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魔女メイドは語る。  作者: しゅり
魔女メイドと不思議な本
1/11

[プロローグ] はじめまして、異世界さん。

 ふと、目が覚めると体の自由が効かず、ぼんやりとしか周りが見えない。


 女の人がいます。

 彼女は、私の頭を撫でながら、なにか言葉を紡いでいます。

 歌っているような、唱えているような。

 不思議と体がぽかぽかと暖かくなり、心地良い。


 彼女に話しかけようと試みましたが、「あっ、あっ、」とか、「おっ」とか、「ぶー」と声が発声するだけで喋ることができないようです。

 状況を把握できません。不安で涙が出てきてしまいます。声をあげて、泣いてしまいました。


「おぎゃあ〜、おぎゃあ〜、!?」


 自分が赤ちゃんになっていたことに気づきます。

 訳がわかりません。

 涙も止まりません。

 

 ひとしきり泣き、彼女にあやされます。彼女は私の母親のようです。


 冷静になってきた頃、お腹が空き、母乳を貰い、ウトウトと眠る。その繰り返す中で「何故このような状況になっているのか」「気づく前は何をしていたのだろう」と考えていてました。

 頭の中にちら着く記憶はあります。だけど、ふわふわと浮かんでは消えるのです。

 夢をみて、起きたら忘れるような感覚でしょうか。

 生まれたばかりなのに記憶がある。前の記憶があるのだから、死んだのだろう。死因は、わからないけど、そう結論するのでした。


 もう少し、記憶を探ってみましょうか。

 何か見えてきた気がします。

 ですが、急に目がチカチカ。目の前が真っ白に。頭が割れるように痛い。


「おぎゃあ〜、おぎゃあ〜、おぎゃあ!!」


 激しい痛みが続きます。

 今のわたしでは、前の記憶を受け止めきれないのかもしれません。

 緊急回避のシャットダウン寸前になったのだろうと推測します。


 『あんなに痛いのなら、二度と探りたくない』と思うのでした。


 しばらく過ごしましたが、こんなにもままならないとは思いませんでした。

 感情が抑えきれない。少しでも嫌な気持ちになると頭も体も熱を持つ。すぐにお腹が空くし、眠くなる。

 『赤ちゃんってなんて、不便だなんだ』と言っても仕方がありません。

 私の今の状態が異常なんだと思います。しばらくは何も考えずに育つことにましょう。現実逃避です。



--



 どのぐらい経ったでしょうか。

 どうやら前の記憶は、漠然と曖昧に少しずつ蘇ってくるようです。

 それでも自分のことは全くといっていいほどわかりません。本当にこの記憶が自分のことなんだろうかと思えるくらいに。


 徐々に色の識別や輪郭がはっきりするようになってきた頃、私はここが以前暮らしてた場所ではないと気付きます。

 ここは異世界。

 

 母の言葉が理解できない。それに髪の色が水色、耳が少しとんがっている。

 ここまでなら、自分の知らない外国語を話す女性が、水色に髪を染め、巧妙に作られたツケ耳をして、ロリィタファションで育児をする母。

 その母の元に生まれた前世の記憶を持つ生まれたてなのに意識がある異端児か!勝ち組天才児か!なんて思ったりしていたんですけど。

 違うようです。


 違うとはっきり確信したのは、近くにいる生き物が特殊だったからです。

 その姿は、体長30センチ位で頭と前足は馬。後ろ足が魚の尾ひれになっているケルピーです。


 前世の知識にある空想の生き物、ウォーターホースとも言われます。

 曖昧にしか思い出せませんが、ケルピーは水の中を泳ぐ水棲生物で人を水の中に引きづりこんで食べてしまう幻獣だったと思います。


『食べないでーー。』


 心の中で叫びます。

 噛まれたら、食べられたら、どうしようと怖い思いをしながら、ビクビクしていました。


 こんなのがいるのです。ここは間違いなく異世界でしょう。


 この世界のケルピーは、尾を縦に振りながら、前脚で空中を駆けるのです。

 空中を駆け回ると蹄で踏み締める音が聞こえます。

 馬が走っている「パカラ、パカラ」っていう音です。不思議です。見ていて飽きません。

 そして、人は食べないようです。一度も噛まれません。とても安心しました。

 

 私はケルピーに興奮しつつ、これからのことを考えるとワクワクしている自分がいます。


 異世界転生だもん。興奮するのは、仕方ないです。どんなチートが使えるんでしょう。

 楽しいことが起きそうです。


 他にわかったこと。

 母だけでなく、私を見に来る人全員がロリィタファションであること。

 白ロリ、黒ロリ、甘ロリ、姫ロリ、ゴスロリ。

 姉も祖母も曾祖母も親戚っぽい人達も毎日着ています。

 すんごーく、かわいい。美人さん揃いです。と思う一方で、前世で着たことがないと思う私は、『将来自分も同じように着ることになるのですか?』と想像して恥ずかしさに悶えます。


 『これは民族衣装しろロリ?』『毎日が、民族衣装くろロリで過ごす。』『普段着は民族衣装あまロリです。』『民族衣装ゴスロリだから恥ずかしくない。着て当たり前!』と頭の中でつぶやき、我が一族の常識を刷り込みます。

 これはこの異世界に馴染もうとした初めの一歩だったのではないでしょうか。


 キルケと名付けられた私はそれから、一族の愛情をもらいながら、健やかに成長していきます。


 そして、長い月日は流れ。

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