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◆生徒会長、在咲雫の目線。
――またみんな騒いでいるわね。
しかもあの三人だ。特に女の子。
在咲雫は1時限前の授業をまとめた復習の手を止め、チラリと後ろを見た。
黒縁眼鏡の端を指で押し上げ、視界に入る人物を見やる。
どうやら妹の噂話で盛り上がってるらしい。不毛なことをする。
生徒会長として常に恥ずかしくない成績をおさめ、学校全体でもトップに入るために、休憩中でも手を休めることはできない。マジメすぎるのも考えものだわ。
しかし同級生達の会話も気になるし、バレないようにそっと視線を送る。
まずおかしなことをのたまっている須藤真が目に入る。
Eカップがどうとか言っている。とにかくあいつは謎だ。
突然変なことを騒ぎ出したり、言ってることがこの私にもお手上げだもの。
あいつは無視して隣に視線を移す。
詳細は分からないが、白川祀が神来冬弥に何か言い寄ってるようだ。
白川はくやしいけど学園でもトップクラスに入るほど可愛い。
神来君もそう悪くは思っていないのだろう。
顔を真っ赤にする神来君を見て、胸がちくんとする。
――ああもう。止めなさいよ。
嫌がってるじゃない、神来君。
あなたたちとはタイプが違うのよ。
クラスで目立ったほうではないが、どこかミステリアスな瞳をしている。
まるで謎をといてくれよとでも言いたげな、その瞳の奥に惹かれてくの。
喋ったことはあまりないが、とある事情で一度だけデートをしたことがある。
勿論妹さんに内緒で。
あの時からだ……私だけを見つめてほしいと考えるようになったのは。
――ああ嫌――
私だけを見つめてほしいのに、どうして他の女の子を見ているの。
へんだよ。 私以外の名を呼ぶなんて。殺しちゃうよ?
苛々が頂点にまで達し、席を立ちかける。
「――私、来月留学するの」
まるで別れ話を告げるような白川の囁き声が耳を掠める。
突然の告白に、さっきまでの怒りの嵐が止まる。
「もう――会えないかもしれないから」
忘れないでね、と笑顔で話す白川に、ぽかんとそれを見つめる神来君。
ドス黒い風が、私の胸に嵐を巻き起こすかのように囁く。
実るかもしれない――大切に育てていたこの想いが。
叶わないと諦めていた心が、一斉に騒ぎ出した。
もうすぐ。もう少しよ。
もう、誰も私を止めるものはいない。だから――
あの時の約束を果たすのは今しかないのよ。
怪しく笑う委員長登場! あと一人でメインキャラは全て登場になります。かなりぶっとんだキャラを予定しています! ま、まともなキャラがいない……。