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32 アッシャーという男


「あの……これからどうしますか?」


 ジュディスが、割と明るい声でそう言う。


 兄から離れられたのが、嬉しいんだろうか?


 艦隊から追放された僕に、何故かジュディスが着いてきていた。


「一緒に着いて来なくても良かったんですよ?」


「いえ、お兄様より、エリオット様の副官を仰せつかっていますので」


 いや、その兄から追放されたんだけど、皇族って変な人が多いのかな。


 リュデイガー元帥もジュディスを止めなかったし……。


「ここから中立国は遠いですね」


「ふふっ、歩いて行くのは無理ですね」


 晴れやかな笑顔だ。


 フィリエルのお告げを心の底から信じているんだろう。


 僕の思う通りにする。


 それで、全てが上手くいくと……。


「うーん……」


 来た道を戻れば、アッシャー元老院議長の艦隊がいるだろう。


 拾ってもらったりはできないだろうか?


「アッシャー元老院議長と面識はありますか?」


「もちろんあります、娘のパウリーネ様とは仲良しですよ」


 それなら拾ってもらえるかな?


「じゃあ、そちらに行きましょうか」


「はい」


 僕たちは、来た方向に戻るように歩いて行った。






「それで、こちらに寝返るのか?」


 アッシャー元老院議長の艦隊は、割とすぐ近くにいて、拾ってもらうのに時間はかからなかった。


 ジュディスに橋渡しをしてもらっているところだ。


「エリオット様のしたいようにすれば、全て上手くいくと、フィリエル様からのお告げが出ていますので」


「ほう。面白いな」


 ギロッと僕を値踏みするように見てくる。


 この人が、アッシャー元老院議長か……。


 すごい重厚感のある人だった。


 とても、情報にあったような無能には見えない。


 人は見た目が九割というけれど、僕が騙されているのかな?


「お前が、アルビナフォン要塞を落とした若き英雄か」


「いえ、そんないいものではありません」


 英雄なんてとんでもない。


 ルイーゼロッテ様寄りの機関誌で、いいように持ち上げられていたから、変なイメージが広がっているようだ。


「そうか。いいものではないのか」


「お父様は、人を信じやすいの、本音で話してちょうだいね」


 なんだそれは……。


 英雄ではないなんて、本音なんだけど、信じやすいの程度によるだろう。


「私は、英雄などではありません、アルビナフォン要塞については、運も味方しました」


「そうね、私もそう思うわ」


 そして、こちらが、ジュディスと仲のいいという娘なのか。


 パウリーネだったっけ?


 銀髪のロングという、魔族としても珍しい髪だ。


 背は低いけど、志は高そうに胸を張っている。


 魔王の弟の娘なんだから、リュデイガー元帥と同じ皇族なんだけど、相当にマシに見えた。


「本音ついでに、こちらに伺った理由もお話しします」


「ふむ、つづけよ」


「今、自分は困っています」


「何を困っておるのだ?」


 なんか、ちょっと話しやすい。


 皇族の方なんて、緊張して話しにくいものだと思うんだけど……。


「ルイーゼロッテ様に、服従の首輪をされていたのですが、それは外してもらえました。しかし、貞操帯を付けられたままなのです」


「貞操帯とな? ルイーゼロッテのお気に入りというのは事実か」


「いやらしい、ルイーゼロッテの考えそうなことだわ」


 パウリーネはルイーゼロッテ様と仲が悪いようだ。


 まぁ、父親の政敵なんだから、その方が自然だけど。


「いえ、お気に入りというのは、自分ではわかりません」


「ふむ」


「ですので、ルイーゼロッテ様の元に戻り、貞操帯を外してもらいたいのですが、その前に手柄を立てておきたいと考えています」


「どんな手柄だ?」


 言葉のひとつひとつが重い。


 容姿と声質で、ずいぶん得をしているんじゃないだろうか。


「初めは、リュデイガー元帥を勝たせようと思いました」


「それは迷惑な話だ」


「しかし、今は、アッシャー元老院議長を手伝うことで、手柄にしたいと思っています」


「それが、ルイーゼロッテのためになるのか?」


「ルイーゼロッテ様が一番困るのは、リュデイガー元帥が自由連合と組み、アッシャー元老院議長とも手を組むことです」


「ふむ」


 これは言った方がいいのか……。


 ルイーゼロッテ様は掴んでいたけど……。


「事実、リュデイガー元帥から、自由連合とは話が付いていると聞きました。連合と手を組んでいるリュデイガー元帥を討つことは手柄になると考えています」


「連合と手を組むですって! とんでもない卑怯者ね!」


 パウリーネが怒っている。


 まぁ、実際のところは、連合に騙されているんだろうけれど。


「よし、それならば、その手腕を見せて貰おう」


「ありがとうございます」


「全軍の指揮権を与える、見事リュデイガーを討って見せよ。我らは、全面的に協力をする」


「えっ?」


 また全軍の指揮を任せられたの?


 僕が裏切り者だったら拙いことになるけど……本当に、人を信じやすいのかも……。


「お父様、それは信じすぎです! もしも、わざと負けるようなことがあれば……」


「そうだな、では、ジュディスを人質に取ろう」


「ジュディスを? どうしてですかお父様?」


「いえ、かまいません。私はエリオット様を信じております」


「…………」


 いや、僕の人質になるの? この人。


 まぁ、いいんだけど……。


 そして、ジュディスは個室に軟禁状態となり、僕は艦隊の指揮権を委ねられた。


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