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『ツインソウル物語3』“初恋”  作者: 大輝
第5章《あがなんは好かんけ》
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初恋5

【理科室】


「柿崎君。悪いんだけど、手伝ってくれる?」


「ええじぇ」


「じゃあ、これ持って」


〈璃子は、教材を玄に持たせる〉


「はい、これも、これも、これもー」


〈玄の手の上に教材を積み上げていく〉


「うわっ」


【職員室】


〈璃子の後ろから荷物を持った玄が入って来る〉


「ありがとう。そこに置いて」


「ああ、えらかった」


「何自分で褒めてるのよ。男の子なんだから、か弱い乙女が重ーい荷物を持って困ってたら助けるものよ」


誰がか弱い乙女だ?


柿崎が困ってるし。


「あのなあ「えらかった」は、疲れたって事だよ」


「へー、方言なのねー。ごめんね、もう帰って良いわよ。ありがとう」


〈ムッとして職員室を出る玄〉


【職員室前の廊下】


「何だい!」


【職員室】


「女の子は、あんまり方言使わないのよねー」


「方言使うのは年寄りと、山の方に住んでる子だな。俺だって昔は使ってたけど、今は、テレビやネットで標準語わかるし」


と、言うのは一本木先生だ。


「私は、よその町に出てた事が有るんですよ」


魚路先生は、よその町に居たのか。


まあ皆んな、僕達には出来るだけわかりやすく話してくれてるんだよな。


【3年の教室】


〈友達の野上卓と話す玄〉


「標準語で、どがにー言やぁええだらーか?」


「響先生みたやに言やぁええがな」


「だらず。俺あがなんは好かんけ」


「さあな事言うないや」


「先生来なったじぇ」


「野上、柿崎、席に着きなさい」


〈魚路先生の歴史の授業が始まる〉


【柿崎の家】


〈スマホで調べ物をする玄〉


「えらいは、疲れた。ああ、疲れた」


「お母ちゃん。お兄ちゃんが標準語喋っとる」


「やれやれ、ほんにえ」


「先生に聞かれたけだがな」


【校長宅の蔵】


〈蔵で探し物をする香と涼子〉


「お姉ちゃん、これ?」


「ああ、有った有った」


〈その時古い紙のような物がパラパラと落ちる〉


「何だろ?」



〈古い和紙の封筒を見る涼子〉


「昔の手紙みたいね」


「墨がにじんで、良くわからないなぁ…」


「関…関金から?」


「女の人の字だね」


「浩一郎様って…誰?」


「そう言えば、響先生のお婆ちゃん関金の人って知ってた?」


「え?知らない」


「ヘッヘッヘー。お姉ちゃんの情報早いでしょう?」


「東京の人と結婚したのかな?」


「どうかな?お婆ちゃんがこっちの人と結婚してたら、先生も近くの人だったのにね」


【料理屋】


〈響と璃子か食事をしながら呑んでいる〉


「あら、一緒に良い?」


「どうぞ、どうぞ」


〈晶子と美令が合流した〉


「やっぱり、松葉蟹は美味しいですねー」


「そうですか?」


「私達は、食べ飽きてるからね」


地元の人には、これが普通なんだよね。


そう言えば、僕が小さい頃蟹の足を握って親父に抱っこされてる写真が有ったな。


味噌汁にするのは、セイコ蟹ね。


もっと小ちゃいやつ。


お婆ちゃんが一度伊勢海老を味噌汁にしてみたら、セイコ蟹ほど美味しくなかった。


ズガニは、大伯父が闇夜の晩に取りに行ってたんだって。


月夜の晩は、身が入ってないらしい。


「鐘城先生のお婆ちゃんは、関金の人だってなぁ」


「そうですよ」


「名前は?何て仰るの?」


「川原都子です」


「旧姓は?」


「ちょっとわからないです」


「都子さんて聞いた事有る気がするな」


「関のどの辺だらあか?」


「近くに地蔵院が有るって言ってましたけど」


「どっかで聞いた話しなのよね…」


「上ん茶屋とか、下ん茶屋とか言ってだけど、昔の話しで良くわからないし…」


「お婆ちゃんは、ご存命なの?」


「はい、元気です」


【響の宿舎】


〈ご飯を食べるシロ〉


「ウニャ、ウニャ、ウマ%☆♪ニャ」


「シロ。お前すっかり飼い猫だな」


「ニャーオン」



お婆ちゃんに良く聞いておいて、って言われたけど…


トロいからな。


80過ぎてるけど、痴呆症は無くて、あれ以上ボケようがないぐらいの天然ボケ。


昔からのんびりだけど、祖父が亡くなってから尚更のんびりになった。


メールなんて出来ないし、電話じゃ時間かかるし、お袋に聞く?


母にメールしてみた。


旧姓は「田野倉」だと教えてくれたけど、詳しい話しは、今度の休みに帰って自分で聞けだって。


夏休みまで帰れないよ…。


〈翌朝〉


シロにご飯をあげた。


「ウニャ、ウマ%☆♪ニャ、ウニャ」


「ちゃんと噛んで食べてるか?」


「コッコッコッ」


「ニャ?」


「シロ?」


シロが庭に飛び出した。


「コーッ、コッコッコケー!」


【庭】


「うわ!待て待て、シロ!」


お尻を振って鶏を狙ってる。


僕は慌ててシロを捕まえた。


「お腹いっぱい食べただろ?そいつは逃がしてやれ」


食べようと思ったわけじゃないんだよな。


ただ、じゃれたかっただけだ。


「おっと、遅刻する!」


【中町】


田んぼを通って学校へと急いだ。


【職員室】


フー、間に合った。


「何?走って来たの?」


「うん。遅れそうだったから」


「珍しいわね」


【廊下】


さあ、授業が始まるぞ!


【音楽室】


〈部活の時間〉


あれ?


今日は香だけか?


「眞澄は補習で、未来は畑の手伝いがあるからお休みです」


香って、訛ってないんだよな。


「女子は何で方言使わないんだ?」


「使う子も居るけど、眞澄は、旅館のお客さんと話せるように標準語使うんです。私は、7才まで横浜に居たから」


「へーそうか。あ、僕が高校生の頃だな。横浜の学校だった」


「えっ?」


「どっかですれ違ってたかもな」



先生って、いつも笑いながら言うけど、びっくりした…


「この前はバロックだったから、今日は古典派聞くか。モーツァルトのピアノコンチェルト20番と21番。フリードリヒ・グルダさんの演奏で」


横浜の学校ってどこだろう?


【香の部屋】


「そういう時の為のネットじゃない」


〈パソコンを出して調べる涼子〉


横浜の学校って言ってたけど…


「音楽学校よね?いくつか有るけど…うちから近いのは…ここ」


先生は26才だから、高校生の時って10年ぐらい前ね。


私は6才。


同じ時期同じ場所に居たのね…


「ねえ、横浜の近くに、神緒美貴さんて言う人のサロンが有るのよ。そこで、退行催眠やってもらえるみたいよー」


「ふーん」


「今度、お父さんの所に行った時でも寄ってみれば?」


【響の宿舎の鶏】


何故かシロと鶏が仲良くしてるぞ。


まあ、シロはまだ子供だし、お腹が空いてなければ鶏を襲ったりしないよな。


「フー!ウー!ウー!フヮー!」


あ、他の猫から守ってる。


ここは、シロの縄張りだしな。


女の子はキツいね。


野良猫が逃げて行った。


でも、他の動物が来るかも知れないから、一応鶏小屋を作っておくか。


ギコギコ…


トントントン、カンカンカン。


今は良いけど、寒くなるといけないからな。


「良ーし!出来たぞ」


コッコちゃんの鶏小屋完成!


鶏だからコッコちゃん。


また、まんまなネーミングだけどね。


【響の部屋】


〈朝ーーー〉


コッコ「コッコッコッコケー、コッコッコッ、コケー!」


うわっ。


鶏の朝は早い。


コッコちゃんの声で起こされた。


【庭】


「うわー、卵を産んでくれたぞ!」


まだ温かい。


卵かけご飯にするかな。


【台所】


コンビニで買ったご飯チンして…


これで良し。


「いっただきまーす」


うおっ、美味しい。


ご飯が美味しければもっと良いよな。


地元のお米買って炊くか。



【庭】


コッコちゃんの卵でタンパク質を摂ったし、元気に学校行きますか。


【体育館】


〈朝礼が終わり生徒達に囲まれる響〉


「響ちゃん」


「横浜の学校行ってたんだって?」


「何て学校?」


「オルフェウス音楽院」


「えっ?うちの近く」


「不思議だよね。やっぱり響先生と香、縁が有るんだね」


〈少し離れた所から見ている玄〉


「どがで、あがなんがええだかえ」


うーん、何故か柿崎玄だけ心を開いてくれないな。


「おい、柿崎。言いたい事が有るなら、言って良いんだぞ」


「なら、勝負しょうかぁ」


これはどうするかな…?


「何の勝負だ?」


「釣り」


「大食いにせえや」


「ならどっちも」


ここは受けて立つか。


面白そうだしな。


「先生大丈夫?」


「釣りはあんまり得意じゃないけど、大食いなら自信アリだな」


「玄強いよ」


【職員室】


勝負は明日の土曜日だ。


早朝川に集合だって。


「へー、面白そうね。私も行く」


ギャラリー有りだ。


何が釣れるんだろう?


楽しみだな。




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