、ガタガタと揺れるので乗り心地が良くない。


 敵から逃げるなどの緊急時ならば仕方がないが……。


「やりましょう、艦長」


「やるって、まさか単艦で要塞を攻略するのか?」


「応援は要請しましょう、ですが、今は時間が大切です」


 え、なんか逆じゃない?


 副艦長が無理をしようとしてるのを、艦長の僕が止めるの?


「いや、無謀すぎる。要塞からの攻撃もあるんだぞ?」


「この四天王艦ならいけます、ご決断を」


「…………」


 無茶をしない慎重な性格だと思っていたのに、すごい積極的だ。


 なんか、理由があるんだろうか……いや、祖国を愛している軍人なら、皆そうなのかも知れないけど。


「わかりました、足りないんですね」


「足りない?」


 トリシア中尉は、バサッとスカートをたくし上げると、嫌そうな顔をしながら白のぱんつも少し下にズリ下げる。


「んなっ! 見えちゃうっ! 見えちゃうからっ!」


 貞操帯の中でガッチリすると、苦しくも怪しい痛みが襲いかかってくる。


 でも、トリシア中尉はなお、ぱんつを下にズリ下げていく。


「行きますか? 行きませんか?」


「い、行く! 行くからもう止めて!」


 スカートを元に戻すと、本当にゴミを見るような目で僕を見つめてきた。


 でも、僕の頭の中には違うイメージが沸く。


 これは……。


「ちゃんと要塞を落とせたら、全員でやってあげますから、行きましょう」


「ぜ、全員で!?」


「勝手な約束をしないで下さい! ボクはやりませんよ!」


「えっ……わたしも?」


 ユーナ少尉が愕然としている。


 姉の約束だから断れないし、でも、僕にぱんつ見せるのは嫌そうだ。


 ソフィア少尉は、何とも言えない赤い顔をしてうつむいている。


 Mな人の考えは、正直良くわからない。


「全艦員に次ぐ、この艦はこれよりアルビナフォン要塞へ向かう、到着は三時間後! 戦闘配置に付け!」


「やほーっ! 対要塞攻撃なんて、痺れるシチュエーションですねー!」


 しかし、さっきのイメージは……。


 僕は、よく考えながら、動画の感想としてリーゼロッテ様にメールを送った。


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