初恋16
【中町学園職員室】
「皆さん、冬休みはどうでしたか?」
「俺は、家でお母ちゃんのお節食べてのんびして、お参り行ったぐらいだな。魚路先生は?」
「ワカサギ釣りに行きましたよ。割と釣れましたね」
「ワカサギの天ぷら、美味しそうですね」
「鐘城先生は?」
「祖母のお節食べてのんびり。あとは璃子とお参り」
「高梨先生は、どうだったんだよ」
「私は、お正月は、来客が多くて忙しかったわね。お見合いもさせられたし」
「え?!お見合い?そ、それで?」
はあ、一本木先生が聞いてくれたか。
「それで、って?」
「どうなんだよ?お見合いの相手、どうする気だ?」
「そうね…」
「まさか、結婚するのか?」
「私も今年で27だから、そろそろ考えないとね…」
「そ、その人と結婚?」
「あ、その方には、お断りしようと思ってるの」
そうなのか…
「何、2人してホッとしてるんですか?」
え?
僕もホッとしてたか?
【階段】
ま、まあ、璃子のお見合いの話しがどうなったのかわかって、スッキリしたな。
さーて、授業、授業!
【理科室】
「璃子ちゃん、お見合いしなった、だっていや」
「ほんにか?」
「結婚しなるだらあか?」
「学校は、どがにーすっだらあか?」
「辞めちゃいなっ、だらあか?」
「辞めないわよ」
「あ、璃子ちゃん来なった」
「この学校好きだし、せっかくこんなに素敵な町に来たんだもの、しばらく帰りたくないわねー」
〈途端に笑顔になる悪ガキトリオ〉
「さあ、授業始めますよ。皆んな席に着いて」
【1年の教室】
「部活行こう」
「うん」
学校始まって、また毎日響先生と会える。
眞澄の憧れは、一本木先生だから良いなあ。
体育の先生だから、授業中でも窓の外見たらおんなる(いらっしゃる)もんね。
【音楽室】
「やだ、真っ暗」
「誰も居なくて真っ暗だと、音楽室でもちょっと怖いよね」
「何で入らないんだ?」
「キャー、もう、響ちゃん。いきなり後ろから声かけないでよ」
「どうして真っ暗なの?」
「DVDを見ようと思ってね、スクリーンを用意したんだ。さあ、席に着け」
「キャ」
「おっと、大丈夫か?」
〈躓いて、響の腕の中に入る香。電気がつく〉
「もう、座ってから電気消してよね」
「何のDVD見るの?」
「モーツァルトのピアノコンチェルト第24番。伊藤恵さんの演奏です」
「響ちゃん、同じピアニストのばっかり」
「うん。好きなソリストに巡り会うと、音楽を聴くのがもっと楽しくなるよ」
まあ、僕の場合親父がファンで、生まれる前から聴いてたんだけどね。
それでも、音楽の事がわかるようになって色々な人の演奏を聴いたけど、やっぱり一番好きだよな。
良いものは良い。
「私、今迄誰の演奏とかって気にしてなかった」
「私も」
「誰の作曲の、どの曲って探してたな」
「これからは、演奏者にもこだわってみます」
「良し、じゃあDVD見ようか」
「はーい」
【響の宿舎】
〈洗濯物をたたむ璃子〉
「ニャー」
「シロ、お腹空いたの?」
「ただいま」
「お帰り」
「お前な、洗濯物、トランクスとか有るし」
「有るわよ、勿論」
「子供の頃とは違うんだから、その、良いよ、そんな事しなくて」
「あら、今更恥ずかしくないでしょう」
中学生ぐらいまでは、うちに来ると、タンスの中とか片付けてくれてたけど…
「干しっぱなしだったからよ」
何だか僕がおかしいのかな?
今更璃子を異性として意識してるのか?
まさかな。
何か、こんな事させちゃ悪い気がするだけだよな。
でも、何でだ?
璃子も結婚して、夫の為に洗濯とかするんだよな、って…
どんな人だろう?
璃子の将来のお婿さん。
【コンビニ】
〈そして日曜〉
「あら、一本木先生」
「よう、1人か?」
「日曜日なのに、何で居るの?」
「学校に用が有って、行って来た帰り」
「それで、お弁当?」
「買うのやめた。飯行くか?」
「良いわよ」
「倉吉まで」
「私、行きたいとこが有るの」
【倉吉】
「なしっこ館て、名前が可愛いわよねー」
「どこに行きたいのかと思えば、梨記念館か」
【テナントビル】
「寄って行くか?」
「良いわよ」
【響の宿舎】
「璃子のヤツ、今日は来ないな」
「ニャオ%#☆ニャー」
「シロおいで」
「ニャー%☆♪」
【カラオケ】
一本木先生は、今日も演歌ね。
私は、やっぱりポップスよ。
さあ、歌うわよ~♪
歌って歌って、呑むわよ~
【奥山町の小料理屋】
送って来たつもりが、やっぱり梯子酒だよな。
今日は、帰りに鐘城先生と会ったりしないよな?
「この時期の牡蠣は、美味しいわねー」
響、牡蠣好きなのよね。
ここのお店美味しいわ。
今度一緒に来よう。
「ふくも美味いじぇ」
「あー、やっぱり福って言うんだ。こっちでは良く食べるのよねー」
ほんに、璃子ちゃんはよう呑むなあ。
こっだき(これだけ)呑んでも、酔わしぇん(酔わない)し。
【神社の中の部屋】
〈パソコンを開く涼子〉
魂の関係…
ソウルメイト…
ツインソウルねえ…
1人に12人存在して1割以下が同性。
広い宇宙にたった12人の縁の深い魂だけど…
これは、香には言わない方が良いな。
こんな物に振り回されない方が良いもんね。
ツインフレームは、1人に7人居て男女半々存在する。
恋愛関係にはならない。
ツインレイは、1人に1人だけの魂の片割れか…
ツインレイやツインソウルは、同じ時に転生している事が稀で中々巡り会えないんだね…
ソウルメイトは、意外とたくさん居るなあ。
それでも、人と人が巡り会って深く関わり合うって奇跡よね。
【香の部屋】
〈香が眠っている。そして夢の中へ。それは生まれる前の雲の上〉
「今度は、一緒に転生するのよ」
「きっと巡り会おうね」
「すれ違いは嫌」
「でも、結婚相手の候補は、3人ぐらい設定するんだよ」
「ちゃんと私を選んでね」
【小料理屋】
「大変、もう電車無いよ」
「タクシー呼ぶから、良いよ」
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「誘ったのは、俺だし」
「はあ、でも、梨っこ館行けて良かったわ」
「璃子ちゃん、俺な…」
「うん?」
「あ、いや…タクシーで送って行く」
「ありがとう」
【奥山町】
2月、結構雪が積もってるな。
昔ほど降らなくなったらしいけどね。
それでも、僕達は雪に慣れてないから、歩くのが大変だ。
「フフフ」
【中町学園玄関】
璃子の奴何だか嬉しそうだけど…
「スノーブーツに、ほくど入れたのよ」
そうか、柿崎の家から貰って来てたの、すっかり忘れてた。
「璃子ちゃん、スノーブーツ履いても転ぶんじゃない?」
「あ、失礼ね、そりゃ、そんなに運動神経は良い方じゃないけど、これなら大丈夫よ」
何を言われても、ニコニコだな。
「私達は、普通の長靴」
「小さい頃は、わざと滑って遊んでたよね」
「うんうん」
チャイムが鳴った。
「ほら、早く行け」
「はーい」
女子達はお喋りが好きだ。
時間が有ったら、いつまででも喋っているだろうな。
〈響と璃子が職員室へ向かう後姿を目で追う一本木竜太〉
はあ、2人はいつも一緒だな。
【音楽室】
3月は、卒業式だ。
この学校へ来て、初めての生徒達を送り出すんだな。
「今日は、卒業式で歌うグローリアを練習します」
「柿崎麻莉奈、アルトはこっちだ」
「はい」
柿崎麻莉奈と浅田未来が入れ替わってOKだな。
「では、始めます」
【職員室】
さて、帰って温泉に行こう。
【下町の階段】
今日は、どこのお風呂に入ろうかな?
【奥山町駅前】
「あら、響君」
晶子先生と、看護師さんの池畑美令さんだ。
「こんばんは」
「晩なりまして」
「香の事だけど、わかってるわよね?」
「はい、わかってます」
「あの子、まだ響君の事が好きみたいだけど、高校卒業して、それでも好きなら、その時は考えてやって。でも、それまでは絶対ダメよ」
【荻野湯】
「あら先生、いらっしゃい」
「今日は、手伝ってるのか?」
「お兄ちゃんは、勉強してるからね」
受験が終わっても勉強か。
寛太はいつも、学校から帰ると勉強している子だからな。
「愛佳も、もう2年になるな」
「進路考えなきゃ」
そうか、寛太がここを継いでお嫁さんを貰うんだもんな。
愛佳は、いずれここから出て、誰かの所へ嫁ぐんだな。
【温泉】
〈晶子に言われた事を思い出す響〉
そんな事言われてもな…
〈今はとにかく恋愛感情を封印している〉
人を好きになる気持ちも、冷めて行く気持ちも、自分でコントロールするのは難しいよな。
香は生徒で僕は教師だ。
初めから恋愛対象として考えてはいけない。
【香の部屋】
「香、どこの大学行くか決めた?」
「あんまり遠くは嫌だな」
「前は東京か横浜って、言ってたのに」
「近くで、度々帰って来れる所が良い」
「岡山医大は?」
「そうだね、考えてみる」
前は、横浜の医大に行って、お母さんみたいな医者になろうと思ってたの。
でも、今はここを離れたくない。
だって、響先生が居るから。
お母さんみたいに、南米の無医村に行こうと思ってたんだけど、今は…
どうしよう?
大学に行ってる間、離れてるのも心配なの。
お姉ちゃんは良いよね、この町の巫女になって…
結婚したら辞めるんだろうけど、私は、医者になって、どうしよう?
この町には、診療所が一箇所有るだけだし…
開業する?
ここじゃ、やっていけないよね。
うーん、どうしよう?
お年寄りが多いし、往診も大事だよね。
【響の宿舎】
「コッコッコッコッ、コケーッ」
はあ、朝だ。
コッコちゃんが起こしてくれるのは助かるけど、朝早いよな。
でも、新鮮な卵で栄養補給して、学校に行きますか。
「響おはよう、行くわよ」
「ああ、今行く」




