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一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦

一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦<番外編 2>

作者: 愛松森

『一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦』番外編 第2弾です。


いつもより長くなりました。すみません。

 今日も私は、質問投稿ボックスを確認しに行く。

 学校の校舎裏の人目につかない所にそれはある。ひっそりと、こっそりと、置かれている。

 私がそれを設置してから一ヶ月が経過した。


 これまで、5件の質問に答えてきた。1年2組の子、野球部の少年、反抗期真っ只中だった少年、1年2組出席番号12番の子、そして先生。今思い返せば、なかなか考え深い質問ばかりだった。

 

 (もっと、軽い質問来ないかな~。重い質問は疲れるから、たまにはリフレッシュできるような軽い質問こないかな~)


 私は、箱の中を確認する。

 そこには、A4のプリントが入っていた。


 『この箱を設置した生徒へ


 この質問ボックスを設置したことについて話があります。明日(13日)の放課後、生活指導課長、立花のところに来てください。』

 

 上から約4行の短文。A4のプリントのそのほとんどが白紙である。実にもったいない。


(立花先生って、めっちゃ怖い先生じゃん。なんで呼び出しされるの?もしかして、許可なしにこの箱を設置したから?)


 実はなんの許可もなくこの箱を設置している。先生からの質問が来たときにはドキッとしたが、それから先生からの通告はなかった。一ヶ月が経過したので、少し安心していたが、とうとうこの日が来てしまった。


昨日は熱で欠席していた私は、昨日この箱の確認はできていなかった。そして、今日がその13日である。立花先生に呼び出されている、まさにその日である。


私は、呆然として箱のまえに立ち尽くしていた。しばらく空を仰いだ。雲一つない青空がそこにはあった。


覚悟を決めて、職員室に乗り込むことにした。思い立ったら行動が早いのが私の取り柄である。


「しつれいします、立花先生に用事があってきました」

立花先生は、職員室の一番奥、教頭先生の机の隣に陣取っている。私は、そこに攻め込むわけだ。いや、返り討ちに合うのだろう。


私は、箱に入っていたプリントを先生に差し出した。先生はそれを真顔で受け取った。

「お前があの箱を置いたのか」

「はい」

「ちょっと話があるから、隣の会議しつに入れ」


私はビクビクしながら、隣の会議室に入る。先生も後に続く。

この会議室ならどれだけ怒鳴っても周りに迷惑がかからない。先生にとって絶好のスポットというわけだ。もちろん、私にとっては最悪の戦場である。


先生は椅子に腰かけて、手を組む。私はその前に突っ立ている。

「お前、許可なくあの箱を設置していることは分かっているよな」

「・・・・・・」

戦死まじかの戦士の気分である。

「どうだ、もっと大々的にやってみないか、今度は許可ありで」

「・・・・・・」

開いた口がふさがらない。呆然と先生のその無表情の顔を見る。


「どういう意味ですか」

「だから、あんなひっそりとした場所じゃなくて中庭とか、校庭に設置する気はないかと聞いてるんだ」

「いいんですか」

「今回は校長先生の許可も出ている。悩み相談という建前だが、どのように使ってもいいとおっしゃっていた」


これは、絶好のチャンスだ。日の下に出ることは、あまり好きではないが、校長先生お願いとあらば生徒の私が断るわけにはいかないだろう。


「では、よろこんでその件引き受けさせてもらいます」

「よし、わかった。では、設置場所を決めたらまた報告してくれ。あと、守秘義務は伴うからな、他言無用」


 先生は、椅子から立ち上がり職員室帰って行った。

 私は、肩の重荷が消えて安堵する。先生の座っていた椅子にドサッと体を預ける。

 だだっ広い会議室に一人、目を輝かせる私がいた。


 その後、質問投稿ボックスは中庭に移転し、校舎裏のボックスも一応残してもらえることになった。どうして事がこのように進んだのか私は未だに知らない。


 『人生において、いつ、何が起こるかわからない。日常なんてものはなくて、毎日が非日常になる可能性を秘めている特別な日なのです。転機は急にやってくる。それをしっかりつかんで前に進んで行ってください。』

 校長先生がいつかの朝礼で言った言葉。

 

 (やっと、その言葉を実感することができましたよ、校長先生)


 私は、今日も箱の中をのぞく。一人でも多くの人に、私の思いを伝えるために。


『一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦』として、シリーズ化しています。

基本1話完結ですが、若干の連動もありますので、読みにくかったらすみません。

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