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夕食の後片づけを終え、神来佐奈は風呂場でシャワーを浴びていた。
自分が入る前に冬弥が入ることは、いつもの習慣により分かっていた。
その後に入るように時間を合わせれば、思う存分、好きなだけ兄の残り湯を堪能できる、といった予測を立てていた。
◆
上から滴り落ちてくる熱いシャワーを感じ、私はツルツルの肌ざわりを確かめ、そのまま胸元に手を寄せる。
もはやEを超えFにまで届きそうな重量を持った双乳。
柔肌の周りを取り付き、あたたかい雫に合わせて変幻自在に揺れていく。
誰にも触らせていない、お兄様だけの爆乳。
抜ける? 抜けない? お兄様はどうなのだろうか。
お兄様に優しさが身に染みたあの日からイカレ狂い、恋のボルテージはあがる一方で、留まる所を知らない。
神来冬弥――あなたに。
しかし私は妹であり、恋人ではない。
取り巻く現実世界を飛び越え、次のステップにワープすることなど出来ないのだ。
シャワーを止め、重く垂れ下がった長い黒髪を、撫でるように軽く拭く。
お兄様が入ったお風呂の次に私も入る。
素晴らしいローテーションだ。
できれば一緒に入りたいが、それは昔に止められていた。
いけない、早く入らないとお兄様の甘い匂いが消えてしまう。
私は急いでバスタブをまたぎ、ピカピカの熱い湯船に漬かった。
そのまま両足を抱いてうずくまる。
どんなにセクシーな体を持って誘惑しようが、テクニックをもって、お兄様に駆け引きをしようが、私をお兄様が抱くことはない。
晴れの日も雨の日も、今日も明日も。
“兄”と“妹”未来永劫変わることのない、負の絆なのだ。
ならばこの恋はきっと叶うことはない。
法律に違反しているとかそんな次元の話ではない。
私がお兄様の未来を奪うことになるかもしれないのだ。
ぐるぐると今日のお兄様の姿を思い浮かべてみる。
あれは白川祀――? と言っただろうか。
お兄様以外の人間を覚えるのが苦手な私にとっても、名前ぐらいは聞いたことがある。
学園のアイドルとして、常にトップに立っていたはずだ。幾つもの称号を持つ私だが、こればかりは一位はとれなかった。勿論告白は毎日のようにされるが、あの女のようにファンクラブまで出来るほどではない。まあ、お兄様とは別の人間など、それこそ塵芥に等しいので気にしないのだが……。
どういった関係だろうか。こればかりは予測できない。
お兄様はただの友人と言っていたが……あの目は私と同じ。
愛の嫉妬に狂っている目だ。
放っておくと危ないことになるかもしれない。
もしお兄様のお心が奪われるようなことがあったらと思うと……。
お兄様に言い寄る糞女……止めて、私のお兄様にそんなことしないで。
私のお兄様にあんな視線を。
ピクリと震える体を抱きこみ、ありったけの力で両腕を握りしめる。
――私からお兄様を奪うことは許さない――
切り刻んでバラバラにしてやる。
きめ細やかな肌に、ヒリヒリと滲む腕は赤くなっていたが、痛みは感じなかった。