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『ツインソウル物語3』“初恋”  作者: 大輝
第20章 シンクロする2人
20/24

初恋20

【響の宿舎】


今日は璃子は学校だし、1人で行くか…


倉吉ぐらい1人でも行けるぞ。


バスに乗れば良いだけなんだからな。


【バス停】


シロの避妊手術が済んだので、倉吉の動物病院まで迎えに行くんだ。


【バスの中】


関金から小鴨川を渡ると河原町って、言ってたっけな?


かーら町(河原町)の角の菓子屋のかへいさんが、蚊に噛まれてかいー、かかあ掻いてごしぇ、かかあもかいーけ、よう掻かん。


【倉吉の町】


夕方に来てください、って言われたから、まだ少し早いか。


どうしよう?


どこか観光スポットでも行くか?


こういう時は、いつも璃子が仕切って、僕はついて行くだけだからな。


1人だと、どうして良いのかわからないぞ。


倉吉絣は、見せてもらえるのかな?


〈スマホで倉吉観光案内を調べる響〉


はあ、絣の着物を着て町を歩いて、写真撮影が出来るのか。


璃子が喜びそうだよな。


今度一緒の時にしよう。


1人で行ったら、文句言われそうだもんな。


梨っこ館に行くか。


【梨っこ館】


うわ〜凄い老木が有る。


あ、ナッシーだ。


可愛いな。


世界の梨が有るぞ。


歴史も学べるようになってるんだな。


梨は、カリウムが多く含まれていて、高血圧や脳卒中の予防になるのか。


【梨っこ館前】


楽しく学べたぞ。


まだ時間が有るか。


お婆ちゃんが良く言っていた、打吹公園に行ってみるかな?


せっかくだから、白壁土蔵を回って行こう。


【白壁土蔵群】


うわ〜この景色だ。


お婆ちゃんは川が流れてる、って言ってたぞ。


ああ、本当だ。


向こうに川が有る。


昔の倉が、今はレストランになってるよ、って言ってたな。


白壁土蔵群は、重要伝統的建造物群保存地区なのか。



【打吹公園】


ここが、打吹公園だ。


日本さくら名所100選、日本の都市公園100選、森林浴の森100選に選ばれているのか。


羽衣池?


羽衣を隠されて、下界の男性と結婚した天女が、羽衣を見つけて、子供を地上に残したまま天に帰ったと言う打吹山の伝説か。


あれ?


お袋が三味線で弾く常磐津の松迺羽衣って、三保の松原の漁師白竜と天女の話しだよな。


あのお袋、あれで常磐津の師範だからな。


お師匠さんは、特別無形文化財だ。


羽衣はお袋の得意な曲で、弾き唄いしてるけど、唄の意味が良くわからないもんな…


なんて言ったら「だからお稽古なさい、って言ったでしょう」って、お袋に怒られそうだけどな。


「天女の池だって、素敵!」


うん?


「あら、響」


やっぱり璃子の声だったか。


一本木先生も一緒だ。


「学校じゃなかったのか?」


「終わったから来たのよ」


はあ、またデートの邪魔してるのか?僕は…


「シロ迎えに行くから、またな」


「私も行く」


「何言ってるんだよ、デート中だろ」


「あ、そうか」


「いや、俺、はっきり断られたんだ」


「え?お前、断っといて付き合わせてるのか?」


「今は、普通にお友達よ」


「お前なあ」


「良いんだ、良いんだ、普通にする約束だから」


はあ、一本木先生は人が良いな。


断られたって、そう簡単に気持ち切り替えられるのか?


まあ、気まずくなるより良いけどな。


【倉吉の町】


結局3人でシロを迎えに行った。


早く連れて帰ってやろう。


マエストロは、浅田が見てくれてるけどな。



【響の宿舎】


〈シロの尻尾にじゃれて飛び回るマエストロ〉


「ニャニャ、ニャ」


シロの避妊もしたし、チャコは町猫なので、ボランティアの人が去勢してくれたから、もう赤ちゃんが生まれる事は無い。


こんなに可愛いの、もう見られないんだな。


「マエストロ」


「ミュー」


「出かけて来るから、ママと良い子にしてるんだぞ」


シロとマエストロは、浅田が見ててくれるから、お盆休みは東京に帰るんだ。


【東京の鐘城家】


「ただいま」


「お帰り」


【キッチン】


「お婆ちゃんは?」


「もう寝てるんじゃない?」


「そうか」


「明日、大学に行って来る」


【横浜のマンション】


「せっかく来たのに、パパは明日も仕事なのね」


「病気は待ってくれないからな。香も医者になるなら、覚悟しておけよ」


「そうね」


「涼子はどうしてる?」


「お姉ちゃんの神社、もうすぐ盆踊りだから」


「そうか」


【川原家】


「お婆ちゃんの煮物は、やっぱり美味しい」


「響、お嫁さんが料理を作ってくれたら、お母さんの味と違うとか、お婆ちゃんの方が美味しいとか、言ったらダメよ」


「うん、お袋もそう言ってた」


けど…


お嫁さんは、まだだから。


「ごちそうさま。大学行って来るね」


私が生きてる間に、結婚してよ。


響は、100まで生きろ、って言ってくれるけど…


まあ、丁度100まで生きた姉も居るから、頑張りますか。


【オルフェウス音楽院正門前】


ああ、久々に来たぞ。


秋は、学内コンクールとオルフェウス音楽祭だな。



【裏庭】


ピアノが聞こえる。


今日は、城咲先生か?


国際コンクールをいくつも優勝して、ショパンコンクール1位無しの2位になった翌年帰国して講師になったんだ。


今は、助教授だけどな。


ここの卒業生だけど、彼女がこの学校に居たのは小学校までで、ヨーロッパに留学したんだ。


ここは中学までは普通科で、高校から普通科と音楽院のどちらか選べるようになっていて、大学は音楽院だけだ。


元々音楽院だったところに、後から普通科が出来たんだよな。


【正門前】


ここが、オルフェウス音楽院。


響先生は、ここに通ってたのね。


こんなに近くに居たの。


本当に、すれ違っていたかも知れないわね。


【並木道】


温室で野菜を作っていて、カフェで食べられるんだけど、音楽を聴かせて育てた野菜なんだよな。


僕はピアノだからやらなかったけど、オルフェウス・アカデミー・オーケストラの人達が交代で演奏しているんだ。


今日は、誰か居るかな?


ちょっと寄ってみるか。


【温室】


誰も居ないか。


さすがに夏は暑いから皆んな嫌がってたもんな。


【正門前】


〈夕方〉


さて、お腹が空いたな。


何か食べに行くか。


【中華街】


お買い物もしたし、帰ろうかな?


〈店から響が出て来る〉


「あれ?」


「え?」


〈しばらく固まる2人〉


「どうして?先生の家東京でしょう?」


「大学に用が有って」


「じゃあ、さっきまで大学に?」


「うん、居た」


もしかして…私が通りかかった時も?


「香は、どうして横浜に居るんだ?」


「父に会いに来たんです」


「そうか、オルフェウスの近くだったな」


「先生の家は、東京のどこですか?」


「中野だよ。中央線の中野駅から15分ぐらい」



「そうだ、私行きたい所が有るんです」


「気をつけてな」


「あ、知らない町で生徒を1人にして心配じゃないんですか?」


「え?だって昔住んでただろ」


「7才までです」


「お父さんの家近いし」


「心配じゃないのね」


「いや、心配。凄ーく心配」


「ウフフ」


【遊園地入り口】


で、結局一緒に来てしまった。


まあ、保護者だな。


「初めてのデートね」


「違う違う、僕は保護者だから」


「フフフ」


何を言っても嬉しそうに笑っている。


本当に、いつも、香の笑顔は輝いているな。


【遊園地の中】


「乗りましょう」


「え?これ…乗るのか?」


「どうしてそんな嫌な顔するんですか?」


「……」


「先生はこの白い馬ね、私は馬車」


女の子は、好きだよな…


メリーゴーランド。


ああ、恥ずかしい。


〈夜になると、遊園地はライトアップされて、星空の中に浮かび上がる〉


「次は、あれに乗りましょう」


「え?」


「もしかして、怖いんですか?」


「いや…」


乗りました。


観覧車。


怖いのは、高い所じゃなくて狭い所です。


そして、こんな所で、君と2人っきりになる事だよ、はあ…。


「夜は綺麗ね」


「そうだな」


「あ、夜に誰かと乗った事有るんですか?」


「無い無い」


「本当かしら?」


「本当だよ…たぶん」


「たぶん?」


「無いです」(汗)


そんなの忘れちゃったけどな…


だから、たぶん。


「私は、小さい頃父と良く乗りました。でも、夜は初めて」


そうなのか。


「ロマンチックね」


ロマンチックになられても…


困るんですけどね…


ドキドキするな、落ち着け、相手は生徒だぞ。


「あ、そうだ。先生の切らさない食材って、何ですか?」


「うーん、ミルクと卵かな?」


コッコちゃんが産んでくれるし、昔から毎日食べてたぞ。


「覚えておきます」


って、嬉しそうに笑ってるな。


人の気も知らないで…



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