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54 勇者様は純情


「じゃあ、次は私ですね」


 そうだ、三人とするんだった。


 アリーナは、結構やる気のように見える。


 お菓子を唇に咥えると、僕の方を向いた。


「ん……」


 僕は、お菓子のもう片方側を咥える。


 エリンも可愛かったけど、アリーナの可愛さはもう反則レベルだった。


 なんというか、アイドルのようなプロっぽさすら感じる。


 やっぱり、中立国の精鋭ハニトラ要員なんだろう。


 それが、キスもまだなんて意外だけど、そういう需要もあるんだろうか。


 清純を売りにしているハニトラって、なんか変だけど……。


「んぐっ……」


 僕は、お菓子をちょっとかじった。


 まずは、様子見だ。


 でも、アリーナは、普通に食べ進める。


 一度の分量としては、結構食べたんじゃないだろうか。


「…………」


 ま、負けてられないよな。


 僕も、アリーナに合わせて結構食べた。


 この調子だと、次の僕の順番で、キスしてしまうことになるけど……。


「…………」


 アリーナが固まっている。


 急に意識してしまったんだろうか?


 仕事だという意識から、現実に引き戻されたという感じだ。


「ん……」


 アリーナが、お菓子をちょっとだけかじる。


 次の僕の番でキスになるように、丁度良く食べ進めた感じだ。


 そして……エリンと同じように目を瞑る。


 ううっ……。


 さすがに、今度は行かないとへたれ過ぎる。


 もう、ファーストキスじゃないし……。


「…………」


 僕は……お菓子を食べると言うより、キスをするようにアリーナの唇に触れていった。


 予知がピンとくる。


 そして、じわっと暖かい感触が唇に伝わってきた。


 キスしてしまった……ハニトラの子と……。


 こんなに可愛い子とキスをしてしまうなんて、背徳感すら覚える。


 そして……アリーナは、お菓子をもぐもぐとしながら、舌もちょっと出してきた。


「…………!」


 驚いた僕だけど……それに合わせるように舌を絡めて、お菓子をねぶるように食べる。


「な、な、あな、あなた!」


 エリンが慌てた口調であたふたしている。


 そっちを見てしまった僕の顔を、アリーナが両手で前に向かせた。


 わたしを見て、という意味だろうか……。


 そして、お菓子を食べ終わる。


 唇を離すと、ちょっと糸が引いたような気がした。


「エリオットさんからしてくれましたから」


 アリーナは、そう言ってにっこりと微笑んだ。


 ま、まさか、舌を絡めるようなキスなんて……。


「エリオットも! 私のときは私からさせたくせに!」


「そ、そういうわけじゃないんだけど……」


 エリンは、泣きながら怒っている。


 ちょっと、悪いことをしてしまったかも知れない。


 はぁ……それにしても、なんて日だ。


 一度に、三人もキスをすることになるなんて……。


「じゃあ、最後はミリアさんの番ですね」


 アリーナは、ミリアさんにお菓子の袋を渡す。


 ミリアさんはもう、茹でられたソーセージのように赤くなっていた。


「ミリア様、頑張ってください」


 エリンにも後押しされて、お菓子の片側を唇に咥える。


 い、いいのかな……?


 なんか、限界っぽいように見えるんだけど……。


「#$%’kkすjr~!!」


 そして、僕がお菓子を咥えようとしたときに、ミリアさんはお菓子をひとりで食べてしまった。


「あっ……」


 しかも、袋に入ったお菓子を全部自分の口の中に押し込んで、食べてしまう。


「こんなの出来ないモン!」


 お菓子を食べながら、そう言って泣き出した。


 まぁ、それはそうだよなと納得する。


 勇者様は純情なんだ、いや、これで普通かな?


 でも、問題なのは……。


「これって負けなの? それとも僕の不戦勝?」


「ひっ!」


 ミリアさんが、ビクッとしている。


 負けたら、ぱんつを見せなくちゃいけない。


 僕のぱんつを見ても、誰得にしかならないけど……。


「の、ノーカンですよ、ノーカン!」


 エリンがミリアさんをかばっている。


 でも、なんとなく、ゲームの発案者であるアリーナが、審判をするという流れになってしまっていた。


「うーん、そうですねー……」


 アリーナが考えている。


 僕を喜ばせても良いけど、ミリアさんと険悪になっても困る。


 そんな感じだろうか。


「あ、あわ、あわわわわ……」


 なんか、あわあわしながら、そのジャッジをミリアさんが待ている。


「うん、負けではないので、ぱんつは無しですね」


「はぁ……」


 なんか、みんなにホッとしたような安堵感が広がる。


 ここで、ぱんつを無理強いしていたら、変な空気になっていただろう。


 まぁ、ちょっと見たかったというのが本音なんだけど。


「それよりも、予知はちゃんと働いたの?」


 エリンが、不思議そうにしている。


 なにか、予知が働くときに起こると思っていたんだろうか。


「うん、それが本題だったね」


 僕は、予知したことをみんなに話していった。


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