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23話 魔石強化人間

「スクリーム!」


 スクルは反射的に魔法を放つがスクリームはそれを剣で振り払い、霧散させる。

 圧巻な攻撃にも関わらずそれを防御するスクリームも強い。


「慌てるなよ、老いぼれ」


 スクリームは剣を元の位置に戻して、フライング気味のスクルを睨み笑う。

 ハルトも慌てて刀に手を伸ばそうとするが、


「ぐあうっ!」


 三人は突然立ち上がりその内の一人がハルトを殴る。

 いきなりだったせいでハルトは反応することが出来ない。

 吹き飛び、壁にぶつかる。

 なんだ、今のは。

 ハルトは痛む背を我慢しながら先程自分が立っていた近くでうごめく存在がいる。

 体の拘束を振り払い、叫ぶ存在はスクリームがつれてきた三人。

 いきなり膨れ上がった体を視認したスクルが


「なにをしたのかな、スクリーム?」


 スクリームを殺さんばかりに見すえる。


「少し考えれば分かることだろう? 一度貴様らは戦っているのだから」


 スクリームの言葉にゼラルははっとした顔になる。

 大きくなった異常なモンスター。


「まさか、魔石を食わせたのですか?」


 ハルトもそれでゴブリンが口から魔石を吐いたのを思い出す。

 そして、すべての原因が魔石にあると行き着く。

 魔石には不可思議な点が多くすべてが解明されていない。

 もしも、魔石自体に対象を強化する力があるとしたら。

 それは中々に有力な仮説だ。

 魔石がモンスターに力を与えているだろうことは容易に予想ができる。


「くっくっく正解だ。さて、どうする? ここにいる男達はすでに体内に魔石がある。力は跳ね上がっているはずだ。まあ、適合はしていなようだからすぐに死ぬだろうがな」


 スクリームは言いながらも体をずらす。

 入り口の前に立ち、三人はスクリームを庇うように動く。


「さすがにこいつらで貴様らを殺せるとは思えないので逃げさせてもらうぞ」


 その一言で戦いが始まる。同時に三人が突撃してくる。

 ゼラルとスクルはそれぞれうまく回避する。

 速い。一度戦ったことがあるハルトだが驚くほどにあがったスピードは目を見張るほどだ。

 ハルトは戦っている二人に加勢するために立ち上がり武器を構える。

 ハルトが動いたのを理解した一体がそちらに向かおうとしたので、ゼラルは詠唱の不要な魔法を放ち牽制する。

 

「ハルトくん。スクリームを追ってくれ!」


 スクルの叫びを受けて、ハルトは逡巡するが、仕方ないとばかりに飛び出す。

 今この場で優先するのはスクリームの拘束だ。

 

「それでは、始めますか」


 ハルトの背が見えなくなったのを確認して、ゼラルは腰から剣を抜き、構える。

 欠片も隙がないゼラルの様子に三人は一瞬気圧される。 


「スクルさん、魔法をお願いします」


 ゼラルはそう言って、三人の注意を引くように魔法を放つ。

 魔法は光の矢――シャインアローで詠唱はない。

 飛んだ光は三本。一人一本が刺さり、血を撒き散らす。

 だが、男達にひるんでいる様子はない。

 もうすでに人間としての機能はない。魔石に操られているようなものだ。

 三人は体が朽ちない限り止ることはないのだ。

 理性が失われている三人は体から血を流しながらゼラルに掴みかかる。

 右側から飛び掛ってきたのを剣で逸らして逆にいる男にぶつける。

 正面にいる男の顔面にシャインアローを撃ち視界を封じた後に剣の腹で叩く。

 敵の攻撃はどれも突進のみで、読みやすい。

 ゼラルは三対一だというのに全くダメージを喰らわない。

 

「ドラゴンブレスッ!」


 スクルが唱えた魔法は彼が持つ中でも一番の強さを誇る代物だ。

 まるでドラゴンが吐くような風の一撃により、デボッシュ以外の二人を巻き込み命を奪う。

 酒場二階は陥落しそうなほどに傷つき、危険な状態に。

 一応は建物が壊れないように制御したが被害は大きい。

 デボッシュは本能からか大きく飛び退きぎりぎりで回避していた。


「面倒ですね」


 ゼラルは逃げた先に剣を投げる。

 武器を捨てる本来ならアホな行動だが、ゼラルは速やかに詠唱を始める。

 デボッシュは剣に気をとられて打ち落とすことに一瞬の隙をとられる。

 一瞬で詠唱を済ませたゼラルは手を振る。

 ゼラルの体から生まれた魔法はサンダーフォール。

 相手を感電させながら押しつぶす身動きを完全に封じる一撃にデボッシュの体がこげる。

 建物が悲鳴をあげる。

 このままでは、本当に壊れてしまう。

 壊れること自体に問題はないが、中にいる二人は潰されてしまう。

 サンダーフォールに飲まれたがまだ息のあるデボッシュ。

 だが、傷は大きい。焦げた肉の臭いが散漫している。

 ゼラルはダメージにより動きが緩慢なデボッシュへ駆けながら、弾かれた剣を拾い刺突。

 吸い込まれるようにデボッシュの心臓を貫く。

 それが最後の一撃だった。

 デボッシュはぐぼっと血とともに魔石を吐き出す。

 ゼラルとスクルはそれを確認してすぐに建物から外へと逃げる。 

 いつ壊れてもおかしくない建物はふらふらとまだ立っている。

 二人はすぐにスクリームを追おう周囲を見回す。



 かんかんかんかん!


 

 街中に響き渡る鐘の音。

 スクルとゼラルは鐘の音を聞き首を捻る。


「緊急の鐘?」


 スクルは空に飛び上がる。

 ゼラルは顎に手を送る。


「大変だ……!」


 スクルは空から外の状況を確認して声をあげる。


「どうしたんですか?」

 

「モンスターが街を攻めている!」


 スクルの視線の先には、大量の大きなモンスターがいた。


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