第十話 トライク
新聞配達がいいのではないかと提案する蘭子。
それをうけて、明日空がいった。
「新聞配達面白いけど、やっぱりあれだな、新聞を我々がもってないのがキツイ」
「そうなのよね」
二人が、何かを確認している。
専門用語や知らない知識が増えてきて、何を言っているかわからないことが増えてきた。
やっぱりビジネスって難しいんだな、と実感していた。
でも、二人がいたら、出来るかもしれない、とも思っていた。
「どういうこと!?」
僕は全然分からなかったので、聞いた。聞かないと、二人はどんどん話を進めてしまう。それだと、ずっと理解らないままでいないといけない。それは嫌だ、すこしずつでも二人に追いつきたいと思っていた。
「つまり、仕入れをするか、時間を売らなきゃいけないってこと」
「あー、もう全然わからない!!」
僕はキレた。キレるつもりは全然なかったのだが、全然ついていけない自分に苛立ちもあった。専門用語が多すぎる。仕入れもなんとなくはわかるけど実際のところの意味は理解らない、理解らないまま話を進めるとあとで大変なことになる。
「つまり、商売をするのに誰かを通さないといけないということね。この場合、新聞社に仕事を貰わなければいけないということなの。これがタクシーだったらいいんだけど」
「タクシーやりたいよな!ただ、運転免許がないからなー」
と、二人が運転免許の問題のために、自転車で配れる新聞を提案していたという。そのとき、普通に疑問が湧いた。
「え!?タクシーやればいいじゃん!!」
僕は普通にそう思ったので口にした。
二人は何を気にしてストップしているのだろう。
タクシー、つまり事を運ぶ事業がやりたい、ということだろうと思って。
「だから、免許がとれないんだって!」
そう口にした明日空を見ながらこういった。
「自転車でやればいいんじゃない!?」
僕は、当たり前のようにそう言った。
そう、自動車でタクシーが出来ないのであれば、自動車免許のいらない自転車でやればいいのではないか、そう思った。
「天才!」
ぱちんと指を鳴らしながら僕をほめてくれている蘭子。
蘭子の頭のなかで全てのピースが揃ったのだろう。
口元にわずかに笑みがこぼれている。
「それできまりね!フランスでは似たような事業があったはずだわ。」
「え!?自転車で人を運ぶの!?人力車みたいなもの!?」
と、古き好き日本のビジネスを例にだす、明日空。
でも、なんとなく想像が出来てないみたいだった。
青春高校生のカップル二人乗りあたりを想像しているのかもしれない。
「そう、トライクね」
当たり前のように蘭子が言う。
知らない単語が僕と明日空の二人を駆け抜けた。
「トライク!?」
「トライク!?」
僕と明日空が口を揃えて質問した。
まったく想像が出来ない、僕ら。
Trikeとあたまに浮かべて、triってことは三が関係するのかな、と思った。
「そう、三輪車よ!」
蘭子は微笑んだ。