第十一話 力が見える能力と重心
「そう、三輪車よ!」
蘭子は微笑んだ。トライクというのは、三輪車のことらしい。知識がなかったので、想像がつかない。
その瞬間、明日空はスマートフォンを取り出していた。
「これだな」
スマートフォンで検索して、僕に見せる明日空。
この時代知らないことはすぐに調べてしまった方が早い。
大人が乗れる三輪車の画像がずらりと表示されていた。
「あー、こういう自転車か」
僕も理解を示す。
確かに見たことがあるかもしれない。
なかなか、幅をとるので、普通の自転車とは結構感覚が違うかもしれない。
「たしかにこれなら安心して運転出来そうだね。倒れないし」
「やっぱりそうなのか?!」
僕が倒れづらいことを確認し、詳しく聞く明日空。
力が掛かるマシンの事だと、僕の力が効いてくるようだ。
「うん、3輪になるといきなり安定するんだよ。重心がこの3輪の間に入っていると倒れない」
「もしかして、そういうのも見えているのか」
重心と転倒の関係性について説明する僕に対して、能力と関係しているのかと訪ねる明日空。
力が見えるということは重心も見えるという事ではないかと、明日空は推察したのだ。
さすがに頭の回転が早い。見えないものを想像する力がある。
「見えるのは、なんとなくね。重心がその間から外れると基本的には倒れるんだ。」
「重心も見えているのか、それはかなり便利だな、スポーツのインストラクターもできるぜ!!」
僕の説明に対して、新しい知見をくれる明日空。
僕らの力の使い方は無限に広がっているようだ。
格闘だけに使っていた時代とはもう違う。
「やっぱり凄い能力なのね、ルクの能力は」
「そんな万能ではないけどね」
蘭子が目を輝かせて来たので、謙遜する僕。
使い方によっては、なんのやくにたたない可能性も高いのが現代の超能力だからだ。
「となると、自転車が倒れないのはかなり不思議だけどな、その話は難しくなりそうなので、今回はすっ飛ばそう」
「確かに自転車が倒れない理由を説明するのは難しいんだ、答えは進んでいるからなんだけど」
と、自転車が倒れない理由について簡単に説明する僕。
「進んでいるから!?!?やっぱり難しいな!!パスパス!!」
「そうだね」
シンプルな仕組みほど実は奥深いものだったりするのが物理なのだが、ここを追っかけていても、ビジネスにたどり着かないと判断したので、このへんにしておいた。物理に関してなら僕もまけていないようだった。
「意外にもいいバランスかもしれないわね」
「でねトライクどうやって手に入れるんだ!?」
蘭子のひとりごとに、次のテーマで返す明日空。
やることはわかったとして、実際にどうするのか
「決まってるじゃない!」
「おお、そうなのか!」
自信満々の蘭子に対して、期待の目を返す明日空。
「もらいにいくのよ!!」
「はい!?」
「え!?」
僕と明日空は聞き返すのが精一杯だった。