ルームメイト
森を出るころには日は既に半分ほど沈んでいたが、教師に見つからなかった。近場とはいえ、目印を残さずに森を歩いたのがよくなかったらしい。
アラン、アレク組と私とで別れると寮へと向かう。ギリギリのところだったが外出時間は過ぎておらず、扉も施錠されていなかったので、自分の部屋には玄関から帰ることが出来た。
「あぁ、おかえりなさい。で、合っていますわよね?アナさんでよろしいのでしょう?」
「え、えぇ。そうね、私はアナ。あなたはノエルでいいの?」
扉を開けてからの挨拶に戸惑いながらも自己紹介は済ませようとする。
「えぇ。ノエルと呼んでいただきますと嬉しいですわ」
お互いに自己紹介を済ませるがノエルは何やら不満げに見えた。
そんなノエルだったが、意を決したのか口を開く。
「・・・『ただいま帰りました』は?」
「は?」
あまりに予想していないことを言われ、意味を理解するかしないかのところでもついつい聞き返してしまう。
「『ただいま帰りました』を言ってほしいと言っていますの」
「・・・ただいま帰りました」
「それでいいですわ。それで夕飯はどうします?どこかで済ましてきました?」
「いや、まだです」
初対面での会話でいきなりつまずいたこともあってか、神である私も丁寧な言葉遣いになっていた。
「これからのルームメイトなんですからあまり固くならないでほしいですわ。まぁ、夕食を食べていないのでしたら一緒に食べましょう?ちょうど出来上がったところでしたのよ」
言われてみれば確かにいい匂いがした。心なしかお腹も減ってきた。
「それじゃあ、いただくわ。ちょうどお腹も減っていたみたいなのよ」
配膳を手伝い、夕食を食べる。
「ご馳走さまでした。とてもおいしかったわ。ありがとう」
「お粗末さまでしたわ。お口に合ったようでよかったですのよ」
見た感じや立ち振る舞いを見ているといいところのお嬢様といった感じだが、これほどの料理が出来ているのをみると変わっていると思う。
「そういえばアナさんは入学式のほうに参加していらっしゃいませんでしたわね」
その時間帯は担任を問いただしていたな、と思いつつ適当なウソと話題転換でその場をごまかす。
「それにしてもノエルは随分と料理が上手いのね」
私に出来ることといえば精々狩ってきた獲物に味付けをして丸焼きにするくらいだろ。それを料理とはとても言えないのだろうけど。
「そんなことはないですわよ。去年ごろからお料理にハマってしまいまして、シェフにご教授頂いていたんですけど中々上手くいかないものですわね」
その後いくつかおしゃべりをして学園一日目は幕を閉じた。