2 巨人サトリン
旅をする二人の前に、一つ目の巨人が現れました。
「おいおい、そこを行く変な雨蛙と小娘。おれ様はすごく怖いんだぞ。これからとても怖い思いをすることになるから、覚悟しておけよ」
「なんだ。おかしな巨人だなあ。脅すつもりなら、迷惑だ。早くどっかへ行ってくれ」
雨蛙が答えました。
「まあ、そういうなよ。実は、おれ様には、心を読む能力があるんだ。おまえたちの心の中を見抜いてしまうぞ。どうだ、恐ろしいだろ」
それで、ちょっと興味を持ったあや子が聞いてみた。
「それじゃあ、この雨蛙の心の中はどうなっているの? わたし、旅をしていて、この雨蛙が何を考えているんだかさっぱりわからないんだけど」
売り言葉に買い言葉。雨蛙も同じようなことをいい出しました。
「それじゃあ、おれも聞くけど、この小娘の心の中はどうなっているんだ? おれも、旅をしていて、この小娘が何を考えているんだかさっぱりわからないんだけど」
一人と一匹に頼りにされた巨人サトリンはとても喜んで、質問に答えようとしました。どれどれ、一緒に旅をしているところからもわかるように、なかなか仲の良さそうな仲間ではないですか。巨人サトリンは、そういう仲の良い仲間の友情を壊すのが何よりも好きなのでした。
巨人サトリンが心眼で雨蛙の心を読むと、このうっとおしい小娘が困ることになればいいのにと思っていました。
「ふむ、この雨蛙は、この小娘のことを嫌っているようだな。高慢ちきで、威張りんぼの厄介者だと思っている」
それを聞いて、あや子は怒りました。
「なんですって。ふざけないでよ。この雨蛙、本気でわたしのことそんなふうに思っているの?」
「おお、この巨人の読心術は本当のようだな。おれはまさしくそんな感じに思っていたぞ」
「まあ、憎たらしい。この雨蛙、本当にどうしてやろうかな」
あや子はかんかんに怒ってます。
「だが、小娘も雨蛙を怒ることはできん。なぜなら、この小娘は、この雨蛙のことを醜く気持ち悪い下等動物だと思っているからだ。この小娘は、雨蛙のことが本気で大嫌いなのだよ」
それを聞いて、雨蛙は激怒しました。
「なんだと。このやろう。おれがいろいろと親切に気を配ってやっているのに、おれのことを嫌ってやがるのか。なんて恩知らずなやつだ」
「まあ、それは確かに本当のことね。この巨人の心を読む能力は本当だわ」
巨人サトリンの前で、雨蛙とあや子は喧嘩を始めました。
「ふざけるな。おまえが心の底からおれを嫌ってたなんて」
「そっちこそふざけないでよ。本気でわたしのことを心の底から嫌ってたなんて」
等身大の雨蛙とあや子は、相手の体を押しつぶそうとしたり、押し倒そうとしたり、さんざんに喧嘩をし合いました。
あまりの喧嘩の激しさに、巨人サトリンはちょっと気が引けてきました。それで、雨蛙と小娘の心を読んで、正直に答えました。
「おいおい、おまえたち、こんな簡単に喧嘩する旅仲間も珍しいぞ。雨蛙も小娘も、お互いを嫌ってはいるが、心根は善良だよ。そこまで喧嘩するほど嫌ってはいないよ」
それをきいて、ふう、ふう、と息を立てて、雨蛙と小娘は喧嘩を中断しました。
「おれは呪いを解くのに必要だから、この小娘と旅をしているんであって、旅が終わればすぐに別れてしまいたいよ」
「何よ。わたしも呪いを解くのに必要だから、このドデカい雨蛙と旅をしているけど、旅が終わればすぐに別れてしまいたいわ」
そして、雨蛙はのろけるようにいうのでした。
「ああ、旅がこんな小娘とでなく、いつか出会ったあの素敵な人と旅ができればよかったなあ」
小娘も負けじといいました。
「ああ、旅がこんな雨蛙とでなく、いつか出会ったあの素敵な人と旅ができればよかったのになあ」
はあ、と雨蛙とあや子はため息をつきました。
「そういうことだから、おまえたちはこれから心を入れ替えて、相手を思いやり、仲良くやりなさい」
巨人サトリンはそういって、自分でひっくり返した対人関係を収めるのが好きなのでした。
「いわれなくてもそうするよ」
「いわれなくてもそうするわ」
そして、雨蛙と小娘は巨人サトリンと別れたのでした。




