悪夢は延々と
夢を見た。
怖い夢だ。
飛び起きた。
「おかあさん……」
息を呑む。
そこは、現実。
残酷な、現実。
「いや……いや……」
目から涙が溢れる。
骸と化した母親。
骸と化した父親。
骸と化した兄弟。
「あぁ?まだいたのかよ」
男が振り返る。
「おかあさん……おとうさん……おにいちゃん……」
赤く染まった凶器。
それが襲いかかってくる。
「ずいぶん子沢山の家だな」
体にくる衝撃。
意識が、闇に飲まれる。
ハッとする。
飛び起きる。
「おかあさん……」
今のは、夢だったのか。
目をこする。
息を呑む。
そこは、現実。
残酷な……。
「この子は、一体いつになったら目覚めるんだろうか……」
溜め息をつく。
「ずいぶん幸運な子ですよね」
ナースが言った。
「え?」
「だってほら、この子あの一家虐殺の生き残りでしょう?」
「……むしろ、一緒に逝った方が……」
「え?」
ナースはキョトンとする。
「いや、なんでもないよ。いつも通り、この子の健康チェックだ」
「はい」
数分後。
「……異常無し、と」
「こんなに長い間寝ていて、つまらなくないのでしょうか?」
「さあな」
「夢を見ていたりするんですか?」
「あぁ。そうかもなぁ。夢を、見てるのかもしれない」
「怖い夢なのかもしれませんね」
「え?」
「だってほら、眉間にシワ寄ってますよ」
「本当だ……」
「早く起きな、寝てても楽しくないよ~」
「次の患者を、診てくる」
「分かりました」
ナースが振り向く。
「私はもう少し、この子の様子を見ていますね」
「分かった」