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3 姫さらいの竜

 雨蛙とあや子は、地図を頼りに黒蜘蛛城まで旅をしていました。旅の途中は、困難なもので、幾度となく、怪物に襲われるのでした。その度に二人で協力して追い払ってましたが、ある時、ついにかなりの強敵が二人を襲いました。

 それは子供の竜でした。

「なんか、妙なのが近づいて来たぞ」

 と雨蛙がいうと、

「そうね、確かに見たことないのが来たわね」

 とあや子が答えた。

 雨蛙とあや子が子供の竜を見ていると、あっという間に空を飛んで近づいてきた子供の竜は、そのまま、あや子を爪でつかんで、さらってしまったのでした。

「ちょっと、助けて、雨蛙~」

 とあや子が叫ぶのもむなしく、あや子は竜にさらわれてしまったのでした。

 竜は怪物の集まる塔にあや子を降ろして、いいました。

「おれ様は、姫さらいの竜。選ばれし勇者が助けに来るまで姫を逃がさないのだ」

 すると、あや子は胸をときめかせて、答えました。

「まあ、わたしを選ばれし勇者様が助けに来てくれるの」

 竜は、喜ばれるのは心外なので、横を向いて答えました。

「まあ、そうだ。これから、おまえを選ばれし勇者が助けに来る。その勇者が、おれ様に勝てない限り、おまえは自由になることはできないのだ。一生、この塔に閉じ込められて生きるのだ。どうだ、怖いだろう。選ばれし勇者の頑張りに期待することだな」

 あや子は胸がしめつけられるように切なく選ばれし勇者様を待ち焦がれました。

 がんばれ、勇者様。そう心の底から念じました。

「で、わたしの選ばれし勇者様って、誰なの。どんな人」

 聞かれたので、竜は答えました。

「ん? 選ばれし勇者か。それはあいつだ」

「誰?」

「おれ様だあ」

 現れたのは巨大な雨蛙でした。

 ずぺぺ、と転ぶあや子。

「雨蛙かよ。あの雨蛙はわたしのこと、大嫌いよ」

「だが、あの雨蛙が、おまえの選ばれし勇者なのだな」

 見ると、雨蛙は甲冑を身に付けているようでした。槍を武器に、怪物たちをやっつけて、あや子のいる塔にまでたどりつきました。雨蛙は体中、傷だらけです。雨蛙は、あや子を助けたくて、必死のようです。

「雨蛙、わたしのこと嫌いなはずなのになぜ」

 首をかしげるあや子をそっちのけに、戦いは最後の決戦となりました。いよいよ、雨蛙が竜のいる部屋にまで登ってきたのです。

「あや子は返してもらうぞ」

「ふん、おれ様に勝ってからいいな」

 子供の竜は雨蛙に炎を吐きました。熱さに負ける雨蛙ではありません。神経の麻痺した手で、ぐっと槍を前に突き出しました。雨蛙の槍は竜の腹を突き刺していました。

「やった。雨蛙の勝ちだ」

 あや子は驚きました。

「ふん、今日はこのくらいにしといてやらあ」

 子供の竜は、怪物たちを引き連れて、遠くに逃げていきました。

「やったね、雨蛙」

「まあな」

「痛かったでしょう。わたしのこと嫌いなはずなのに、なぜ助けに来てくれたの」

「最近は、それほど、おまえのこと嫌いじゃないんだよ」

 雨蛙は照れくさそうにいいました。

「まあ、雨蛙。よしよし」

「おまえこそ、大丈夫だったか、あや子」

「ええ、大丈夫よ。ちょっと背中を爪でつかまれただけ」

 雨蛙を抱きしめるあや子に、雨蛙はいいました。

「おれ様は人助けする性格なの。困ってる人は見過ごせないの」

「ふうん、偉いんだあ、雨蛙って」

 あや子は雨蛙を見直しました。

 幸せな夕焼けが雨蛙と小娘を赤色に染めました。


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