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1 出会いと旅立ち

 天気快々。吉日満天。

 今日こそ、いい出会いがありますようにと、黒スーツで格好つけた陣之介が歩いていた。そこに、今日はいいことあるんじゃないかなあと特別におめかししたあや子が通りがかった。

 二人ともそれなりの美男美女である。ただ、これまで恋愛の経験がなかっただけなのだ。

 二人は、いい相手はいないかと気合を入れて歩いていと、目の前に現れた素敵な相手に目が釘付けになってしまい、呼吸するのも忘れて、てくてくと歩きつづけたものだから、お互いにぶつかってしまった。

「あ、ごめん」

「いえ、いいですよ」

 これが二人の出会いだった。今までの二人だったら、何事もなく通りすぎる性格なのだが、この時だけはちょっとちがった。二人はのぼせていたのだ。

「百年後になったら、またあなたに会いに来ますよ」

 陣之介はそんなことをいった。

「まあ、すると、生まれ変わって、わたしたち一緒になるのかな」

「うん、そうだよ。きっと、そうしよう」

 そして、二人は別れた。お互いに来世で出会うことを願って。二人の恋愛はそれで、精一杯だった。


 陣之介とあや子の別れを見かねた妖怪ラブエンドが、二人に呪いをかけた。

「陣之介よ、おまえはこれから巨大な雨蛙になって生きるのだ。女の子と一緒に旅をして、黒蜘蛛城にいる妖怪ラブエンドを倒すまでは、呪いが解けることはない」

 また、あや子も、同じように妖怪ラブエンドに襲われていた。

「あや子よ。お主はあまりにも奥手な罰として、これから五歳児に戻って生きなければならない。黒蜘蛛城の妖怪ラブエンドを倒すまでは、呪いが解けることはない。五歳のままで老いて死んでしまう」

 そして、妖怪ラブエンドの導きにより、雨蛙と五歳児あや子は出会ったのだった。

「まあ、何、この小汚い雨蛙は。嫌ね、こんな雨蛙と一緒に旅をするなんて」

「それはこちらのことばだ。こんな小汚い小娘と旅をするなんて、厄介な面倒ごとが増えたものだ」

「ふん、なんとでもおっしゃい。わたしの本当の彼は、すらっと背が高くて、それは素敵な彼なんだから。こんな雨蛙とではなく、彼と旅ができればよかったのに」

「ふん、それもこちらのことばだ。おれの本当に好きな人は、すらっと背が高くて、さらっと髪が長くて、もっと魅力的ないい女なのだ。おれだって、彼女と旅をしたい」

 このように、雨蛙と五歳児あや子は、お互いが相手にしているのが誰なのかもわからないで、相手の悪口を言い合ったのだった。

 悪口を言い合う間に、雨蛙とあや子は思った。悪口の言い方が、この人は優しい、と。それで、夜になると、雨蛙もあや子も、自分の人生が惨めで泣き出してしまったのだった。

「おいおいおい、うおうおうおうお、おれはなんて恥ずかしいヒトなんだ。二十歳にもなって、恋人の一人もできたことがないなんて」

「わんわんわん、えんえんえんえん、わたしはなんて恥ずかしいヒトなんだ。二十歳にもなって、恋人の一人もできたことがないなんて」

 それから、二人は、それぞれのことばの不自然さを指摘して怒鳴りあった。

「なによ、雨蛙が何歳になろうとしったことじゃないわ。一生、泣いてなさいよ。あなたなら、きっといい雌の雨蛙が見つかるでしょうよ」

「なんだ、この小娘。偉そうにしやがって。おまえはまだ五歳じゃないか。五歳なら、何も嘆くことなく、平然としていればいいだろう。五歳で、彼氏がいないからって、誰が辱めたりするものか」

「まあ、何もわかってないのね。五歳でも、好きな人の一人もできない人はみんなに影口を叩かれて、笑われるのよ。しょせん、雨蛙ね。人の人生なんて、これっぽっちも理解できないんだ」

「いや、それは、バカにして笑っているそいつらの方が恥ずかしいんじゃないかなあと思うんだが」

「ふん。バカは嫌いよ。バカの意味ってわかるかなあ、雨蛙に」

「バカの意味か。知ってるぞ。皇帝が馬と鹿をまちがえるほどの大事件だ。馬は働かせるもの、鹿は聖なる珍獣だ。まちがえたら、大事件だ」

「ふん。小賢しい雨蛙ね」

 二人の旅は始まりました。二人は、妖怪ラブエンドにもらった黒蜘蛛城の位置を示した地図をもとにそこまで歩いていくつもりでした。

 当然、何日もかかる旅でした。夜になると、雨蛙とあや子は寄りかかって眠りました。雨蛙は五歳児とはいえ、女の子と肌を合わせて眠っているので、なんだかいい気分でした。決してロリコンではなかった雨蛙でしたが、あや子が男ではなく、女でよかったと思いました。

 あや子は雨蛙の肌にもたれかかるのにだんだん慣れていきました。あや子は最初、一晩目の夜に聞きました。

「ねえ、雨蛙、あなたって雄なの?」

 あや子にとっては、重要な質問でした。

「ああ、おれはもちろん雄だが」

「よかった。わたし、レズじゃないもの。女の子と眠るより、雄の雨蛙と眠る方が幸せだわ」

「おれは五歳児と眠るより、愛しの彼女と眠りたいのだが」

「なによ。わたしだって、本当は愛しの彼氏と眠りたいのよ。文句いわないでよ」

「文句はいわないさ。おれは雨蛙だから」

 そして、二人は三十日間、野宿をして旅をしました。時々、野犬が襲ってきたり、乱暴な大人が襲ってきたりしましたが、雨蛙とあや子が協力して敵をやっつけました。

 野犬は、雨蛙の巨大な体でのしかかられると、つぶれはしませんでしたが、怖くなって逃げていきました。

 雨蛙を退治に来た大人は、あや子の、

「この雨蛙は何も悪いことはしてないじゃない。悪いことはしていないじゃない」

 ということばに反論できずに、帰っていきました。

 その大人は、等身大の雨蛙がいるなんて、危険な害獣だと思ったのでした。でも、害獣でないなら、戦う理由はなかったのです。


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