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なにものでもない毛糸のかたまりについて

作者: 灯花

深夜近くなると、ここのところずいぶん肌寒いので、去年から編み続けている何かしらを、私は押し入れから引っ張り出すことにした。


大きな毛糸のかたまり。


これが何かと訊かれても、私自身答えに困る。

目的もゴールもないままに、延々編み続けた大きな毛糸のかたまり。

春と夏を超えて、今年もフワフワした姿のまま、私の膝の上へと戻ってきた。


編み物をしているんです、と言う。


何を編んでいるの?と訊かれる。


何も、と答える。ただ編んでいるんです。と答える。


訝しそうな顔をされる。もしくは笑われる。


セミダブルのベッドの上一面を占領できてしまいそうな、その毛糸のかたまり。


毎晩私はそのかたまりを大きく大きく育ててゆく。

一目ずつ、丁寧に手早く編み込んでゆく。

ただぼんやりと、単純作業を延々とくりかえしてゆく。


一目一目に、私の怠惰と無感情と無感覚が詰まっていく。

一目一目に、私の無益な時間と無駄な労力が詰まっていく。


その果てに、なにものでもない、大きな毛糸のかたまりが出来上がる。


そしてそれは、なにものでもないが、とりあえず私や猫たちを暖める。


とても素敵なことだと思う。

とても素敵なことだと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 重要なことだから二回言ったのですね。 とても素敵なことだと思います。
2014/10/25 17:28 退会済み
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