02 第三皇女の鑑定
「リーゼロッテ様、連合の佐官を捕らえました」
「ほう、佐官か」
リーゼロッテ? 魔族帝国の第三皇女がこの戦いに参加していたのか。
ということは、この真っ黒な戦艦が魔王艦なのか?
魔王の再来、復讐帝と呼ばれ恐れられている軍人でもある。
でも……なんというか、小さな子供だ。
10~12歳くらいだろうか?
皇家の伝統装束である、黒いボンテージみたいな服が痛々しく見える。
もっとも、魔族は人間の十倍くらい長生きだから、これでも僕よりは余程年上なんだろうけれども。
「名はなんと言う?」
「エリオット・クロムウェルです……」
僕の名前を聞くと、参謀だろうか? お付きの将官らしき人物が手近の入力機器を弄り始めた。
連合の軍人がデータベース化されているのか?
まさか、そんなはずはないが……。
そして、僕からは角度的に見えない画面を見て、第三皇女様がにんまりと笑った。
「エリオット・クロムウェル、勇者の参謀だという情報じゃが?」
漏れている……僕みたいな下っ端の情報ですら、帝国側に……。
今、戦況は連合国側が圧倒的に押している。
元々、陸上艦の保有数が多く、歴史的にも連合側が押している状況が多いんだけど、魔王が不在で勇者が存在する今の世では、それが顕著に表れていた。
でも、魔族帝国は地道に情報の収集を行い、少ない艦数で大勢の敵を破り、逆転の目を狙っているんだ。
「クビになりました。だから、今は参謀部には居ません」
「何故じゃ?」
「挟撃されるので、後退するべきだと進言したからです」
「どうして、挟撃されるとわかったのじゃ?」
うっ……ここでもまた、僕は笑われてしまうのか。
勘だとは言い難い状況だった。
「じ、事態の推移を見ていれば予想は付きます」
「ふん、それで勇者に煙たがられたワケか、参謀というのはどこでも同じ事をしておるの」
お付きの将官が、皇女様に何か耳打ちをした。
「そうじゃな、鑑定する価値はあるかも知れん」
鑑定? 勇者でも持っていない凄いスキルだ。
森羅万象を読み解くことができるスキルだという。
生まれながらにスキルを持っている人間はいるけれど、鑑定は別格だ。
世界中の学者が、そのスキルを欲して、夜にうなされていることだろう。
さすが、次期魔王と呼ばれるだけはある。
「どれ……ほうほう、17歳で佐官とは、出世したものよな」
「うっ……」
何かを見られているのか、落ち着かない感じがする。
「エリオットよ、お前、面白いスキルを持っておるではないか?」
スキル? 僕が?
「じ、自分がですか? 自覚はありませんが……」
「なんじゃ、知らんかったのか……ふふふっ、面白い」
皇女様は幼い顔を愉快そうに変えると、お付きの将官に何事かを命じていた。
「お前に、服従の首輪と貞操帯を付けてやろう」
「ふ、服従の首輪……? それに貞操帯って……」
服従の首輪なんて、名前からしてロクでも無さそうだけど……貞操帯?
なんで僕に貞操帯?
「どれ、ワシが直々に着けてやろう」
拘束衣を着せられ、身動きできない僕に、皇女様が首輪を着ける。
なんだ……? ペットにでもされてしまうのか?
魔族帝国では、捕虜の人権がないという噂だけど……。
「これで、お前はワシに逆らえなくなった」
「?」
なんだ、何か魔法のアイテムなのか?
「例えば……ワシの靴を舐めろ」
「そ、そんなこと……ぐぎゃあああぁぁっ!」
全身に激痛が走る。
喉から心臓が出そうなほどの痛みだった。
この痛みは……服従の首輪……人を服従させる首輪なのか?
「お前は今から魔王軍の艦長じゃ、艦をひとつ任せよう」
「な、なぜ……」
艦をひとつ……? 大佐クラスの待遇だ。
「それも、普通の艦ではないぞ……四天王艦のひとつ、グリュックエンデじゃ」
賢者艦や侍艦と並ぶ無双の艦。四天王艦を何故捕虜の僕に?
「乗るものがおらんし、遊ばせておくのももったい無い。兄上達もうるさいしのぅ」
服従の首輪があるから、僕は逃げられないし逆らうこともできない、それはわかるけど、どうしていきなり貴重な陸上艦の艦長に……?
それも、四天王艦だなんて。
「不思議か? 不思議そうな顔をしておるのぉ」
ちょっとサドっ気がありそうな顔だ。
小さな女の子がサドっ気のある顔をすると、少し妖艶だ。
「不思議……です」
「そうそう、お前の持っていたスキルじゃが……それは未来予知じゃ」
「み、未来予知?」
「しかし、発動条件が特殊でな、くふふ、お前のここが興奮すると……」
そう言って、股間をグリグリと踏まれる。
くっ……い、痛くはないけど、力が抜ける感じだ。
「あっ……」
すると、知らない女の子に嫌な顔をされながら、パンツを見せられる姿が目に浮かぶ。
すごくかわいい子だったけど……。
僕が今まで、何度か目にしたことのあるもの。
僕がずっと、勘だと思っていた……予知能力だ。
「男の本能が刺激されると、予知が発動するようじゃ」
そんな……そんな条件があったなんて……。
そういえば、自分でいたしてしまったときに、勘が鋭かったような気もする。
いや、多分そうだったんだろう……。
「まぁ、普通の者に四天王艦を任せて壊されてももったい無いからの」
「で、でも、裏切るかも知れませんよ?」
「心配ない、ワシはそこいらの人間を信用せんからな、裏切ることもできないというワケじゃ」
元々信用していないということか? だから、裏切っても裏切られたことにはならないと? そんな言葉遊びをしているわけじゃ……。
「予知がいつでも発動するように、お前好みの女をたくさん乗せておいてやるぞ、感謝するのじゃな」
皇女様が手を振ると、僕の左右にいた警護の兵が拘束衣を脱がせてくれる。
僕好みの女って……そんなこと、僕にもわからないのに……。
「ああ、発散されると困るから後で貞操帯を付けさせて貰う、自慰は禁止じゃな」
「え!? そ、そんな……だから貞操帯……?」
こ、これは、どんな状況なんだ。
別にそれ程愛国者ってわけでもなかったけど、生まれた国と戦えっていうのは抵抗がある。
まぁ、その祖国から追放されたようなものなんだけど……。
「悩む事はあるまい、選択肢はひとつしかないのじゃからな」
僕は、皇女様の前から連れ出されると、魔族帝国軍の制服を与えられて、四天王艦の艦長室で生活することになった。
明日は、三話投稿します。
よろしくお願いします!