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21 四天王艦の襲撃


 ドックに着いた僕は、アリーナと別れて四天王艦の艦長室に入った。


 少し状況を整理しよう。


 プライベートドックなので、どこのドックにどの艦が入っているのかは、基本的にわからないはずだ。


 しかも、隣には魔王艦がいる。


 襲うなら、むしろ魔王艦の方じゃないんだろうか?


 それとも、同時に襲撃されるのか?


「取りあえず、内通者がいることは間違いないよな」


 乗組員は、四天王艦だけで七十名くらいいる。


 魔王艦はわからないけど、ドックの従業員も含めたら、結構な数になるんじゃないだろうか。


 皇女殿下も、スパイは居ると言っていた。


 誰がスパイなのかあぶり出すか?


 それとも、被害を出さないようにするか……。


 取りあえずは、皇女殿下にメールを送る。


 ここで、ばたばたし始めたら敵も襲撃をやめるかも知れないけど……。


 問題を先延ばしにしても意味がないだろう。


「よし」


 僕は、方針を決めると行動に移していった。






「…………」


 夜、暗くなったプライベートドックの中。


 武装した、二十名ほどの男たちが外から入ってきた。


 何も言葉を発さずに、ハンドシグナルだけで動いていく。


 見張りはいない。


 あらかじめ計画されていたかのような周到さだ。


 セキュリティーは切られているのか、警報も鳴らなかった。


「…………」


 リーダーらしき男が、手際よく指示を出していく。


 魔王艦には目もくれずに、四天王艦のハッチに取り付いた。


 中をうかがうが、当直の人員はいないようだ。


 リーダーの指示で、十八名が四天王艦の中に乗り込んでいく。


 見張りだろうか、退路を確保するためだろうか、二名の男がハッチに残ると、他の男たちはブリッジを目指して進んでいった。


 人が少ない夜を選んだために、偶然出くわす者もいない。


 ハッチと同じように、要所要所に二名ずつ男が残っていった。


 男たちは、楽々とブリッジまでたどり着くと、合図をしてからその中に入り込んで行く。


 咄嗟に銃を構える先頭の男。


 だが……当直がいるはずのブリッジにも、人の姿はなかった。


「なんだ、魔族帝国はたるんでいますね、隊長」


「無駄口は叩くな、いくら何でもおかしいぞ、ここは軍艦だ」


 ブリッジの隅々まで探すが、人影はない。


 どうやら、本当に当直の人間もいないようだ。


「楽勝じゃないですか、四天王艦と言っても、こんなものですね」


「馬鹿! まずい、ハメられたんだ!」


 その隊長の言葉と同時に、艦内の照明が一斉に落ちる。


 辺りの様子をうかがうが、誰かが襲ってくる様子はない。


「…………ゃ」


 暗闇で耳澄ませる男たちは、遠くから銃撃の音と悲鳴のような声が聞こえるのを聞いた。


 残した男たちが応戦しているのか。


 ここで迎え撃てば、こちらが有利だろう。


 問題は、相手の数だが……乗組員全員となれば相手にするのは難しい。


「データだけでも貰っておく、やれ」


 戦闘要員ではなく、このために連れてきた男が、手際よくデータを抜き取る作業に移っていった。


 内部からの、ハッキングのようなものだ。


 四天王艦の、いかなるデータが欲しいのか。


 男たちの所属を示す印は何もない。


「…………」


 応戦する音が徐々に近づいてくる。


 男たちは緊張して、扉の辺りに意識を集中していった。


「迎え撃つぞ」


 部屋の外は、一本道の廊下だった。


 部屋の中に入られると、面倒かも知れない。


 扉の付近に集まると、自動ドアをそっと開けていく。


「…………」


 誰かが入ってくるような気配はない。


 男が、手榴弾を廊下に向かって投げた。


 そして、その爆発が過ぎた瞬間に、二名が銃を構えて廊下に躍り出る。


「ぐはっ!」


「うぐっ!」


 その二名は、何か堅い物で殴られて昏倒していた。


「撃てっ!」


 しかし、その指示の前に、小さな影が勢いよく飛び出してくる。


 暗闇の中、どうやって視認しているのか、小さな影は男たちの急所を次々と殴打していき、倒す。


「剣か!?」


「どうして見えるんだ!?」


「同士討ちになるぞ! 撃つなっ!」


「魔法だ! 一度散開し……ぐっ」


 隊長は、その台詞を全て言い終わる前に倒されていた。


 小さな影は、銃も使わずに、完全武装の男たちを瞬殺、完封する。


 いや、ひとりも殺していないのだが、逆にすごいか。


「ソフィア、明かりを」


「はい、少しお待ちを」


 艦内の照明が点く。


 明るくなったブリッジには、倒れている男たちと……トリシアが剣を持って立っているだけだった。


「さすがだな、トリシア中尉」


 隠れていたエリオットが、壁の中から出てくる。


 幻影の魔法か、壁に見えていた場所は空間だった。


「いえ、どれ程のこともありません」


 剣を鞘にしまうと、トリシアはクールにそう言った。


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