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101 トリックキャンセラー


「帝都より魔王艦が現れました!」


 魔王艦だ。


 見る者に畏怖を与える、特別な陸上艦。


 でも、僕はその攻撃を知っている。


 魔王艦の主砲には貫通力があった。


 縦列陣を敷いていると、餌食になる。


「横列陣を敷け! 空母と巡洋艦を下がらせろ!」


 射程が何処まで伸びるかわからない。


 念のため、空母と巡洋艦は下がらせておく。


「超上級艦、離陸!」


「超上級艦、離陸」


 戦艦を横列に展開させ、勇者艦が真ん中、超上級艦は空に逃げる。


 魔王艦の主砲を食らうわけにはいかなかった。


「前進! 魔王艦だけを狙え!」


「主砲使っちゃって構わないんですか!?」


「かまわないっ! いけっ!」


「らじゃっすっ!」


 横展開している戦艦も、中央の勇者艦も、魔王艦に向けて攻撃を仕掛けていく。


 何か、障壁のようなもので防がれているが、それはもう効かない。


「正面に急激な魔力が増大しています!」


「なんだ!?」


 勇者艦の前面に、黒紫の渦が現れた。


 魔王艦の攻撃というよりも、個人の魔法のように思える。


 そこに向けて……陸上艦が引きずられていた。


「こんな魔法があるのか!?」


「中立国製は魔法に弱いですね」


 そんなのんきなことを言っている場合じゃない。


 中央に集められて、貫通射撃を食らうということだ。


「トリックキャンセラーを使え! 目標はあの渦!」


「トリックキャンセラー発射あぁぁぁぁぁっ!」


 ルイン提督の防御魔法を破った装置。


 中立国の開発した対魔法用装備、トリックキャンセラーだ。


 魔法の効果を弱めたり、打ち消したりできる。


「トリックキャンセラー命中! 魔力が霧散しました!」


 よしよし、効いているようだ。


「艦列を立て直せ!」


 引っ張られていた戦艦が、艦列を整えていく。


 また同じ事をされると厄介だ。


 ちゃんと距離を取っておこう。


「敵に対応させるな! 全艦撃て!」


「トリックキャンセラー撃ちますよ!」


 魔王艦にも防御魔法がかかっている、トリックキャンセラーを使った方が早い。


「撃て!」


「当たれぇぇぇぇぇっ!!」


 超上級艦から飛び出していった光球が、魔王艦の障壁に触れる。


 すると、それは魔力を飲み込むようにして、障壁を剥がしていった。


 それを待っていたのか、勇者艦から勇者砲が放たれる。


「ゆ、勇者砲、命中しました!」


「…………」


 あの魔王艦が、被弾していた。


 それも、集中砲火を受けて。


 皇女殿下……あなたの知っている戦争は、もう終わろうとしているんです。


「撃ち続けろ!」






「魔王艦、稼働率が50%を切りました……」


「完敗じゃなぁ」


 そう言いながらも、ルイーゼロッテは面白そうにしている。


 負けることが楽しいのか、これからやることが多すぎて楽しいのか、それは判然としない。


「いかがいたしますか?」


「普通の戦いはこれまでじゃ、魔王艦の本当の力を見せてやろう」


 ルイーゼロッテがシュラミスを見る。


 戦闘要員ではないシュラミスが、何故か魔王艦のブリッジにいた。


「ワタクシに何をさせるおつもりですか?」


「魔王艦には、魔王でなければ発動できない力がある」


 シュラミスは、ぐっと唇を噛む。


「この戦いが最後です。もう、負けを認めましょう」


「まだまだじゃな、ワシが生きている限り、戦は終わらせんぞ」


 ルイーゼロッテは、シュラミスの手を取り、魔王艦の中央にある台座に乗せる。


「さあ、もっと楽しませてくれ、エリオット!」


 魔王艦が赤黒く発光し始めた。






「魔王艦に異変です!」


 確かに、魔法のような力が発動していた。


 これは、やっておこう。


「トリックキャンセラーを撃ち込め」


「トリックキャンセラー発射あぁぁぁっ!」


 しかし、撃ち出された光球は魔王艦の装甲に当たると……そのまま消えてしまった。


 トリックキャンセラーでは、打ち消せない力のようだ。


「魔法ではないのかもしれませんね」


「そうか……」


 見ているしかないか?


 もう一歩で落とせそうなんだけど……。


「魔王艦ですから、魔王用のギミックかも知れません」


「ピンチになると、発動する的な?」


「そうなれば、それはもはや神の力です」


「神か……それはヤバいな」


 でも、こちらは攻撃をつづけるしかない。


 赤黒く光っている魔王艦に砲撃を撃ち込んでいくが……。


「魔王艦の損傷が……修復されていきます!」


「なんだと!?」


 そういう効果か?


 あの色に光っている間は、攻撃しても無駄なのか?


 それなら……事実上倒せないことになってしまう。


 いや、そんなはずはない。


 僕は予知した未来に向けて、深く考えていった。


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