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『ツインソウル物語3』“初恋”  作者: 大輝
第13章 雪の舞い散る季節
13/24

初恋13

【職員室】


「2年生は、修学旅行に行っちゃったわねー。生徒数が少ないからよけいに寂しいわ」


そうだな。


1年なんてあっと言う間だ。


来年の春には、悪ガキトリオも卒業してしまうな。


荻野は京都の大学に行って、帰ったら旅館を継ぐようだ。


柿崎と野上は、いずれ家を継ぐので農業の手伝いをすると決めたようだ。


【下町の階段】


11月になると、だいぶ寒くなって来た。


温泉で温まろう。


今日は、どこのお風呂に入ろうかな?


「響、見て。山が白い帽子被ってる」


「ああ、本当だ。じゃあこの辺もそろそろ降るな」


「え?もう雪が降るの?」


「お婆ちゃんが言ってた「大山が白くなると関金も降る」って」


「近いもんね、同じか」


「たぶんね」


って、一緒に来たつもりないのに、璃子が居るし。


【奥山町駅前】


さて、今日はどこの温泉に入ろうかな?


と言っても、この辺りには荻野湯と諏訪旅館ぐらいしか無いけどね。


川に誰でも入れる温泉が有るらしいけど、行った事無いな。


【荻野湯】


「あら、先生。いらっしゃい」


「2人一緒なんだ」


女将の荻野温子さんと、1年の荻野愛佳だ。


「一緒に来たわけじゃないけど、途中で会ったんだ」


「ふーん」


「何だよ?そのふーんは」


「寛太君は?」


「お兄ちゃんなら、受験勉強してます」


「愛佳も、勉強しなさいよ」


ほら、言われた。


【温泉入口暖簾前】


「寒いから帰りに一杯呑んで帰ろう」


一杯で済むのか?


一杯が二杯になり、地酒端から全部呑むんだろ?


温泉で温まると中々冷めないから、呑まなくても良いんだけどね。


【温泉】


「そろそろ雪道用のブーツを買わなくちゃ」


「今は良いの有るみたいだな。東京では必要無かったから、ネットでしか見た事無いけど」


「可愛いの有るかな?」


「あれは可愛さより、機能性重視だろう?」


「あら、機能性も良くて可愛いのが良いわー」


「昔は、今みたいなブーツが無くて、長靴の中にほくどを入れたんだって」


「ほくど?」


「藁から取れる柔らかやつって、お婆ちゃんが言ってたな」


「へー、温かいんだ」


「今度柿崎に分けてもらおうか」


「ちょっと、こっち向かないでよ」


「あ、ごめん」


はあ、何でこの町の温泉は、混浴しか無いんだろう?



【居酒屋】


まだ体がポカポカだけど、やっぱり熱燗呑もう。


エイの煮付けをつまみにする。


ビリ(煮こごり)が美味しいんだよな。


「今日も呑むわよ。美人長とか東洋美人とかって名前が良いわねー。でも何と言っても稲田姫が良いわよー」


璃子のお気に入りだな。


姫って言うのが良いらしい。


小さい頃の遊びで、璃子がお姫様で、僕は王子様をやらされたっけ。


ナイトの役も有ったな。


今日も呑み出したら止まらない。


酒癖の悪いお姫様だな。


朝風香が、僕と親しい魂だと言っていたけど…


過去世では璃子と一緒の時も有ったんだよな。


あの時見たのが、本当に過去世なら、だけど。


香は、ソウルメイトよりもっと親しい魂だと言っていたな。


そんなの有るのか?


じゃあ璃子と僕は何なんだろう?


過去世も酒癖の悪い女の子。


腐れ縁か?


あれは、お姫様じゃなかったな。


ファンタジーな感じだったけど、中世の町娘?


あの時代2人はどんな関係だったんだろう?


「嬉しそうに呑んでるけど、明日二日酔いしても知らないぞ」


「良いの、良いのー。また温泉入るから」


はあ、これでも男子には人気で「中町学園のマドンナ」なんて言われてるんだよな。


まあ、明るくて、可愛いところも有るけどね。


【下町の階段】


さすがに明日学校有るから、店に有る地酒全種類は呑まなかったけど…


大丈夫か?


千鳥足だぞ。


おっと!


「あっ」


「危ないぞ」


〈フラフラする璃子を抱き留める〉


「お前さ、僕が居なかったらどうするんだよ、こんなに呑んで」


「響とじゃなきゃ酔わないわよ。当たり前でしょう?響だから安心して酔えるの」


何だか良くわからない理屈だな。



【中町へ続く路地】


「響がそばに居ないなんて、考えられない。生まれた時からずっと一緒だったんだもの」


「まあ、そうだけど、この先もずっと一緒ってわけにはいかないだろ」


「もう!どうしてわからないのよ」


えっ?


また泣くのか?


この頃良く泣くよな。


さっきまで笑って呑んでたのに。


璃子は、泣き上戸じゃないはずだけどな。


「何よ、響なんか大嫌い!」


「こら待てよ、危ないから」


【中町の田んぼ】


「誰も通らないもん、襲われたりしないわよ」


「イノシシが出たらどうするんだよ」


「もう寒いから出てこないわよ」


「イノシシは冬眠しない、って聞いたぞ」


まだ雪降ってないし、出て来てもおかしくないよな。


【璃子の宿舎】


こんなに酔ったら危ないだろう。


酔った女性をどうにかしようとする男はいくらでも居るんだぞ。


そう言えば大学の頃、迎えに行ったりしてたよな。


一緒に呑んでた璃子目当ての男達が、がっかりしてたっけ。


「私、一本木先生と付き合おうかな」


えっ?


ま、まあ、彼は璃子の事が好きそうだけど…


「はあ、気まぐれで振り回すのはよせよ。一本木先生は、純情なんだから」


「そっち?」


全く、どっちの心配してるのよ。


本当に、他の誰かと付き合っちゃうから。


「もう寝ろ」


【響の宿舎】


明日は朝風呂付き合わないからな〜


「ミャー」


「シロおいで」


「ニャー%#☆」


寒いからシロを抱っこして寝よう。


ああ、雪になる前に、コッコちゃんを玄関の土間に入れてやらないとな。


【学校の廊下】


あ、ちょうど良かった。


「柿崎。ほくど貰いに行っても良いか?」


「ええじぇ。なら、いにがけ(帰りがけ)に寄って、持って行きないな」



【柿崎の家】


「お母ちゃん。先生が、ほくどが欲しいだっていな」


柿崎玄のお母さんの唄子さんが、藁を出して来てくれた。


「ほくど入れたらぬくいじぇ。今の若い子は使わんけどなあ」


藁の束を逆さにして、指で掻くと、細かい藁が取れた。


うわー、これがほくどか。


柔らかいな。


「私も私も」


璃子はすぐやりたがる。


「うわー、取れたー。踏んだら潰れちゃうわね。ブーツ履くまで取っとこう」


「なんぼでも有るけ、またいつでも取りに来ないな」


【柿崎の家の玄関】


ほくどと一緒に、コッコちゃんの寝藁も頂いて帰った。


【響の宿舎】


「コッコッコッコッ」


「待ってろよ、今寝床を作ってるからな」


シロと仲良くしている。


でも、出しっ放しというわけにはいかないから、土間に小さな小屋を作る事にしたんだ。


良し、寝藁を敷いたら出来上がりだぞ。


「コケーッ」


気に入ったみたいだな。


【ラーメン屋】


「あれ?鐘城先生一緒じゃないのか?」


「今、鶏小屋作ってる。一本木先生も1人?」


「そうだよ」


「じゃあ、一緒に食べよう。私ビールと蟹ラーメンお願いします」


「はいよ」


「高梨先生は、呑むのメインだな」


「美味しい物が有ると、お酒が進むのよ」


「いつもニコニコして、明るい酒だから良い。俺そういう人好きだ。あ…」


〈言っちゃった、と赤くなる竜太。ただニコニコしながら呑む璃子〉


「まーだ、呑むわよー」


【駅前のコンビニ】


「先生お弁当買ってる」


「え?2つ?」


【お弁当の棚】


「誰と食べるの?」


浅田未来だ。


朝風香も居る。


「2つとも僕が食べるんだよ」


「そう言えば大食いだったね」


「普通だと思ってたんだけどな」


「早くお嫁さん貰わなきゃね」


「はあ、来てくれる人が居ればね」


「香が居るじゃない。卒業するまで待てば?」


「未来ちゃん」


「その頃僕は、29のオッサンだよ」


「愛が有れば年の差なんて、ねえ香」


「もう、未来ちゃん」


でも…


お願い、卒業するまで待って。


他の人を好きになったりしないで。


「さあ、遅くならないうちに帰れ」


「はーい」



【コンビニのレジ】


やれやれ、何がお嫁さんだよ。


ああ、お腹空いた。


さあ、帰って食べよう。


【奥山町駅前】


〈ラーメン屋から出て歩く璃子と竜太。コンビニから響が出て来る〉


おっ!


「高梨先生送って行こうと思ったんだけど…」


「良いわよ。ちょうど良いところに響が来たから大丈夫」


「そ、そうか」


「ほら、一本木先生、電車無くなっちゃうよ」


「電車が無けりらにゃ、タクシーでいぬる(帰る)」


「まだ有るから、早く」


【駅の待合室】


なんだかわからないけど、一緒に来ちゃったぞ。


お邪魔だったかな?


「俺が送ろうと思ったのに」


「良いじゃない」


何か…気まずい雰囲気?


「あ、電車来た」


【駅のホーム】


〈一本木竜太を乗せた電車を見送る響と璃子〉


「デートの邪魔して悪かったな」


「本当よ」


「…」


「ウソウソ。ラーメン屋さんに行ったら一本木先生が居たの。あ、今ホッとした顔した。ウフフ」


「そうか?」


【奥山町駅前】


何だか白い物が舞って来たぞ。


「雪ー」


ああ、降り出した。


〈響は、コートを脱いで璃子にかける〉


「あ…ありがとう。でも、響寒くない?」


「お前、中学生の頃いつも、寒いから僕のコート貸せって脱がせただろ」


「そうだけど」


「ほら、こうしてたら寒くないだろ?」


ああ、響の胸温かい。



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