表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/103

38 次の一手


「…………」


 僕は手持ちぶさたにしながら、壁に貼ってある表を見ていた。


 新たに、ユーナとソフィアのところにも赤いシールが貼ってある。


 トリシアのところにふたつ張ってあるけど、これで全員、一度は僕にナニをしてくれたわけだ。


「…………」


 そういえば、みんなでしてくれるという約束はどうなってしまったんだろう?


 べ、別に期待しているわけじゃないけれど……。


 貞操帯が無くなった今、そんなことを気にしてしまう。


「いやいや……」


 まさか、それを言い出すことはできない。


 さすがにそれは最低だろう。


「艦長」


「ひゃ、ひゃい!」


「は……?」


 僕の返事の声が裏返っていたからだろう、トリシアが不審な目を向けてきた。


 取り繕うように咳払いをすると、つづけてくれとばかりに話をうながす。


「侍艦と賢者艦が、アルビナフォン要塞に押しかけてきているそうです」


 侍艦と賢者艦は、既に性能もよく知られている上級艦だ。


 侍艦は火力特化の戦艦で、賢者艦は空母だけど、艦長の賢者様の魔法を増幅する力があるらしく、臨機応変に戦える陸上艦だった。


「じゃあ、君主艦と巫女艦がライトテリトリーにいるわけだな」


 ライトテリトリーでは魔法が弱くなり、スキルが強くなる。


 イマイチ、連合で魔法が活用されないのはそれが原因だとされていた。


 もちろん、帝国にもスキルはあるし、連合にも魔法使いは居る。


 でも、中立国からもたらされる科学の産物の方が、連合には受け入れられ易かった。


「君主艦は、連合首都にいるでしょうから、巫女艦は東西どちらかの要塞を守護していると思われます」


 中立国を出て、ライトテリトリーに入ると東西に要塞がひとつずつある。


 そのうちの、どちらかに巫女艦が居る公算が高い。


「巫女艦を避けますか?」


 巫女艦は防御特化した艦だ、避けた方がいいだろうけど……叩けるなら叩いておきたい。


 でも、帝国で言うと、ルイン提督のようなもので、正面からの突破は難しいだろう。


「僕らの役目は、陽動だ。戦わなくてもいいかな……」


 一騎打ちで倒せるほど、巫女艦も甘くはないだろう。


 僕らの役目は、連合の背後を突くこと。


 背後を突かれるとわかれば、アルビナフォン要塞への攻撃の手も鈍るだろう。


 相手に疑念を与えればいいんだ。


 後ろからやられるという疑念だ。


「連合に、予備の戦力はあるでしょうか?」


「そんな余裕はないと思うけど、あったら挟み撃ちになるね」


 僕らが出撃している間に、東西の要塞から救援の要請が出る。


 すると、一本の竜脈上で、四天王艦が挟み打ちにされるということだ。


 アルビナフォン要塞では、激戦がつづいているという。


 そちらに戦力がかかりきりで、遊撃である僕らを撃つ余力なんてないと信じたい。


「しかし、いずれは対策されるでしょう」


「そうだね、そのときは、それで考えよう」


 背後を突く行動をつづけていたら、それに対応してくるのは当たり前だ。


 もちろん、挟み撃ちにしてこようとするだろう。


 でも、それはチャンスでもあるはずだ。


「では、手始めに東西どちらから攻めますか?」


「うーん……」


 僕が見た予知は、それとは関係のないものだ。


 もっと決定的な場面を見た。


 どうしたら、そうなるのか難しいけれど……。


 気が付くと、トリシアが嫌そうな顔をしている。


「ち、違う、これは悩んでいる振りじゃない!」


 僕が、まるでぱんつを見せろと言っているように見えたんだろう。


 そりゃあ、その方が勝つ確率も高まるけど……。


 ブリッジのみんなが、思い思いの顔で僕を見ている。


 マルリースはジト目、ソフィアは赤い顔、ユーナは身体を手で隠していた。


 僕は、淫獣か何かなのか。


「んんっ……」


 取りあえず、僕は咳払いをする。


「グリュックエンデの足を生かして、要塞に攻撃、すぐに反転して逃げよう、それでどちらの要塞に巫女艦がいるか、調べればいい」


「了解しましたが、どちらから攻めますか?」


 どちらからでも同じだけど……。


「じゃあ、西からやってみるか」


「了解です、早速、出撃の準備を始めます」


「また、要塞が相手ですかー、腕が鳴りますね」


 にわかに、ブリッジが慌ただしくなる。


 トリシアは、マイクで出撃の準備を始めるように艦内放送を始めた。


 ソフィアは、中立国に出航の手続きを求めている。


 ユーナは、機関室と連絡を取って、エンジンの始動を確認していた。


 さあ、ここからは命のやりとりだ。


 何もかも、そう簡単にはいかないぞ。


 僕は自分を激励するように、冷たくなった紅茶を煽ると、紙コップをごみ箱に捨てた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ