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72 参謀の狙い


「おやおや、エリンではないですか。帝国に囚われていると聞きましたが?」


「リボルハード……!」


 椅子に寝かされているトリシアを見て、エリンに怒りが沸く。


 薬を使われているのか、目が虚ろだった。


「自白剤を使ったのね」


「無法には無法だよ、リューを拉致しようとしたんだろう?」


「無法なのはどっちなの!?」


 中立国で武力決起をしている連中に言われたくはない。


 それを止めるために、トリシアは……。


「計画は、リボルハードが行っていたのね」


 リューにしては手際が良すぎると思っていた。


 連合に怒りを覚えていたとしても、中立国を支配したいと思っても、リューには方法が思い付かないはずだ。


 それを、リボルハードが補っていたのだ。


「それにしても、面白い情報が聞けた」


「面白い情報?」


「いや、エリオットにそんな秘密があったなんてね」


「…………」


 どうやら、エリオットの秘密にもたどり着いたらしい。


 トリシアから、色々な情報を引き出したようだ。


 エリンの中に、どんどん怒りが溜まっていく。


 リボルハードは生かしておけないとまで思っていた。


「リボルハード」


 静かに銃を向けるエリン。


 戦闘能力で、リボルハードに劣っているところは無いと確信している。


「私を殺そうというのかい?」


「今、中立国で、どれだけの人が亡くなっていると思っているの!?」


「それは戦争だ、君が今まで殺してきた人達と同じだよ」


 冷笑するように鼻を鳴らし、眼鏡を持ち上げる。


「同じじゃない! 相手は非武装の市民よ!」


「戦争で、市民が巻き込まれるなんて、当たり前のことじゃないか」


「これが戦争!? ただの殺人よ!」


「まぁ、話し合おうじゃないか」


 リボルハードのこの余裕はどこから来るのだろうか?


 この部屋に、やってくる人間がいるとは思っていなかったんだろう。


 でも、こうやって銃を突きつけられて尚、その余裕は消えない。


「契約の首輪が邪魔なんだろう? なんとかしよう」


「そんなことで……!」


 自分を懐柔する自信があるのは、それなのか。


 自身以外の者を見下している、リボルハードらしい結論だった。


 エリンが困っていて、それを解決する手段がある。


 それで、銃を握る怒りが収まると思っているのだ。


「ミリアとかいう出来損ないの勇者と連動しているんだってね」


「ミリア様のことを、お前が語るな!」


「君の分だけ外せればいいだろう? できるさ」


 自分が可愛い、それは誰でも同じだと確信している。


 しかし、エリンには、他者のことでも怒りを感じる心があった。


「そんなわけにはいかない。お前は、他人を見くびりすぎている」


「ふふっ、怖いな。契約の首輪には、少しずつ帝国に忠誠が傾いていくような魔法が込められているそうだ」


 どうやらそうらしい。


 今、エリンは連合に戻りたいと、あまり思わなくなっている。


「君は今、洗脳状態にあるわけだ」


「これ以上の話し合いは無駄よ、トリシアさんを離しなさい」


「この帝国の女がそんなに大事かね?」


 椅子に座らされているトリシアを見て、そう言う。


「しかし、君を帰すわけには行かないんだよ」


「…………!」


 リボルハードに魔法がかけられた。


 防御魔法か。


 余裕の正体が、これだったとは。


 間髪を入れずに、エリンが引き金を引く。


 銃声がとどろくが……その銃弾は、リボルハードに届かなかった。


「リューには悪いが、利用させてもらった」


「利用?」


「最後には、私が中立国を手に入れるようになっている」


 そんなことが成功するはずがない。


 勇者ですら、あり得ない話だというのに。


「そのためには、私がこの事件に関わっていたことを知る人間がいると困るんだよ」


 リボルハードが立ち上がる。


 銃弾が効かないなら、ナイフでも……。


「エリオットと取引がしたい、君を人質にすれば応じてくれるだろう」


 自分が人質になる?


 こんなところで足手まといになるのか?


「ふふっ、手はないだろう? 大人しく……」


 そこに、背後から銃声が鳴り響いた。


 リボルハードがそのまま倒れる。


 何故か、防御魔法が効かなかったようだ。


 エリンが後ろを振り返ると、そこにはアリーナがいた。


「麻酔銃です、この人には色々と聞かなければ」


「ど、どうしてここが?」


「中立国の調査で、リボルハードさんが裏で糸を引いていると発覚しました」


 アリーナは、そんなところまで調査していたようだ。


 いや、中立国の諜報機関の仕事か……。


「連合基地の司令とは話が付いていますので、連れて行きましょう」


 後ろから数人の女性部下が入ってくる。


 椅子に座っているトリシアに、毛布をかけてくれていた。


「しかし、連合艦隊は中立国の力では討ち取れません」


 今、正に暴れ回っている勇者艦を含めた艦隊だ。


「エリオットさんに期待するしかないでしょう」


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