初恋9
【響の宿舎の庭】
「シロ。響は?」
「ニャニャ€%ニャ」
「出かけたのか」
「ニャー」
〈シロを抱っこする璃子〉
「シロ、聞いてくれる?」
「ニャ%#?」
「昔ある町に2組の若い夫婦が住んで居ました。
ちょっとのんびりの三郷さんと、世話好きの瑠璃さんは、すぐに仲良くなりました。
そしてある年の春、三郷さんに男の子が生まれると、同じ年の夏瑠璃さんには女の子が生まれるました。
仲良しの2人は、お互いの子供を自分の子のように可愛がって育てました。
2人の子供は、ご飯を食べるのもお昼寝も一緒、お風呂も一緒でした。
小学生になると、少しおませさんの女の子は、男の子を異性として意識するようになりました。
でも、男の子は幼いままで、まるで兄妹のように思っていました。
高校は同じ学校でも、普通科と音楽院に別々に通うようになりました。
高校生になった男の子は、急にに素敵になっていました。
女の子は、小学校の頃からずっと彼の事が好きでした」
「ニャオニャ?」
「今は…今はね…」
「シロ、魚釣って来たぞ」
「一本木先生」
「あれ?鐘城先生は?居ないのか…この魚どうしよう?」
「冷蔵庫入れとく。ねえ、一本木先生。呑みに行かない?」
「良いねえ、行かか」
「あら、先生も方言使うんじゃない」
「そんなに喜ぶのか?」
「私も覚え中。さ、行こう。じゃなかった。なら、行かかいな」
【田んぼ】
さて、どこに連れて行くかな…?
【バス停】
「わあー、素敵なバス停」
「こんなもんで感激するのか?」
「だって、凄い良い感じよ」
「1日3本しか無いよ」
「乗るの?」
「乗る」
「わはぁ」
「車で行くと、呑めんからな」
「どこまで行くの?」
「倉吉」
「聞いた事有る」
「帰りはタクシーになるな」
【テナントビル】
「ここだよ。呑み屋じゃないけど、酒が呑めりゃ良いだろ?」
「うん、良いよ」
【カラオケ】
「あは、カラオケ久しぶりー」
「たまには、良いよな」
〈カラオケで歌う竜太〉
「え?演歌?ま、まあ、何でも唄って」
響と来たら、オペラのアリアとかカンツォーネだもんね。
【璃子の宿舎】
「あー、楽しかったー。あのバスが良いわねー。窓からの景色が最高よー」
「そうかね」
「カラオケも、楽しかったわよ。ストレス発散出来て良かった。ありがとねー」
「まあ、喜んでもらえて良かったよ」
「また、どっか連れて行ってねー」
【学校の保健室】
〈傷薬をつける一本木竜太〉
「一本木先生」
「野上か」
「きんにょの晩(昨日の夜)璃子ちゃんとデートしとんなっただらー」
「見とっただかいや」
「デートしとった、デートしとった」
「もうええけ、いねー(帰れ)」
【職員室】
「一本木先生、高梨先生とデートしてたんですって?」
「魚路先生まで言いなるか…観光案内しただけですよ」
〈そこに璃子が来る〉
「一本木先生。またデートしましょうね」
「だから、デートじゃないって」
「一本木先生、赤くなってますよ」
「からかわないでくださいよ」
【諏訪旅館】
さーて、お風呂入ってサッパリしよう。
「鐘城先生、いらっしゃい」
「こんばんは」
「高梨先生は、一緒じゃないの?」
「今日は、1人ですよ」
「そうですか、ごゆっくり」
いつも一緒だと思われてる?
【温泉】
先客だ。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
「一緒になったのは、初めてだね」
「そうだね、俺は時間決まってないから」
僕も気まぐれだけどね。
行きたい時に、行きたい温泉に行く。
良いなあ、この暮らし。
一本木先生、昨日璃子と呑みに行ったんだよな。
大変だっただろうな。
僕は、慣れてるけどね。
まあ、彼が何も言わないなら、黙っておこう。
【中町学園踊り場】
「先生。ニーナー(川蜷)取り行かじぇ」
「良いねえ、行く行く」
柿崎玄と荻野寛太が、川蜷取りに誘ってくれた。
学校の裏の川に居るらしい。
綺麗な水に住んでいるそうだ。
蛍の幼虫が食べる、ってお婆ちゃんが言ってたな。
「さーなカッコじゃいけんがな」
【学校の裏の川】
と、言うわけで、僕も体操着に着替えて川蜷取りに来た。
「ハンザケがおるかも知れんじぇ」
ハンザケって、サンショウウオの事だよな。
噛みつかれたら、雷が鳴るまで放さないって、お婆ちゃんが言ってたぞ。
「かーなとこ(こんな所)にゃ、おりゃーしぇんけ」
「ハハハ、ウソウソ」
玄のヤツ、僕をからかって笑ってる。
「コイツ。僕が何も知らないと思って」
3人で笑った。
川蜷取り楽しいな。
たくさんゲットしたぞ。
「どうやって食べよう?」
「煮て食やええがな」
煮るか。
お婆ちゃんは、味噌汁にした、って言ってたな。
【響の宿舎】
「シロ、美味しい?」
「ウニャ、ウニャ、ウマ%☆♪ニャ」
僕達が帰ると、璃子がシロにご飯をあげていた。
「璃子ちゃん、ニーナー取って来たに」
「へー、何々?わあ、貝ねー」
「待て待て、璃子に渡すとどんな料理になるかわからんぞ」
「失礼ね」
「璃子の料理は、理科の実験みたいだからな」
「あは、想像つく」
「荻野君。何納得してるのよ」
「ビーカーで煮るんだぞ、怖いだろ?」
「そりゃ、きょうてぇがな」
「柿崎君まで言う?お鍋が有れば、ちゃんと使うわよ」
【学校のプール】
「あ…」
〈響を発見して恥ずかしがる香〉
「やだ、どうして響先生がおられるの?」
やだ、って何だよ。
「水泳の授業、俺1人で目が届かないと危ないからな」
「響ちゃん、泳げるの?」
「あ、言ったな。こう見えて、中学生の時は区大会に出たんだぞ」
「本当かねー?」
「諏訪。お前見学のくせに何言ってんだ?鐘城先生泳げるから俺が頼んだんだ」
「へー、じゃあ先生達で競争してみてよ」
何言ってるんだ?
授業だろ。
「良し、やるか」
って、一本木先生やる気満々だから…
ここは、やるしかないか。
じゃあフリー(クロール)で勝負!
「2人とも頑張れ」
「響先生頑張って!」
「香が響ちゃん応援するなら、私一本木先生応援する!」
「響先生頑張れ!」
「一本木先生頑張れ!え、どっち、どっち?」
「良い勝負だね」
〈わずかに響の勝ち〉
「え?響ちゃん凄い」
「一本木先生に勝っちゃった」
〈プールから上がる響、プールの中で悔しがる一本木竜太〉
「くそー、俺が負けるなんて…」
「一本木先生も早いな」
【職員室】
期末テストが終わった。
「響は、プリントじゃないの?」
「音楽は、歌のテストだよ」
「良いなあ、私はプリントの採点で忙しいわよ。でも、生徒数が少ないから、東京の学校よりは楽よね」
それだけ一人一人の先生と深く関われて良いよな。
この学校は虐めも無いし、特に困った事も無くて良い。
「今度の土日に、河原で花火大会が有るよ」
「へー楽しみだな」
「夜の7時からだから、行こうよ」
「良いわよ」
「よっしゃ!」
一本木先生嬉しそうだな。
璃子とデートか。
邪魔しないようにしよう。
【響の宿舎】
〈土曜日の夕方〉
「響。花火大会行こう」
「璃子は、一本木先生に誘われてるんだろ、今日は別行動だな」
「何よ、良いじゃない、別に一緒でも」
「デートの邪魔する気はないよ」
〈そう言うと、響は出かける〉
「シロ聞いてよ」
「ニャンニャ?」
「響ったら、変な気をまわしてるのよ。他人の事はわかるくせに、自分の事になると、本当に鈍感なんだから」
「ニャブ%☆#ニャ」
【河原】
〈花火大会の会場〉
結構人が居るな。
花火大会には、よその町からも来るそうだ。
東京のような事はないけど、それでも人出が多いな。
あ、生徒達が居た。
眞澄「あ、響ちゃん。始まるよ」
あれ?香は来てないのかな?
いつも、3人一緒なのにな。
男子達も来てるぞ。
ああ、璃子と一本木先生も居る。
〈花火大会が始まった〉
空気が良くて空が綺麗だと、花火が映えるな。
そう言えば、この川には蛍は居ないのかな?
蛍の幼虫は蜷を食べるんだよな。
学校の裏の川なら居るだろうな。
「先生どこ行きなる?」
「蛍を見に行こうかと思ってな」
「蛍が珍しいだかえ?」
「実は、まだ見た事が無いんだ」
「俺んとこなあ、部屋で寝とっても見えっぞいな」
「おお!素晴らしい環境だな」
【中町】
その頃香は…
花火大会は9時までだから、少しぐらい寄り道しても大丈夫。
【小川】
響先生お盆には東京に帰るのかしら?
浩一郎お爺ちゃんの事聞いて来てくれると良いんだけど…
でも…
怖い。
もし血が繋がってたりしたらどうしよう?
それでも好きなの。
〈そして、香が行って少しすると響が…〉
ここには蛍は居ないか。
やっぱりあそこだな。
【学校の裏の川】
うわ〜居た居た〜
綺麗だな…
あれ?
あそこに居るのは…
「あ…」
びっくりした。
どうして先生がここに?
「1人か?」
「はい」
不思議だな、いつもこの子とはこんな会い方する。
「蛍、綺麗でしょう?」
「ああ、幻想的だな。雲の上の世界に居るみたいだ」
「覚えてますか?雲の上での約束」
「え?」