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初恋22

【職員室】


12月になった。


3年生は、受験勉強も追い込みだ。


殆どの生徒は、1月に入試が有る。


朝風香が受験する聖マリアンナは、1月に第1次試験で、2月に第2次試験が有る。


合格発表は、2月だ。


浅田が受験する看護学校は、1月が入試の所と2月の所が有るな。


担任を持っている先生は、大変な時期だ。


僕は担任を持っていないけれど、全ての生徒の進路が決まるまで落ち着かない。


【3年の教室】


「看護大学だと4年間、専門学校だと3年間」


「私は6年間だから、未来が看護師さんになる方が先ね」


「私はとりあえず、4年で卒業したら帰って来るつもり。それから若女将になる修行が待ってる」


「留年しなければよね」


「そりゃ、そうだ」


「その前に受験よ」


「うん、頑張ろう」


【講堂】


12月24日、終業式の後は、恒例の餅つき大会だ。


3年生は自由参加だけど、皆んな気分転換に参加したようだな。


「響先生、顔にきな粉がついてる」


「あ…」


〈ハンカチで響の顔を拭く香〉


「オッホン」


〈朝風校長の咳払い〉


やだ、お爺ちゃん。


もう冬休みになっちゃう。


しばらく会えないの。


今日は、クリスマスイブ。


今年は、誰と一緒に過ごすのかしら?


【香の部屋】


去年は璃子ちゃんと一緒だったみたいだけど、今年もそうかしら?


「か・お・り」


「お姉ちゃん」


「勉強が手につかないみたいね」


「うん…」


「イブだもんね」


響先生のそばに居たい。


「まあさ、ケーキ食べて、それからまた勉強しなさい」



【料理屋】


璃子は、3年生の担任だから、ずっと忙しくしていた。


今日は、久しぶりにエネルギーチャージ。


璃子の気力を回復する魔法のドリンクは、やっぱりお酒だ。


僕は、美味しい料理。


「未来ちゃんは、看護学校を3か所受験するんだけど、1か所は准看護師。彼女の第一志望は看護大学」


「入試は2月だな」


「うん」


「開業する事に決めたわよ」


「晶子先生」


「未来ちゃんにはうちに来てもらいたいから、合格してもらわないと」


この町に1か所しか無い診療所。


設備も整っていないし、限界を感じていたらしい。


香が医者になって帰って来たら、一緒にやりたい、って言っていたけど、話しが具体的になって来た。


「美令さんも一緒でしょう?」


「だーじぇ」


病院が出来たら、香と未来が一緒に働くのか。


良いなあ。


ベテラン看護師さんの池畑美令さんも居るし、町の人は皆んな顔見知りだしな。


【東京の川原家】


お正月、東京に帰って来たけど、3年生の受験の事が気になって、落ち着かない。


今年は、何でだ?


何でいつもより落ち着かないんだ?


何か…モヤモヤするな。


休み明けには生徒達の入試が始まる。


合格発表は、2月の子も居れば3月の子も居る。


そして…


卒業だ。


痛て…


何故胸が痛むんだ?


今…香の顔が浮かんだぞ。


ああ、もう!


封印だ!封印!


「響、どうして食べないの?」


「食べる、食べる」


お婆ちゃんも、今月87になるんだよな。


足や腰が痛いって言いながらも、美味しい料理を作って待っていてくれたんだ。



「響も、そろそろ結婚考えなさいよ」


「えっ?」


「「えっ?」じゃないわよ。来年30でしょう。お母さんだって、早く孫を抱きたいわよ」


「ひ孫か、楽しみだね」


「そ、そのうちね」


待っててくれ、って言ってたよな。


6年後…


僕は35だ。


香は25。


ハハ…


何考えてるんだ?


きっと大学で良い人見つけて来るよ。


そんなオッサンになった僕を、いつまでも好きでいてくれるわけないよな。


だいたい何でこんな話しの時に香を思い出すんだ?


香は生徒で僕は教師。


恋愛感情なんて、完全に封印してるはずだろ。


【中町学園廊下】


はあ、何だか寂しいな。


いつもなら、あの辺から出て来て「響先生」って微笑むんだけどな。


新学期が始まって、3年生は入試だ。


入試が終わると、合格発表待ちでハラハラさせられて、それが終わったら卒業してしまう。


何だろな?


何故今年は、こんなに寂しいんだろう?


生徒が可愛いのは、いつも同じはずなのに…


東京の学校に居た時だって、生徒に告白された事なんて、何度も有るんだけどな。


香は、今迄の子と違う気がするんだよな。


何か…


不思議な縁で結ばれているからかな?


過去世で一緒だったり、彼女のひいお爺さんの初恋の相手が、僕の祖母だったり…


ああ、もう!


考えるのやめた、やめた!


考えれは考えるほど、迷路にハマりそうだ。


【職員室】


〈そして、2月〉


「第1次試験合格しました」


「朝風香さん、第1次試験合格!第2次試験も頑張ってね」


「はい」


良かったー!


「雨宮那月、荻野愛佳、合格です」


良し!


浅田未来の報告は、まだか?


2月の半ば、朝風香第2次試験合格の知らせ。


そして、2月の終わり頃になって、ようやく浅田の合格の知らせが入った。


「浅田、第一志望合格おめでとう」


「ありがとうございます」


【音楽室】


はあ、殆どの3年生の進路が決まって、やれやれだな。


「響先生」


「香…どうした?」



「もうすぐ卒業式です」


「そうだな」


「私…4月には横浜に行きます」


一人暮らしか?


それは、ちょっと心配だぞ。


「父の家から、大学に行く事になりました」


ホッ…


って、何心配してたんだ?僕は…?


「その前に…デートしてもらえませんか?」


「えっ?」


「だって、もう会えなくなっちゃう」


「あのなあ、香は生徒で、僕は教師だから」


「卒業式が終われば、もう良いでしょう?3年も待ちました、ううん、もっと…夢で見た時から、ずっと待ってたんです」


卒業したら、生徒じゃないって言っても、教え子なのは変わらないよな…


これは、どうしよう?


「あ…えっと、卒業式終わってから考えよう」


「わかりました。それまで待ちます」


やれやれ…


今考えると、迷路に迷い込みそうだぞ。


その日になってからにしよう。


「そ、そうだ、帰ってラジオ聴かなきゃ。今日は伊藤恵さんの演奏会が放送されるんだ」


「また、ごまかして」


「香も受験終わったんだから、良い音楽聴いて疲れた心を癒すんだぞ。じゃ、じゃあな」


「……」


「はあ…」


〈汗汗で逃げる響〉


もう。


いつもごまかして逃げるんだから。


【諏訪旅館通路】


「全く、響ちゃんてば、頭固いんだから」


「本当だよ。卒業したらデートぐらいしてくれたって良いのにね」


「他に…居るのかな?」


「璃子ちゃんとか?」


「確かに仲良いけどさ」


「あ、言ってたら来なった」


「2人一緒」



「あら、3人揃って」


「先生達また一緒?」


「一緒に来たわけじゃないんだけど、階段でな」


「居たから、捕まえたのよ」


〈温泉に向かう響と璃子〉


「お似合いっちゃあ、お似合いだけど」


「……」


「香、もう少しの辛抱よ」


「璃子ちゃんが嫌な奴なら、あんなの!って言えるのにね」


【温泉】


高校の3年間で、女子の成長って早いよな。


初めて会った頃は、まだ幼い感じがしたのに…


3年になったら、急に大人っぽくなって…


もう、あの子達も大学生だ。


「響、一杯呑んで帰ろうよ」


「また一杯が二杯になり、鳥取県の地酒全部呑むんだろ?」


「私の担任の生徒の進路が、全て決まったお祝いよ」


「美味しい牡蠣が食べたいな」


「じゃあ、小料理屋さんに行こう」


【小料理屋】


「よう、お2人さん」


一本木先生、来てたのか。


「3人で呑むの、久し振りだな」


「さーし振りだな」


「フ・フ・フ・もう方言もだいぶわかるようになったわよ」


そう、こっちに来て3年。


最近は「どういう意味?」って聞かなくなった。


町の人達と、方言で喋ったりしてるよな。


お婆ちゃんに言わせると、関金弁と倉吉弁は違うらしいけど、奥山町の言葉はどっちに近いんだ?


「担任の生徒が卒業するのって、何度経験しても寂しいわね」


「また下から上がって来るさ」


中等部の生徒で、顔見知りの子が居るもんな。


「香みたいな事にならないように、気をつけよう」


「ハハハ、先生に憧れる年頃だからな、俺だって、鐘城先生が来る前はモテたんだぞ」


「あら、今でも人気有るじゃない」



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