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52 怒っているエリン


「休みなのに仕事場にいたら、みんなに迷惑だな」


「どうしたんですか? 突然」


 ブリッジは、交代制での当番となる。


 非番になる日もあるのだが、出勤していても僕の仕事はほとんど無かった。


「そういうわけで、ちょっと顔を出したら帰るという感じになるけど、大丈夫かな?」


「仰る通り、迷惑ですので帰って構いませんよ?」


 トリシアはこっちを一度も見ずにそう言った。


 あまり、仕事の当てにされてないらしい。


「えええー、ずるいなー」


「しっかりと休んでくださいね」


 今日は、ユーナ少尉が休みだが、みんな順番に休む。


 その代わり、仕事となったらいつ帰れるのかわからないくらいの長期任務なんだから、バランスは取れているだろう。


「じゃあ、お先に」


 僕は、ブリッジを出るとそのまま帰宅した。


 マンションの前でタクシーを降りると、そのままゲートに進んでいく。


 さて、休みは何をしようか。


 取りあえず、エリンとミリアに帝国のことを教えられるだけ教えよう。


「エリオット・クロムウェルです」


 音声認識とか、色々チェックされて中に入る。


 管理人もいるんだろうけど、会ったことはない。


 まぁ、そんなに帰ってきているわけではないから、利用頻度の問題だろう。


「ただいまっと」


 部屋に入るなり、ソファーに寝転ぶ。


「はぁ……」


 帝国のことを教えると言っても、何を教えれば良いんだろうか。


 帝国の内情のこと? 規律とか? ルールみたいなものとしては、帝国の方が上下関係に甘い気がした。


 連合は、上官が白と言えば、黒も白になる感じだけど、帝国はもっとオープンというか理性的だ。


 能力のない人が出世することは希なところが、そもそも違う。


 ハッキリ言って、連合軍上層部は腐敗していた。


 帝国にもリュデイガーみたいなのはいるけれど、希な範疇だろう。


「ん?」


 玄関のチャイムが鳴った。


 誰だろうか。


 この部屋のことを知っている人は、アリーナしか居ない。


 たまたま、隣の部屋とかの人かも知れないけど……。


 そう思いながらドアスコープをのぞくと、そこには三人の人の姿が見えた。


 ひとりは間違いなくアリーナだ。


 なんの用事だろうか?


 僕は玄関を開ける。


「こんにちは、エリオットさん」


「こんにち……エリンとミリアさん!?」


 どういうことか、アリーナの後ろにいたのは、エリンとミリアさんだった。


 もしかして、ミリアさんも中立国に部屋をもらっているんだろうか?


 それにしても、僕の部屋になんの用事だろう。


 まぁ、丁度いいと言えば丁度いいんだけど。


「ミリアさんとエリンさんは、一緒にこのマンションに住んでいますので、ご挨拶に来ました」


「それはどうも、ご丁寧に」


 遊びに来たのかな?


 アリーナは、まだ仕事だと思うけど。


「そんなことより!」


 エリンが怖い顔をしている。


「な、なんだっけ?」


 怒られる理由がわからない。


 いや、たくさんあるかも知れないけど……。


「まぁ、立ち話もなんなので、中にどうぞ」


「…………」


 エリンは無言で部屋に入ってくる。


「おじゃまします」


「おじゃましまーす」


 みんなには居間のソファーに座ってもらって、僕は冷蔵庫から缶の紅茶を出してきた。


 グラスに空けた方がいいかな?


 いや、このままでもいいか……。


 僕は、テーブルに缶の紅茶を人数分置く。


「さて、エリンは何を怒っているんだ?」


「トリシアさんから聞いた」


「何を?」


「何を!?」


 いや、そんな興奮しないで……。


 冷静に教えて欲しい。


「お、お、女の子に、エッチなことを強制してるって!」


「…………」


 トリシア……なんという伝え方をしたんだろうか。


 話し方がシンプルだから、逆に誤解を招きやすいのかも知れない。


「まぁ、いつかは話さなくちゃいけないんだけど……」


「ほ、本当なんだ……」


 ちょっと拗ねているっぽい。


 僕が、職権乱用しているんだと誤解してないかな。


「僕からは言い出しにくいから、トリシアから話してくれたんだと思う」


 さすがは優秀だと思う。


 勇者艦で働く以上、エリンかミリアさんにお願いすることになるだろうし。


「それで……理由はあるんでしょ?」


「えっと……」


 僕は、自分の予知能力のことをみんなに教えた。


 エッチな目に遭うと予知能力が働くと。


 それで、武勲を上げて出世したんだから、仕方がない。


「そ、そ、そんな、エッチなことをすると予知を使えるなんて、ずるい!」


「そういうことだったんですね」


 アリーナも初耳だろう。


 聞かれたのは拙かったような気もする。


「もしかして、昔からそうだったの?」


 僕は、エリンと同期の卒業生なのに、少佐だった。


 そこには色々とあるんだけど……。


「そうだったみたいなんだけど、皇女殿下に鑑定をしてもらうまで、詳しいことはわからなかったんだ」


「じゃあ、予知を見せてもらうから」


「ぶっ」


 ミリアさんが紅茶を吹きそうになっていた。


 予知を見せてもらうということは……わかっているんだろうか?


 みんなに、エッチなことをしてもらうってことなんだぞ。


 でも、エリンの目は本気だった。


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