Episode.1 軍事と魔法の国
ーーーガキンッと言う激しい金属音が辺りに木霊する。
FT5015 フォルトゥーナ帝国首都ブリューメル ペルーシカ闘技場
「いい加減背中の剣を使ったらどうだ。本気か?そのナマクラで俺に勝てるとでも?」
「いいやこれで十分だ!」
「そうか…負けても言い訳するなよ」
時は遡りこれはまだ世界中に争いがまみれていた俺らが学生時代の話。
ここは、フォルトゥーナ帝国直属の前線特殊作戦部隊ミーレスを育成する訓練学校。
その名を士官養成学院カスケードという。
西洋の城を思わせる石造りの巨大な学園の大学部にて、2人の壮健な男達の物語は紡がれる。
「攻めがぬるいな!」
「挑発のつもりか!そんな暇があるならもっと本気でつぶしに来い!」
「焦るな、そんな早く終わらせたら観客が暇をするだろ?」
学園トップクラスの実力者である2人の剣舞を見るため、初等部を初めとした学校中の生徒はもちろんのこと、一般の人間も学園に併設された円形のコロシアム ペルーシカ闘技場 の観客席を埋めつくしていた。
2人は、周りの歓声などお構い無しに、その人並み外れた剣術を披露し合っていた。その様子に歓声は更に熱を帯びた。
「すごい、剣筋が全く見えない…なんなんだあの二人」?!
「なんだ?お前そんなことも知らないで来たんか?」
驚嘆の声を上げる観客の青年の前に1人の男が現れた。金髪の髪を逆立て人懐っこそうな笑みを浮かべ。
「す、すいません最近普通科に編入してきてこのイベントに参加するのが初めてなもので…」
「しゃーねぇなこのフェルム様が奴らを丁寧に紹介してやっから刮目して聞けぃ!」
「あ、はい」
少し困りながらも観客の青年は金髪のフェルムの言葉を了承し視線を闘技場からフェルムに向ける。
「あの2人はオレの次くらいにすごい未来の大英雄志望の特待科のトップたち、レシストとウルトルだ!」
「な、なるほど…どうりでさっきの方々とはレベル違うわけですね…」
闘技場の二人に対して自分の方が上と言い切る目の前の男フェルムを懐疑的な目で観客の青年は見る。
「ま、俺に比べりゃまだまだよ。なぁ、あんた公的戦時許可証って単独で戦闘任務をする上で必要な資格があるのは知ってるよな?」
「たしか…取得まで5年、上手くいっても20歳までかかるって言う…それに取得率は志望した1%未満とかいうすごい難関の資格ですよね」
公的戦時許可証 それは単身の任務や緊急時等で戦闘が起きた場合、その戦闘の理由が国が責任を持ち正当化される資格であり、この資格保有者の情報は厳格に管理され、心·技·体が揃った高潔な人物にしか与えられない取得難易度が非常に高い国家資格である。
「おうよ!その戦時許可証を奴らは中等部の時にたった1年で取った。つまりだ!15歳の頃には心·技·体が既に揃ってた化け物だ!それくらい将来を重要視されてるわけだ」
「すごい…」
(ちなみにおれ様が許可証を取るのに2年かかったってのは内緒なんだが…)と内心で思う青年は闘技場の2人に再び視線を移しながら編入生へ言葉を続ける。
「ま、とにかく そんくれぇやべぇ奴らなわけよ編入生君」
「は、はぁ」
フェルムと名乗る青年が、2人のことを観覧客の男子生徒に説明している間も、中央の武舞台では相も変わらず2人の戦いは続いていた。
10分程凄まじい演武を続けつつも、疲れを感じさせない2人の剣筋は、さらに鋭さを増しておりそれに伴い歓声も更に白熱した。
「キャーッ!ウルトル様頑張って〜!」
銀髪の青年が眉をひそめて対面の青年に呟く。
「…やかましいな。そう思わないか?レシスト」
「…集中しやがれっ!」
自分と戦闘中にも周囲へ気が向いているウルトルの発言に余裕を感じたレシストと呼ばれる青年は額に青筋をたてて次の瞬間叫びながらウルトルへと飛びかかった。
しかしウルトルはそれすらも掌の上だった。
「お前がな!」
「ぐぁっ」
幼馴染だからこそレシストの性格や行動を理解した上で分析し、攻撃を誘導していた。
素早く襲い来る刃を己の剣の刃で受け流し渾身の後ろ回し蹴りを放った。
蹴り飛ばされ地面に擦りながらも すぐさま立ち上がり剣を構え直したレシストへウルトルは口を開く。
「相変わらず実直な戦いをするなレシスト」
「お前の方こそ、相変わらず予測のつかない攻め方に毎回嫌な思いをさせられるぜウルトル」
嫌味を述べるウルトルの言葉を鵜呑みに相手を褒めるレシスト。
そんなレシストに思わずため息が零れる。
「はぁ…今のは誉め言葉じゃないんだけどな……」
「なに?!」
皮肉たっぷりに手のひらで転がされるレシストとウルトルのコントの様なやり取りに観客席から笑いが零れる。そして再び白熱の剣戟の応報を繰り返す2人の戦いを生徒達が歓声を上げ観戦してる中、先程の金色の髪をした青年フェルムは、同じクラスの生徒が隣にいる中二人に野次をとばしていた。
「レシストォォオ!そんなすかした2枚目に負けんなよ!」
「やれやれ、ほんとウルトル君と今回当たらなくて良かったねぇフェルム」
「い、いやぁおれはアイツと戦ってみたかったなぁ…って思うけどなぁ」
その問いに目をそらし口笛を吹きながらもそれでも調子に乗り強がるフェルムに同じクラスメイトのファルは深いため息と共に再び闘技場に視線を戻す。
だがフェルムの先程の言葉を真に受けた編入生は思わず息を飲みながらフェルムを称える。
「さ、さすがです…ね フェルムさんは…」
「おう!…おらぁ!ウル公に勝てよーレシスト―!お前が勝つことに賭けたのがバレたから、お前が負けたら殺されんのはおれなんだからなぁ?!気張れよレッつぁん!」
編入生は(1番強いんじゃないんじゃなかったっけこの人…)と内心思い苦笑いを浮かべてしまう。
「おい!周りのおめーもレシストを応援しろ!この未来の大英雄フェルム・凩こがらしからの命令だ!」
「フェルム君はなにを張り切ってんのかしら?」
はしゃぐフェルム達の元へ1人の女性がやってくる。
そこに現れたのは特待科1年の学級委員 シドニア・オルフェウスだった。
「ああ、委員長〜フェルムがねぇウルトルが負けることに賭けてたのが本人にバレたらしいよぉ」
「はぁ…1度学級委員長として彼を本気で怒った方がいいかしらね…」
「でも一応あの2人に並んでエースの1人だよぉ?」
「それとこれとは関係ないと思うけど…」
このフェルム、こんなにテキトーでお調子者だが実力は本物。
現在闘技場の決勝戦で上級生達すら圧巻の実力で倒し勝ち抜き戦う2人と唯一対等に闘えるも1人でもあった。
しかしそれと同時に 普段の素行の悪さに頭を悩ませる問題児でもあるためシドニアは大きなため息をつく。
「おい!お前達なにボサっとしてんだ ほら編入生君もさっきの説明の礼と思って黒髪のムッツリマッチョの方を応援しろ!」
「え?!は、はい!」
「はぁ〜い」
「いい加減にしなさいよフェルム!まったくもう…」
無限に続くかと思われた剣撃もその終わりは呆気ないものだった。
強烈な金属音の後、カラン…という乾いた音が地面に鳴り響くと、レシストの持つ半身程の片手剣の刀身は失われて息切れと共に片膝をついていた。
「ぐっ!」
「武器も壊れた…そろそろ観念しろレシスト。大会なんて言う遊びでお前をもし殺してしまったら俺が困る」
「…噴ッ!」
距離を詰めてきていたウルトルに レシストは片膝をついていた今の状態を利用しウルトルの顎に向けアッパーを繰り出した。
油断していたウルトルはまともに喰らい、その強烈な一撃で左手に持っていた細剣を手放してしまう。
すぐさま体勢を整え格闘技の構えをとるウルトルにレシストは口元をニッとさせ言い放つ。
「これで五分だ!」
「フフッ ふははははっ!…なにが五分だ?お前が俺に勝ったことあったか?」
「今日こそ勝つからだ!おらぁ!!」
剣を失っても尚も燃え尽きない闘志に歓声は更に増し、闘技場内の観客の熱をさらに上げた。
その後も2人の戦いは続き、痺れを切らした教官の強制終了の声がかかり判定としては引き分けで幕を下ろした。
そして翌日… 士官養成学院(正式名称:士官養成戦闘技能訓練専門学院カスケード)中庭にて
「おい」
昨日の戦いとは打って変わって午前7:15カスケード大学部の授業が始まる前、毎日 日課として学校の中庭の花壇に咲く花の手入れをしている男が居る。レシスト・アンジュエルである。
彼が土いじりをしていると背後から彼を呼ぶ声が中庭に響く。
二階を見上げるとそこには昨日死闘を繰り広げた銀髪の青年が本を片手に、冷ややかな顔でこちらを見下ろしていた。
「なんだよ。昨日のことなら最後膝着いてた俺の負けだって認めたろ」
「違う それじゃない。単に花の手入れなんぞしても、明日には足元すら見てないマヌケな後輩共に花壇散らかされるんだからそろそろ辞めたらどうだって話だ」
こいつの名前はウルトル・ケーニヒ・フィンスターニス・ラプソディア
おれの子供の頃からの幼馴染にしてフォルトゥーナ帝国の王妃の甥でありフォルトゥーナ帝国最大の公爵家の跡取りだが人の気持ちを顧みず自身の趣味を優先し、言葉に必ず皮肉を込めてくる所がたまにキズだがそれ以上に整った容姿から女性に人気のある美青年。
レシストは一瞬ウルトルから目をそらし、手入れをしていた花壇に目線をやる。
花壇は足跡や、ちぎられた花で荒れ放題だったが唯一1本無傷だったアイリスを指で触り、またウルトルに向き直った。
「こいつらは何度荒らされてもまた立ち上がる強さがある。そんな姿を見てると俺は勇気をもらえるんだよ。」
花の逞しさについて語り終えウルトルの方へ向き直ると、バルコニーのベンチにもたれかかりレシストの話を無視して読書にふけていた。
「…相変わらずお前は人の話を聞く姿勢がなってないな」
少し冗談交じりに嫌味を言うと、ウルトルもそれに返してきた。
「あぁすまん お前の花談義には実りを感じなかったからな…」
「てめぇこの野郎…しかもお前またその本を読んでるのか」
二階バルコニーには、日向ぼっこに最適な木製のベンチが設置してあり、ウルトルはそのベンチの上に腰を下ろし、カーラルイーナという叙事詩を手に片足を組み換え言ってきた。
「オレが何を読もうとお前には関係ない。それともなんだ?お前はオレの行動にいちいち口出ししないと孤独死する病でも患ってるのか?」
「よくもまぁ毎度毎度そんな嫌味が出てくるもんだな! 今日こそぶっ飛ばしてやろうか?」
「叶わない夢は見るもんじゃないぞレシスト」
「お前ってやつはほんと口も達者で腹が立つ…」
「戦いでも口でもお前に負けることはないだろうな」
「…てかそうじゃなくてその本に集中し過ぎて人の話を聞かない癖をやめろと 前も言ったろ?」
「読みながらでも話は聞けるし、実りのある話なら聞いてやっているだろ」
「…偉そうに言いやがって」
おれらは公職でもある士官候補生でもあり給料を国から頂いてる。こいつは国から払われる軍備給付金をすべてを貯金し、あの叙事詩の研究や訳の分からん実験に費やしてやがる。
まぁ、俺はあいつの昔から1つのことに集中すると、周りがどうでもよくなる性格には慣れてはいるから、最近はもう諦めてしまって、そこまで強くは言わなくなった。
孤高を好み自分の軸で生きる。他人なんてお構い無し。幼少期からの幼馴染の俺にすら昔からこの態度だ。
自分のしたい事のため、公爵家の跡取りながら、何者にも縛られることなく生きれるアイツを、何度羨ましいと思ったことか
俺はウルトルの言動にため息を吐くと背を向け、花壇のアイリスへの水やりを再開した。
ウルトルはそんな俺の言葉や態度などお構い無しにそのまま読書を続けた。
「なぁレシスト」
「今度はなんだ」
「カーラルイーナに登場する 星の救世主 を今のお前はどう思う?」
遠い昔この星を悪神の脅威から救った星の救世主。だがそれは絵本や創作物等ただの言い伝えだけであり本当に実在したという明確な証拠はない。
故にその英雄譚はおとぎ話として今では世界中で愛されている創作物の1つとされている。
「そうだな…神話の話とは言え、おれ達の 今 を作ってくれた偉大な人だな。まぁほんとに存在していたのならば墓参りでもしてみたいな」
「お前はそうだろうな」
「そういうお前こそどう思ってんだ」
俺が質問をし返すと、ウルトルは本に視線を向けたまま話始めた。
表情は読み取れなかったが、少し声に不愉快さを感じた。
「…救世主なんてものは使命と言う名の運命の鎖に繋がれ雁字搦めにされた、自己満足と強迫観念で他人の気持ちも顧みず、ただ誰かを救いたいという綺麗事に囚われただけの最もおぞましく恐ろしいものだ」
「?…何を言ってるのかよく分からんが…それでもお前はなりたいんじゃないのか?」
「おれはお前より強ければ別にそれでいい。お前に負けるのはムカつくからな」
「ムカつくって…そうかよ、もう十分強いくせにおれの何にムカつくんだ…」
「あとはお前とした約束のためにくらいにしかミーレスなんて目指さんさ」
おれ達はとある野望のために故郷のノーラ村を離れ2人でフォルトゥーナ帝国の首都にあるカスケードまで来た。
電車を乗り継ぎ5日はかかる距離を野宿しながら歩いて来たのがもう4年前14歳の頃だ。
英雄の存在を絵本で知った幼少期の俺は、創作物とは言え 星の救世主英雄ウル と同じように強くなることで様々な悪意から人々や自分が大切だと思うものを守りたいという夢ができた。
そして俺が村から出る当日、ウルトルは公爵様達の反対を押し切り無理やり着いてきてこう言った。
『オレも行く。薄汚い人間をねじ伏せる力が欲しい』
その時のアイツの言葉は今でも昨日の事のように思い出せる。
そして俺はその日コイツと一晩中戦って約束させた。
『歪んだ人間を正すために強くなるのはいい…だけど間違えた方向にその力を使わないと約束してくれ』
その後ウルトルの母さんを何故かおれが説得しに行ったのは、懐かしい思い出だ。
「そういえばあれから汚い人間を一人でも正せたか?」
「余計なことは忘れろ木偶の坊」
「ハハッ!照れんなって」
ウルトルが不機嫌そうに、眉間にシワを寄せながら読書していると、中庭と校舎を繋ぐ木製の扉から、騒がしい声が聞こえてきた。扉を勢いよく開けてきたのはフェルムだった。
「やっぱここか!おい!お前ら!未来の大英雄様がきてやったぞ!」
「なんの用だ?」
「相変わらずやかましいヤツだ、早く帰れ、星に還れ駄犬」
「おめぇら2人してノリ悪いなぁ〜」
このお調子者はフェルム。 俺達の同期だがご覧の通りの性格ゆえ、静かな場所が好きなウルトルからは必要な時以外嫌がられている。 俺はフェルムの明るい性格は嫌いではないが、多少鬱陶しい時も…まぁある。 基本的にはこの3人でいつも行動している。
「せっかくお前達が喜びそうないいニュース持ってきたのになぁー」
「ニュース?」
「むふふ…レシスト〜聞きたい?」
「うっ…気色悪いな…なんだよ」
フェルムの焦らす言い方に寒気を覚えたおれ、そしてそのやり取りにイラついたウルトルが、罵声を浴びせた。
「早く言え でないと今からお前のくだらんカードを燃やす段取りの為に頭を使う」
「おまえっ!いや!それだけはご勘弁を!3歳の時から集めて集めてそりゃ血と汗と涙の結晶なわけで…」
「裏の焼却施設は確か19時までだったなレシスト」
「え?あ、あぁ それがどうした?」
「カードの場所はどうせ部屋だろうし焼却炉が使えなくなるまで数時間も余裕があるな…よしっ、少し体を動かすか」
ウルトルは屈伸をし体を解しながら狂気の計画を口にする。フェルムは怯え、慌てて訪れた理由を言い出した。
「待って!待ってくださいおねげぇします!要件ってのはVRBS工事が終わったんです!!」
「ほんとか?」
「オレにとっては別にどうでもいい話題だな」
興味がないというかがこいつは自身を鍛え上げる事に誰よりも躊躇いがない。
そして何よりも実戦に近い形を好む。
だからこそおれはこいつの核心へ迫る
「そんな事を言ってるが、お前が俺と戦うことをなんだかんだ楽しんでいることを俺は知ってるけどな」
「黙れレシスト」
Virtual reality battle system program (VRBS)
フォルトゥーナの軍事施設に設けられてるフルダイブ型戦闘用トレーニングマシーン。
登録者の脳波をスキャンし好みの場所とシュチュエーションで戦闘を可能にする。
自分が所持している武器を使いたい場合はスキャンマシーンに読み取らせ個人データに保存する事でいつでも使用可能になる。またエレメンタルペトラの使用も可能で現実世界で戦うのと同じだけの効果を持つ為、仮想世界で戦った痛みは現実の肉体にも響く。(仮想世界で死亡した場合はプロテクトがかかり激痛は伴うが死の痛みを味わうことは無いので死亡することは無い。その為兵士の戦闘技術向上のため多くの機材が投入されている) また、登録の際は個人の身体データをスキャンする為仮想世界でも現実と何ら変わりのない身体能力を誇り、逆に言えば現実でも不可能な動きは絶対出来ないように調整されている。2週間程前バグが見つかり、アップデートを兼ねて工事を行っていた。
「だからカードだけはどーか!どうかご勘弁を!」
「…お前の今後の行い次第でいつでも燃やせることを覚えておけ」
「ひぃ〜」
「よし!それじゃぁ 後で行くか!お前も来るよな?ウルトル」
「物好きなヤツだ。こんな文学青年とやり合いたいなんてな。そこにいいサンドバッグがあるだろ。そいつを連れてけ」
「誰がサンドバッグじゃい!」
こちらに視線を向けずに本を読むウルトルの「文学青年」というセリフが、なんだか鼻についた俺は、どうせまともに聞く気はないだろうけど嫌味を言い返してやった。
「何が文学青年だ 戦闘狂の間違いだろ なぁフェルム。」
「まったくだぜ! 鬼畜ドSの魔王だな ウンウン」
「…おい、別にお前ら2人でVRBSなんて使わずにかかってきてもいいんだぞ ただ、加減できんからどちらか弱い方は星に還ることになるだろうがな」
そう言うウルトルの目からは光が消え背後からどす黒いオーラが放たれているように見えた。
フェルムは思わず後ずさりしながらも恐れずウルトルと言う人物の核心に迫るような言葉を吐く。
「お前ならホントにやりそうだから怖ぇよ…」
「あ!そうだそれで思い出した、フェルムお前もどうだ?久しぶりに体を動かさないか?」
「んーいや〜たしかに俺様も相当〜に強いけど、お前さんらとやると手抜けないからしんどいんだよなぁ」
俺が親善試合と称して、対戦を申し込んでもフェルムにだけは、何故かずっとこんな感じで理由を聞いてものらりくらりと拒まれ続けている。
「にしてもほ〜んと闘うことが好きだよなぁお前ら」
「オレはやると言っていない」
「だって暇さえあればやってねぇか? おれなんかそんなペースでできねぇわ」
バトルジャンキーみたいに言ってくるフェルムにおれはすこしカチンと来てついつい思ってたことをそのまま口にしてしまう。
「戦うことが好き…か。なんかそれだと俺も戦闘狂みたいだな…」
「そうじゃねぇの?お前ら」
「いや俺は自分の技を磨きたくてだな」
「ま、そういうわけでお前たちと異次元バトルするよりゲームしてるほうがおれは楽しいから遠慮しとくわ」
妙な言い回しでフェルムは今回も俺らと技を競い合うのを断った。
こいつは本当に怠惰で授業以外で体を動かすことを心底嫌う。
俺が残念に思っているとウルトルから鋭い言葉の棘が飛んでくる。
「ふん…ビビり野郎は来なくていい。やかましくなるだけだ…」
「いちいち癇に障る言い方しやがるなぁ!ウル公てめぇ」
「あ、そういえば」
そこでウルトルが何か思い出したかのように本を閉じて、2階のバルコニーから飛び降りてきた。
顔を下げたままゆっくりと立ち上がると パっと鋭い目つきでフェルムを見る。
「な、なんだよ」
「そう言えばお前、昨日オレがレシストに負けることに賭けていたよな」
「ぎくっ あ、いやぁそれはですね最近こうウルトル君がやる気なさそうだったので発破をかける…やる気を出させる意味でというか…あ、あはは…いや違うって…冗談だからさぁ」
「…」
鬼の形相を浮かべるウルトルが1歩ずつフェルムへと近付いてくる。
フェルムは産まれたての子鹿の様に脚をガクガクさせ、捨てられた子犬のような目でレシストを見つめていた。
「あの…レシスト君…た、助けてほしいなぁ…」
「知らん知らんお前とウルトルの問題だろ俺にフるな」
「なんならここでやってやってもいいんだぞ?さぁ昨日のことを後悔しながら逝け腰抜け野郎!」
「母ちゃぁん!」
こんなことをやって怒られているが、フェルムの実力は本物だ。
1000人以上居る選りすぐりの生徒の中で、戦闘成績に関しては全学年学部含めて俺とウルトルと並び在校生の中でトップ3に入る実力だ。
既に実践経験もある程だが、彼が腰にいつも下げている刀を使うことは、何故かほとんどなく、いつもは懐に隠している85口径リボルバー銃と体術で戦っていて、理由を聞いてもはぐらかされ続けている。
「たまにはお前ともやってみたいんだけどな。あの居合とかいう技はフォルトゥーナで使い手はほとんど居ないし」
「あれは試験の時とか重要な時だけしかやらないのよぼくちん。」
「ほぉ…やられながら雑談とは余裕だなフェルム?」
「ひぃぃい!じゃ、じゃあおれはこの辺で!二人ともまたなぁーウルトルのアホー!」
フェルムはウルトルにキメられたスリーパーを素早く解くと、きびすを返し、入ってきたとこから猛然と走って逃げて行った。
「ガキかあいつは…」
「ほんとお前ら仲良いな」
「どこがだ」
フェルムを冷たくあしらうが 実はこいつなりにフェルムに気を許してるのを俺は知っている。
ウルトルは本当に嫌いな奴にはもっと口が悪く、興味の無い人間には話しかけられても返答すらしない。
だからこそ それを知ってるおれは可笑しく思い笑みがこぼれる。
「ふっ」
「まったく…逃げるなら最初から通信機で話せばいいものを。詰められて逃げるとは…馬鹿なヤツだ」
しかしウルトルはウルトルで無駄を嫌う性格だからこそ怖がって逃げるなら初めから無線機で話せば効率が良いと述べる。
だが違う。フェルムは恐らく俺達とふざけ合いたかったんだ。
「まぁそう言ってやるな。俺達の顔が見たかったんじゃないか?寂しがりやだしなアイツ」
「気色の悪い…」
「じゃあ昼休みに先に行ってるから早く来いよ」
「はぁ…わかった。わかったよ。やればいいんだろ。それより先に今日の授業だ。早く行くぞレシスト」
――――
――
―
AM9:15
HRの挨拶が終わり、特待科の教室で一限目の魔法物理学の授業が静かに幕を開ける。
教壇に立つ教授の声が、厳格な空気の漂う空間に響き渡る。
「いいですかみなさん?魔法とは星そのもののエネルギーであるヴィテルフローの粒子がこの空気中に存在しており。それをマナと呼び、そのマナと皆さんが体内に持つ生命エネルギー、オーラをコントロールし結合させる事で生じるエネルギー魔力を発動プロセスを得て形にした物を魔法と言います」
教授が語る通り、魔法物理学において魔力とは星の生命エネルギーたる「ヴィテルフロー」が地表に漏れ出て粒子化した《マナ》と、個人の生体内エネルギーである《オーラ》の融合エネルギーの総称である。
魔力は厳密には二つの物質の融合体であり、大気中の魔素マナと、脳の海馬から発生して心臓部分のコア(器官)に宿る生命エネルギー(オーラ)が結びつくことで初めて魔法の発動が可能となる。ただし、そこには厳格な発動手順が存在し、基本的には自身の持つ適性属性のものしか発動できない。
また、大気中のマナは星が存続する限り実質無限に生成されるのに対し、体内のオーラ総量には個人の資質に基づく激しい個人差があり、決して平等ではない。常人よりマナ総量が多い特待生の中でも、レシストやフェルムが常人の約50倍のオーラを誇るのに対し、ウルトルのオーラ総量は彼らのさらに3倍、すなわち常人の約150倍に達し、その圧倒的な資質が問われる。
魔法の行使にあたっては、視神経からの伝達信号に強く集中し、体内のオーラを操作して空気中のマナに干渉・融合させ、大きさや威力、形をコントロールする。しかし、それは決して御伽噺のような万能な奇跡ではない。例えば火属性魔法であれば、魔力収縮による種火の生成、発火現象の誘発、そして形状の調整といった、現実の物理法則に準拠した厳密なプロセスが不可欠となる。
そんな緻密な理が支配する授業の最中、カスケードきっての秀才であるウルトルが、教官へ鋭い疑問を投げかける。
「いくつかの魔力適性を持つ者が発動プロセスの過程で他属性の発動プロセスを混ぜた場合、その魔法の威力は上がりますか?その場合魔力の消費量はどの程度ですか?」
人間が持ち合わせる適性は基本ひとつであり、2つの属性を持つ確率ですら100万分の1以下である。教官達も例外ではなく、魔法研究は必然的に単一属性で行われてきた。しかし、徹底的な実力主義を掲げる士官養成学院カスケードの特待科は、その100万分の1の才能が集う場所である。レシストやフェルムが3属性の適性を持ち、ウルトル・ラプソディアに至っては基本5属性すべてに適性を持つが故に生まれたこの疑問は、教官の頭を深く悩ませるものだった。
ウルトルが教官の回答が無いと悟ると席から立ち上がり、教卓へと足を運ぶ。
「火属性魔法のプロセスに風属性の魔法プロセスを適度に入れることによって小さな炎は酸素を含む風の勢いにより燃え盛る。同時にこの炎の周辺の風属性の性質を0にすることにより辺りの空気中の酸素の供給が止まり徐々に火は消えていく」
教官が言葉に詰まった内容を、理論的な実演を交えながら鮮やかに解説していくウルトル。
その洗練された手並みと理の深さに、クラス中から「流石だ」「すごい」「なるほど」と感嘆の声が漏れ広がる。
しかし、その熱気の中でただ一人、俺レシストだけは眉をひそめていた。
「お、おいウルトル、教官の顔を潰すようなことするな…」
「い、いいんです!ウルトル君はカスケードとは別に魔法物理学や生物学、薬学に於いて他の学院を卒業し博士号を持っている秀才ですから、私の方が多くのことを学べ助かっております」
「ふんッ…」
教官のフォローを聞くや否や、どこか冷めた態度を取るウルトルを見かねて、俺は思わず詰め寄り言葉を投げかける。
「お前がいくら優秀で博士号を持っていようとお前はここの生徒だ。勝手な真似をするな」
「俺は止まった授業を進めただけだ。感謝されど文句を言われる筋合いはない」
一触即発の空気の中で俺とウルトルが向かい合い、バチバチと火花を散らす。
その険悪な雰囲気を察知したのだろう、見かねた委員長のシドニアが立ち上がり、隣のフェルムに声をかけた。
「フェルム、ちょっと手伝って」
「あいよ〜」
軽妙な返事と共にウルトルと俺の元へ駆け寄るシドニアとフェルム。
フェルムは俺を背後から羽交い締めにして強引に引き離し、シドニアもまたウルトルの腕を引いて、2人を物理的に遠ざける。
「ほんと、あなたたち毎回毎回すぐ喧嘩して! ウルトル君も勝手に行動したことは悪いけど、いちいち突っかかるレシストくんも悪いわよ!」
「そーだそーだ! もっと言ってやれシドニア!」
「うるさい、フェルム!」
俺たちを仲裁するシドニアに対し、一緒になって動いていたはずのフェルムが茶々を入れたものだから、シドニアの怒りの矛先は一瞬でフェルムへと向かう。
そのおかげで、俺とウルトルのせいで凍りついていた教室の空気に、一気に笑いの波が生まれていった。
「なんでいつもいつも、大事な話をしてるときに邪魔をするのよ!」
「あ、や、ちょっ、燃える燃える! シドニア、やめてぇ〜! レッしー、ウルちん、助けてー!」
堪忍袋の緒が切れたシドニアは、逃げ惑うフェルムめがけて追尾型の小さな火球を放つ。
慌てふためきながら必死に躱すフェルムは、レシストとウルトルへ必死に救いを求めるが、反省の色を少し滲ませた俺は見て見ぬふりを決め込み、ウルトルに至っては腕を組んで完全に無視を貫く。
「…自分のケツは自分で拭け、フェルム」
「すまん、今は助けられん」
「いやぁぁぁあああ!」
2人に見捨てられた次の瞬間、容赦なく火球が命中し、フェルムの断末魔の悲鳴が教室中に木霊した。
「や、野蛮なクラスだ…特待科は問題児ばかりじゃないか…」
廊下をたまたま通りかかった普通科の生徒が、その悲鳴と笑い声を聞きつけて冷や汗をダラダラと流しながら早足で立ち去っていく。案の定、2限目が終わる頃には「特待科はやばい場所だ」という噂が学院中に広まっていた。
その後も授業は滞りなく進み、やがて告げられた昼休みのチャイム。
俺は午前の約束を思い出し、修理の終わったVRBSルームへと足を向けるのだった。
「ん?誰も居ないのか?」
久しぶりに来たこの部屋にはまだ誰も来ていなかった。
ここは校舎の地下2階にあり、フロア全てが訓練用のVRBS施設になっており、専用のヘッドギア型インターフェースと専用の神経接続カプセルに入ることで実際に肉体は動かさずとも仮想空間での戦闘を可能にしている。
「…点検の立て札は無いな。まぁいいか」
VRBSの中では周りの景色や敵、装備を自由に自分で設定できる。
対戦する相手と装備の情報を共有することで、現実に起こってることのように体感できる。
初めて使った時「そんな訳の分からないものは使いたくない」とウルトルが嫌がってたのを思い出して少し口元が緩んだ。
誰もいない部屋で使用前にしばらく実際に身体を動かし1人で素振りをして待っていたら、そいつはいつも通り詩を口ずさみながら現れた。
「明日に手を伸ばし朽ち喘ぐこの想い 誇りを捨て手を伸ばすほどに希望は彼方に潰え…」
「ほんとに好きだなカーラルイーナ」
「あぁそうだ…お前も読め。最終章が欠落しているところが読み手の好奇心を煽り考察に熱が入る」
この話題をするとこいつの目が輝きだす。何かに熱中するのはいいことなのだが、カーラルイーナにハマってからこいつの言ってることが時々分からない時があるのが悩みだ。
「おれはそういう小難しい事が書かれた創作物は苦手でな…勧善懲悪がやはり王道だ」
「それはな…お前が愚かで単純で人間として深みに欠けるからだ」
始まった。いつもの煽りだ。私闘や喧嘩する前、必ずこいつは相手をその気にさせるために、数々の悪口を吐いてくる。慣れようと努力しているが、様々な方法で俺の事をイラつかせてきやがる。
俺に火が付いたことを確認したウルトルは、氷のような冷たい笑みを浮かべると本を閉じ胸元にしまった。
「相も変わらず単細胞だな」
俺が首を鳴らしたのをきっかけにオレらはヘッドギアを装着し、カプセルの中に入り込む。するとヘッドギアのモニター全体に青白い光が灯り、俺らの意識は仮想世界に引きずり込まれる。
仮想世界で目を開けるとシステムの起動音が鳴り始める。周りの景色が暗転されると、目の前に白い枠で括られた、戦闘訓練用のメニュー一覧表が出現し、部屋には自動音声が流れた。
その音声を聞いてから俺のモチベーションが下がった
「訓練生番号191945レシスト・アンジュエルと訓練生番号114769 ウルトル・ラプソディアの2名の脳波を確認致しました」
「ふむ…いつも思うが ムッツリ訓練生にはやっぱりふさわしい番号だな」
「クソ…黙れ電波野郎」
…決まった時は運を呪ったさ。
ちょくちょくバカにしてくるこいつもな。
「訓練を開始しますか?」
「「あぁ。」」
「訓練項目を選択してください」
「デュエル」
デュエル。
それは1VS1で行われる実戦形式のバトルモード。
ダメージのフィルター量が現実でのダメージ数に最も近くシンプルだが自分と相手の力量が分かる最も過酷なモードである。
だがレシストとウルトルがカスケードに入学した中等部の頃はVRBSが存在しなかった為実際にふたりは演習場で戦い腕を磨いてきた。
だからこそ2人はいつもデュエルモードを選ぶ。
「かしこまりました続いて場所を選択してください」
「いつものとこだ」
「何回目だ…まったく…」
いつもの場所。俺達が初めて剣を交えた場所。
故郷ノーラ村の裏にある ウルデウス山。
そこには古の古代兵器が眠ってるという噂があり、麓の森は有刺鉄線付きの柵で何重にも囲われ誰も近寄らないため修行にはうってつけだった。そして10才の時初めてコイツと喧嘩したのもここだ。
VRBSでもその場のマップをインストールし使用している為 処理AIはいつもの場所と言うだけですぐさまこのマップを展開してくれる。
「装備を選択してください。」
俺とウルトルは装備品の設定を始めると、お互い自身のアカウントに登録してある設定を読み込んだ。
レシスト
武器:イニティウム(背:大剣) シュバリエルソード(片手剣)
防具:戦闘用シャツ(白)フォルトゥーナ帝国軍戦闘用ジャケットミフォルトゥーナ帝国軍戦闘用パンツ黒カーゴタイプ
ウルトル
武器:フィニス(細剣)
防具:戦闘用シャツ(黒) オーダーメイドコート(黒) フォルトゥーナ帝国軍戦闘用パンツ黒スキニータイプ
光に包まれた2人には設定した武器が装備されていた。
武器自体は現実でおれらが使用しているものを専用の機械でスキャンしデータ化した物のため実態はない。
言ってしまえばマナがおれたちに見せている幻覚だ。
だが攻撃が当たれば精神的に多大な影響を受け脳は実際にダメージを負ったと思い込み疲労が残ってしまう。
「仮想空間でくらい背中のを使ったらどうだ?」
「いいんだこれは背負ってるだけで強くなれるまじないがかかってるからな」
「甘さを捨てきれないから…オレに昔から勝てないんだお前は」
「ふん」
自身の甘さを誰よりも理解してる。
だがその甘さこそがレシストの強みでもあり誇りでもある。
それを知ってるからこそ幼少の頃からの付き合いであるウルトルは現実を突きつける。
それをレシストが鼻で笑うと余裕綽々の表情を浮かべ更に挑発する。
「始めようか むっつりマッチョ」
啖呵はふざけているが、ウルトルの目付きが変わった。さっきまでのどこか上の空のような表情は一変し、氷のように冷たい笑みを浮かべた
ーーーー次の瞬間だった。
「インストール完了マップをノーラに決定。両者共に準備完了を確認VR訓練を開始します…3,2,1殲滅訓練Lv10開始」
「は?殲滅戦?レベル10?」
「なに?!違う!待て!殲滅なんておれ達は選んでない!」
自動音声が告げた訓練の内容は、決定した覚えのない物だった。
殲滅戦 それは再現度なくポップする大量の仮想敵を撃退する過酷なものであり、レベル10とは設定出来る難易度の中で最大の物だった。
いくら生死フィルターが存在していてもその難易度とダメージから精神を来たした末に廃人になった者や実際脳への疲労で死亡してしまった人間が居た 言わばクリア者が今だゼロのモードでもある。
マップが暗転した次の瞬間、周りの景色が一変し、夕日が沈みかけた森になると、木の影や上から人型の黒い爬虫類のような皮膚をした魔物が何十体も襲ってきた。
「ウルトル!早く終了させろ!」
「今やってる!訓練終了手続きまで黙って援護しろ脳筋!」
「ちっ!」
ウルトルが強制終了の手続きをしている間 おれは襲い来る敵からウルトルを守りながら剣を振るっていた。
だがレベル10と言うのもあり、普段出てくる敵よりも同種だが攻撃力、防御力、素早さが段違いでおれ自身守ることで精一杯で反撃出来ずにいた。
そんななかウルトルから絶望的な一言が放たれる。
「くっそ…ちっ、だめだ…何度やっても終了出来ん!こうやっならやるぞレシスト!大技放つから一旦身体強化して時間を稼げ!」
「わかった!血肉に宿りし我が秘められし力と魔と剣を行使しこの身深淵より出し物 眼前の悪意穿つ…」
「おい!危ない!油断するな!」
俺の強化呪文の詠唱を止めようとした魔物がウルトルの剣によって真っ二つにされた。
「悪い!よし出来た!ここからはおれが前へ出る」
「頼んだオレが魔力のチャージを終えるまで任せるぞ…」
おれは自身の身体強化を終え好かさずウルトルの前方に立ちイニティウムを抜く。
イニティウム それは父が亡くなる前おれに贈ってくれた誇りの象徴であり、父の形見だからこそ基本的には自身の信念をかけた大切な時にしか抜かず背負っていた。
だがここは仮想の世界であり、同時に今がその信念をかけた大切な時だった。
「うぉぉおおおお!!!!」
俺の全力の一撃が巨体のモンスターを縦一文字に切り裂く。
血しぶきと共に仮想敵は倒れるとその体はデータの粒子となり消えていく。
そしてその後もおれはウルトルが魔力を溜めるまで時間を稼いだ。
「くそっ!なんて攻撃の重さだ…まだかウルトル?!」
「伏せろレシスト!…ゲミンガ・エクスプロージョンッ!」
次の瞬間、辺にいた全ての仮想モンスターは放たれたウルトルの渾身の魔法に引き寄せられ次々に消滅していく。
――ゲミンガ・エクスプロージョン それはウルトル自身が開発し禁術に指定した魔法。
球体の引力を持つ超強力磁場の中に無数の中性子を作り出し敵を焼き付くし消滅させ最後はその中性子を磁場の反転により周囲にぶちまける危険な技。
仮想世界じゃなければ術者以外全員、そして周囲の環境全てが放射能による被曝を受ける極悪非道な技である。
しかし敵を倒した次の瞬間には新たにリポップする敵。
ウルトルのゲミンガ・エクスプロージョンから逃げた敵を俺が狩り、ウルトルはゲミンガ・エクスプロージョンの持続のため制御に集中していた。
――――
――
―
数十分の間、倒しても倒しても湧いてくる魔物に囲まれ、ついには魔法の発動をその間維持してきたウルトルと身体強化をかけ続けたレシスト達の魔力は尽き掛けていた。
「はぁはぁ…こいつら…いつまで出てくるんだ…終わらんな」
「量が異常だな…さすが最大レベルだ…」
おれ達は剣を杖のように地面に刺し息も絶え絶え敵の攻撃を躱しながら反撃していた。
だが窮地の時こそおれの求めるものがあった だからこそこの絶体絶命の瞬間でもおれの口元は緩んでいた。
「はぁはぁ…成長の機会だ」
「はっ…ポジティブだな全く…強制終了が出来ない今、外から止めて貰うか出てくる敵全部ぶっ殺してこの訓練を終わらせないと無理だ、このまま続けていたら精神の摩耗で脳が焼き切れて本当に死ぬぞレシスト」
「必ず耐える…おれの得意な持久戦だからな…背中は任せろ!」
目の前の魔物に向けてレシストは武器を構えなおす。すると一体の魔物がレシストへ襲いかかる、その瞬間
――突然二人の周りを囲んでいた敵や景色が、分解され消えていく。
それによりおれ達の意識は殺風景なトレーニングルームのディスプレイとカプセルに座る自身の肉体へと戻された。
「あれ?!終わったか?」
「…」
突然のことに唖然としていると白衣姿の無精ひげを蓄えた壮年の男性が慌てた様子でおれらの方へと駆け寄ってきた。
「大丈夫だったかね!?」
「……ガウェイン先生」
「なんで先生が?」
この人の名前はガウェイン・アミエル。
士官養成学院カスケードの保健医でもあり、同時に幼少期のおれやウルトル戦いの基礎や魔法物理学のを教えてくれた人でもある。
だが普段カスケードの中にある自分の研究室から出てこない先生がこの場にいた事に疑問を覚える。
「いやウルトルに用があったんだがね、何処にも居なかったから行きそうなとこを予測して来てみたらVRBSがエラーを起こしてたからびっくりしたよ」
「…」
そのガウェイン先生の姿におれは感謝した。
出なければ本当に脳の疲労で死んでいた可能性もあるからだ。
だが同じ窮地を体験したはずのこいつはおれとは全く別の感情を相手に向けていた。
「どうした?ウルトル」
「いや別に何でもない 助かりましたありがとうございます」
しかしウルトルはその疑問を心の中にしまい込み頭を深く下げ礼を述べる。
「ウルトル、後で医務室に来てくれないか?話したいことがある。レシストくんも怪我とかは大丈夫かい?一応診ておくかい?…」
「いえ!大丈夫です」
「そうか…では私は先に医務室に居るからウルトル君よろしく頼むよ」
そうして自身の要件が済むと先生は雑談をするでもなくすぐに部屋を出て行ってしまった。
ガウェイン先生がこの場から居なくなったのを確認するとウルトルは閉じていた口を開く。
「ちっ…回りくどいことしやがって…」
「どういうことだ?」
「システムの調整バグだと思っていたが…おそらくあの人の仕業だ」
「なに!?」
バグだと思っていた殲滅戦は恩師であるガウェイン先生が引き起こしたと言う推論を述べるウルトル。
だが幼少期から世話になってきた人だからレシストは疑いたくなかった。
そして目で見えて触れて証明したものしか信じないウルトルにしては珍しく確証のない話をおれにする。
「証拠はないからはっきりとは言えないがな…。」
「でもそれならどういう意図があって こんなことを」
「…とりあえずお前はあまりあの人に関わらないことだ オレは先生の所に行ってくるから先に戻ってろ」
「お前は先生となにを…」
ウルトルは「なにもない心配無用だ」と言うとトレーニングルームの機能を停止させた。
俺達は、戦いの舞台から日常に戻ったが、ウルトルはガウェイン先生のところに向かうため、先に部屋を出て行ってしまった。一人トレーニングルームに残された俺は、戦いの緊張感が解け気が抜けたのか、腹から音が鳴った。
「…考えても仕方ない、何か腹に入れておこう」
地下二階のトレーニングルームから出て、食堂はその二階真上にあるが、レシストが着くとすでに、腹を空かした獣たちが、獲物を求めて目を血走らせながら、己の食を確保していた。
「昼も終わるというのににぎやかなだな」
俺がいつもの様子に呆れていると、突然その場が騒然とした。人だかりが出来ている方を向くと、そこには一心不乱に牛丼を貪り食らうフェルムが居た。
「おばちゃん!牛丼特盛おかわり! つゆだくだくで!」
「あいつか…」
フェルムは一度校内の大食いバトルで優勝するほど怪物級の胃袋を持つ男だ。
「はいよ!ぼーっとしてないでレシスト君もお食べー」
「あ、じゃあいつものやつ」
「チキン南蛮オクラ納豆ソースセット入ったよ」
俺が席に着くと、皿から顔を上げてフェルムは、視線をこっち向け言ってきた。
「ぐふが!(きたか!)ほいお!〈来いよ!〉…(ゴックン)大食い対決は今日もおれが勝つからな!」
「口に物入ってるのに汚いなぁ…」
俺が注意する前に、同じクラスの女子生徒に指摘された。
「フェルム!汚いから口に物を含んだまま話すのはやめなさい!品のない行動は特待科の沽券に関わるから委員長として許さないわよ!」
しばらく待っていると、揚げた鶏肉にオクラ納豆そソースをぶっかけたレシストスペシャルが運ばれてきた。
だが、俺の箸はお腹の調子と周りの様子とは裏腹に一向に進まなかった。
「あいつ何をしてるんだ…」
――レシストが食堂に居る頃。一階にある保健室兼ガウェイン教授の研究室では、ウルトルとガウェイン教授が、常夜灯とシャウカステンの明かりだけが唯一の光源になっている部屋でなにかを話し合っていた。
元々ウルトルはガウェイン教授の教え子でもあり、幼少期から多くの知識をガウェインに教わってきた。
だからこそガウェインはウルトルの体の問題を唯一知っている人物だった。
「…見えるかい」
ガウェインはレントゲン写真をウルトルに見せ言った。写真の人間の胸には小さな亀裂が入っており、テーブルに散らばるカルテには遺伝子の変質による染色体の汚染と書かれていた。
「体調に問題は?」
「特には…戦闘も問題なく」
「ふむ…普通なら身体的に違和感を感じてもよさそうなものだが…」
ガウェインは腕を組み「んー」と悩みながらそのままうつむいてしまった。
しばらくそのままでいると、ゆっくり顔を上げウルトルの目を見ながら答えた。
「一度詳しく検査してみないかね」
「…それは先生、あなたの検体としてですか?」
少し間をあけるとガウェインは口を開いたが、その目には若干の陰りが見えた
「もちろんいち患者としてだよ?大事な生徒を検体などそんなことするわけがないだろう?」
「…考えておきます」
ウルトルが部屋を出て行こうとしていた時、ガウェインのつぶやきにウルトルは足を止めた。
「ところでカーラルイーナの解読はどうだね」
「それなりには…」
「君にとっての恵みかもしれんね」
「こんなもの…ほしければあげたいですがね」
ウルトルは礼をすると、振り返ることなくガウェインの研究室を後にした。
引き戸が閉まると、机に向き直りガウェインは笑みを浮かべながら、少し冷めたコーヒーを口にした。
「女神などに愛されても僥倖は待ってないんだよウルトル君」
部屋を出た瞬間博士の発言に思う所があったウルトルは大きなため息をついた。
「はぁ…先生との話で遅くなったな。ただでさえアイツが面倒くさいのに…」
ふと腕時計を確認したウルトルは、とある約束を思い出し目的地へ向かう。
三階に上がり自分の特待科クラスのすぐ上に図書室があり、血の気の多い生徒しか居ないこの学校ではあまり利用されない静かな図書室がウルトルは好きだった。
「あらウルトル!来たのね!」
そこに居たのは長い黒髪を束ねた美しい女性だった。
「お前が呼んだんだろ?」
ぶっきらぼうに、だがどこか優しい口調でウルトルが答えると黒髪の女性は頬を膨らませながらウルトルの方へ駆け寄る。
「言い方!ごはん食べたのかしら?」
「後で何か食べる。それよりルシア」
「え、あ、はい」
ルシアと呼ばれたこの女性はウルトルから漏れ出る 圧のようなものを察し少し小さく身をすくめる。
「今日の課題は?」
「あ、そ、そうそうこれ」
「…魔力の戦略的使用法についての論文か」
「全然分からないので助けてくださいぃ…」
魔力の戦略的使用法 それは本来カスケード中等部で習うはずの基礎中の基礎とも言える魔力の戦闘時の運用方法についての論文だった。
ルシアの頭の悪さに思わず頭を抱えるウルトル。
しかし実力は本物で ルシアは実力主義のこの士官養成学院カスケードの3年生首席であり、来年には飛び級でミーレスへの配属が決まっている優秀な生徒でもあった。
「はぁ…確かにお前の頭じゃ7日かけても無理だろうな…」
「ほんと言い方ひどいよねぇ!」
――数分後
「体内のオーラの循環によってこの場合は魔力を有用的に生成し魔法に転換できるということだ…お前…そんなことも理解できないでよくミーレスへの配属が決まったな?」
「う〜だって…」
ミーレスとはただ優秀な戦士がなれるものでは無い。
優秀なのを前提とし身体強化用に開発された遺伝子を注入し、飛躍的な力を手に入れる。
その為身体適性があり、適正が無いものはいくら優秀でもなる事は叶わない選ばれた者のみが道を開けるエリート中のエリートである。
だからこそ目の前のルシアの理解力に頭を悩ますウルトル。
「学ぼうという姿勢がないからだ オレも暇じゃないんだ。いつまでもこうしてお前を教えることはできないんだぞ」
「なんでウルトルはいつもそんなきついことばっか言うのかしら…一応私彼女なんだからもう少し優しくしてもいいと思うんだけど?」
「彼女だろうがなんだろうが人間性と知力を矯正してやってるだけありがたく思ってほしいものだな」
そしてウルトルは過去の事を振り返る。
ルシアとの出会いはフェルム達 「やかましい連中」を避けるため避難してきた場所がこの図書室だった。
ある日一人で読書していると、騒々しく図書室に入ってきたのが2学年上の大学部に在籍する先輩このルシア・アルカヌムだった。
出会った当初は会話のなかった二人だったが、毎日「うーんうーん」と苦しそうにウルトルから見るとあまりにも低レベルな課題に、毎日悪戦苦闘するルシアに耐えられなくなり。彼の方から声をかけたのが二人のきっかけだった。
「そんなの…言われなくても分かってるわよ…もうすぐ離れちゃうんだからちょっとでも会おうと思っちゃダメなの?」
「はぁ…」
怒って頬を膨らませるルシアの様子を見かねたウルトルはため息をつくと思いやりのある優しい声でルシアに語りかける。
「確かに…言い過ぎて悪かった…だがお前が出来ない人間ならオレはお前にここまで言わん。卒業したら遊びに行ってやるから」
その言葉にルシアの顔は真っ赤になり顔を覆う。
「な、急な優しさはずるいわよ!」
「その為にはまずこの論文を終わらせないとな?」
しかし優しさも束の間、悪魔のような笑みを浮かべるウルトルにルシアは小動物のように震えていた。
「許してぇ、問題の解き方を教えてくださいぃ…」
「まったく単純な女だ」
しばらく二人が図書室で奮闘してるとチャイムがなった。
「この続きはまた次回だ」
「…ねぇウルトル」
「なんだ」
「この間のガウェイン先生が言ってた話本当なの?」
ルシアは以前ガウェイン教授とウルトルが話し込んでいた所に遭遇したことがあった。
胸の亀裂。正確には分からないが長くないと言われた寿命。
そしてそれを過去にも問いただしたことがあった。
「…余計な事を考える前に自分のことをどうにかしたらどうだ」
「私は心配してるのよ!」
「気持ちだけは受け取っておくだが、お前に心配されてどうこうなる問題じゃない」
そう言って不安そうにウルトルを見つめるルシアの頭をわしゃっと撫でそのまま自分の教室へ行ってしまった。
ぐちゃぐちゃにされた髪を梳きながら遠ざかるウルトルの背中を角を曲がり消えるまでルシアは静かに見つめていた。
「私にできること…」
――――
――
―
一方レシストとフェルム達は自分達のクラスである特待科の教室でクラスメイト達とそれぞれ談笑していた。
「いやー食った食ったぁ!へへっ!どーよ俺の食いっぷりは!えー?」
「毎度あの汚い食べ方だけはどうにかならないのか?そこだけはウルトルを見習ってほしいもんだ」
そのあまりの汚い食べ方に普段は寛大なレシストと共に食べていると不愉快に思っていた。
しかし本人はそんな言葉は意に返せず自身の思っていた疑問を投げかける。
「あ、そういやウルトル居ないけど?」
「あぁ ガウェイン先生に呼ばれた」
「あいついっつも先生となに話してんだ?」
「こないだも説明しただろ?」
このくだりを必ず1日1度はしてるなと感じたおれがため息をつくと「そ、そうだっけ?」と頭を人差し指で掻きながら、とぼけた様子で口笛を吹こうとしていたが、音は全く出ていなかった。
呆れつつも俺は毎日してる説明を今日もする。
「…人体に関する研究のために先生達に協力しているらしいぞ。今回もそうだと思うけど」
「え?研究って…あいつ…そんな頭良かったっけか?」
「あいつ去年時点でカスケードと一緒に通ってた専門分野の大学院卒業して博士号3つ取ったらしいしウルトルの書いた技術態勢の論文が学会で評価されたとか聞いたけど」
「やば…」
実際にウルトルは頭が非常に良い。オーラ硬化症の特効薬の開発に最近では質量を定数とする論文の作成や、世界の修正力を誤認させものを入れ替える技術の開発を個人で行っている。
そうして実際結果を出しているウルトルはこのカスケードでも期待の星として扱われている。
「新聞や学校の張り紙にも書かれてたろうが…それよりさ…」
「ん?」
しかし俺の会話の矛先はそこではなく、先程あったずっと胸に突っかかっている ウルトルと共に体験した事故についてフェルムに打ち明けた。
「いや実はさっきトレーニングルームでガウェイン先生と会ったんだが」
「へーあのおっさんも体動かすことあるんだな」
「いやそうじゃなくて…」
「ん?」
しかしレシストが起こったことの詳細を切り出そうとしたその時
ビーッ ビーッ ビーッ
と突然校内に警報と共にアナウンスが鳴り響いた。
「ただいまより大学部一学年生全員の抜き打ち戦力検査を行う」
男性の声で校内放送が流れたかと思うと、クラスの扉が開く音がした。そちらに目をやると眉間に皺を寄せ、妙に殺気立った顔のウルトルが居た。
「ウルトル?」
「お前たち戦力検査に行くのか?」
「……あ、あぁ」
ウルトルにしては歯切れが悪かった。
しかし空気の読めないフェルムはそのまま話を続ける。、
「そーそー数字で分かりやすいのがいいよな!特にウルトルみたいな奴には!」
「そう、だな…」
「お、おい?なにかあったか?
俺の言葉を無視して、席に着くウルトルの顔には、いつものように不機嫌にも見えなくは無いが、たしかにその瞳には若干生気がないように感じた。
その様子に、さすがのフェルムもやっと何か察したらしく、めんどくさい絡み方をしていた。
「どうしたんだ?ウルちゃーん?」
「…特待科の戦力検査地をさっき通りすがりの教官が話しているのを聞いた」
「どこだったんだよ」
ウルトルへの気遣いもあるが純粋な好奇心からフェルムは行き先を尋ねる。
「サンクゥトゥスだ」
「あの大型ムカデの巣がある森か?」
ウルトルがなぜここまで不機嫌で生気のない目をしていたのか俺はやっと気がついた。
こいつは子供の頃から虫が嫌いで、同様に虫型モンスターも苦手だった。
いつも冷静なこいつが珍しい足をゆすぶり、机を指でトントンと叩きながら口を開く。
「あぁ…最悪だ」
「そういやお前…虫が苦手だったな」
「この学園の伝統行事だ諦めろよウルちん〜?」
おれが心底心の中で哀れに思っているとフェルムは悪意を込めてウルトルを煽る。
きっとこいつなりの仕返しなのだろう。
だがそんなことを言われて黙っているウルトルではない。
――そういつもなら。
「あの気色の悪い形に脳も小さく食道節や別のところを使って身体を動かし、何を考えてるのか理解出来ない生物…うぅ、考えるだけでもおぞましい…」
普段は人を人とも思わず、何処までも冷静なウルトルが今回ばかりは本当に精神的にやられていた。
しかし戦闘力の検査は、学科毎に決められた目的地に赴き、その地域にいるモンスターと戦い、その様子を教官が点数化する重要なテストでもある。
今回の俺達の目的地であるサンクトゥス洞窟は“虹”というきれいな印象の名前とは裏腹に、想像を絶するほどの、大量のムカデ型モンスターの巣になっており、今まで最深部を目指し洞窟に入って生きて帰って来た者はいない。
「…あそこに行くくらいなら再試験になって成績下げる方がまだマシだ。オレは絶対に行かない」
今までここまで弱り険悪な姿を見せるウルトルは見た事がなく、心配するおれを他所にフェルムは追い打ちをかける。
「ウルちん休みすぎてるだろ単位足りるの〜?」
「ぐっ…」
「あれれ〜?ウルちゃん留年するー?」
だが次の瞬間にやにやしていたフェルムは教室の宙を舞っていた。
だけどまぁウルトルの気持ちも分かる。
あそこのムカデはその量もそうだが、その大きさや戦闘力もとてつもなく、一匹一匹の全長が人間の大人と同じくらいあり、牙には人体を一瞬で溶かす猛毒を持っている。
実際その恐怖におれでも身をすくむ中虫嫌いの極限状態のウルトルに喧嘩を売ったフェルムの自業自得だ。
「どうせ増えすぎて洞窟からあふれ出したのを学園が駆除依頼として請け負ったんだろうからそんな数はいやしないさ」
「いてて…そうそう!それにさすがに洞窟の奥まで行けとは言われねぇから大丈夫だってウルトル」
好かさずレシストがフォローを入れるとぶっ飛ばされるまでウルトルを煽っていたフェルムも手のひらを返し共にウルトルを励ます。
「見るだけで…想像しただけで…あの気色の悪いビジュアルが…オレの脳裏に…」
「フォルトゥーナ帝国の王妃の甥で公爵家の跡取りがこんなことで情けない…親友として恥ずかしいぞウルトル」
ウルトルの虫嫌いは筋金入りで 本人曰く、他の動物と違ってグロテスクな見た目と、何を考えてるか分からないとこが苦手な理由らしい。
だから 虫 が関わることになると途端、放心状態に陥ることがある。
そのいつもとは違う様子に、クラスメイトの数人が心配して声をかける。
「無理にやらなくとも大丈夫わよウルトル。委員長である私から今回のことは多めに見てもらうように教官達に言ってくる?」
「いやいいシドニア…それに 女 にそこまでされるのもオレのプライドが許さない」
「そ、そう…無理はしないでね」
すると再び、おれ達特待科の担当教官である、ムドウ・テリアルークの低く圧のある声が、クラスに設置されたスピーカーから響いてきた。
「それでは目的地を告げる。普通科は演習先がマギカシエルとの国交問題が発生しているため学校にて待機!奉護科はペルシーカ闘技場!特待科はラプソディア領ルクスにあるサンクトゥス洞窟!準備が出来た者どうしスリーマンセルで班を組み校庭にて整列して待つように!」
教官の発言は絶対であり、逆らうことは許されない。
俺達はファーストエイドや、糧食等の備品の支度を進めていた。
「やっぱりサンクトゥスなのかかぁ…まぁラプソディア領ってことはウルトルの未来の領地じゃねぇーの。大丈夫だ、何とかなるって!」
「おれもラプソディア領に戻るのはカスケードに来てからは初めてだな」
「うるさいぞお前ら……もういい、早く準備しろ」
ラプソディア領という事でウルトルに茶々を入れるフェルムとラプソディア領のノーラ村出身のおれは久々に行く故郷の領に懐かしさを感じていたが当の本人ウルトルはと言うとさしも気にも留めず2人に準備を急かす。
そしてもう一度おれの方を少し険しい顔で見るとウルトルがこちらに歩み寄る
「…」
その表情は険しくも何処か曇りがあり、困った顔で口を開いた
「レシスト」
「どうしたウルトル」
すれ違いざまにウルトルはおれの耳元で囁く。
「ガウェインの話は忘れろいいな」
言い終えるや直ぐにウルトルのその足は、クラスの中央に集まるシドニアや、フェルム達の話の輪の中へ向かっていった。
「ほかの科の目的地は楽そうでいいよなぁ」
「そっちに混ざってくるといい駄犬。お前が居るとイライラする」
「んだと?別にそこまで言うなら奉護科に移ってやってもいいんだぜ?けどおれが居なくなったら寂しいもんなぁ?ウルちゃん?」
「フェルム!しつこいわよ!」
フェルムが、ウルトルといつものように言い合いをしていると、輪に混ざっていた男子生徒のひとりが、横から奉護科について語り出した。
「奉護科がいつも闘技場なのはクラスメイト同士で殺し合いしてるらしいよ。奉護科の人とよく関わる人に聞いただけだけど」
「いやいやファルよ、さすがに冗談だってそれは」
「私もさすがにないと思う…謎が多い学科とは言え、委員長としてどんな理由でもそんな校風は認められない」
俺達特待科は、それぞれその類まれな戦闘力を示すことにより、普通科から編入を許され、その将来をフォルトゥーナ国軍幹部か、ミーレスという特殊部隊に捧げることになる。
そんな生徒達が集まる特待科に対し、将来は戦闘員ではなく、普通の職に就く者が多く所属する普通科。そして王族等、身分の高い人物へ仕えることを目的に、俺達とは違って少し特殊な訓練や、勉学を受けるのが奉護科。
王族やそれに準ずるものを警護するための訓練を積む為、奉護科のカリキュラムは秘匿されている。
その為良くない噂が多々あり奉護科の性質上有り得そうということで尾ひれが付き広がっていた。
「落ち着けよシドニア!早口になってるぞ〜?」
「あ!ごめんね?!委員長としてお恥ずかしい限りね」
「でも奉護科だからな…ありそうっちゃありそうじゃね?」
この特待科の生徒達もそんなゴシップに踊らされる1人だった。
しかしグループの輪の中に入ってきたウルトルは奉護科についてぶった斬る。
「あんな人間失格科にそんなことできる度胸ないだろう」
「ウルトルの奉護科嫌いは相変わらずだね」
要人警護という、重要な立場になるためのプライド故か、他の生徒を見下す連中が多く裏での素行が悪い生徒が多々おり、王妃の甥であり公爵家の跡取りであるウルトルは奉護科の人間の性質を知るからこそ、将来自分の傍にこんなやつらがつくのか と毛嫌いしている。
「ウルちんの知り合いで奉護科の女の子居たけど聞いたことないのか〜?」
「1度イザベラに聞いた事がある。闘技場で対人戦の訓練や暗器の練習をしてるらしい」
イザベラと言うのはウルトルが図書室で出会った同学年の奉護科の女子生徒らしく学科試験ではウルトルに継ぐ次席であり負けず嫌いで他の生徒を見下さず対等に接する芯のある女性。
だからこそ奉護科嫌いのウルトルが唯一見下さない奉護科に所属する女性だ。
「さ!そろそろ時間ねみんな!準備はできましたかしら?できた人からこの学科委員長シドニア・オルフェウスに着いてきて!ウルトルもラプソディア領の案内をお願いね!」
「そろそろ切り替えて覚悟はできたな?ウルトル」
「はぁ…話でもして忘れようとしてたんだがな…嫌々だけど覚悟はできた」
俺はクラスの後ろにあるロッカーから、長剣イニティウムと片手剣テュテインソードを取り出し、背中のホルダーに十字に挿すと、クラスメイトとともに校庭に向かった。
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2時間後PM16:32 サンクトゥス洞窟付近のとある村に到着したレシスト達特待科一行。
空からは光が薄れ紅色の空が広がっている。
「よし今夜はこの村の一部を借りそこにキャンプを設営する」
林の中でムドウ教官の覇気のある声が響くと、生徒達は足踏みを止めいそいそと、自らのリュックから仮設テントを取り出し、それを組み立てはじめた。
そんな最中、質素な恰好をした村長と思しき男性が俺達の元に近寄ってきた。生徒達がそちらを見ていると、教官が後ろから生徒たちをかき分け出てき、生徒代表としてシドニアが対応をする。
「あんのーあんたがたですかいねぇ?ご連絡くださったすんげぇ兵隊さんらの候補兵の方々ですかね」
「はい、この付近に害を及ぼしている害虫の駆除の依頼を承りはせ参じました!私たちが学園カスケード特待科の者です!」
「あぁ!えがったぁ じゃ皆さんテント張り終わったらぜひ村まで来てくだせぇ」
そう言うと会釈をし、農夫達は木々の間からわずかに漏れる光の方へ草をかき分け行ってしまった。
すると話を共に聞いていたムドウが生徒を整列させ清聴の合図の後口を開く。
「聞いた通りだ。私は先に村民の方々とモンスターによる被害の報告を聞いてくる。お前たちは、各自テント設営を行い終わった者から村へ来い。」
「了!」
「それとミーレスを名乗り隣国であるテネブラエへ誘拐するという事件も多発しているから必ず最低でも3人1組の集団で行動すること 分かったな?」
そういうとムドウ教官は、農夫達が歩いて行った方へ進むと、木の陰に隠れ姿が見えなくなった。
「ウルトル、おれ達もさっさと組み立てて村の方に行こう。…っておい」
「虫…ムカデ…やっぱりダメだ…悪寒が…うぅっ…」
「ダメだな…フェルム代わりに頼めるか?」
「おう、こっち終わらせるからちょっと待っててくれよ?」
テントを組み立て終えた生徒から続々と、教官を追いかけて木々の間をかき分けていく、するとそこには民家が六軒ほどだけ立ち並んでおり、中央の石碑のような物を囲って、村人数十人が長机のような台の上に料理を配膳していた。
「おい!お前たち!ぼさっとしてないで手伝え!お前たちのためにと村の方々がこうして…」
「いんやぁ~いいんですよぉ~今から大仕事の生徒さん方に余計な労力を使わせるわけにはいきませんから」
「しかし…」
依頼でこの土地に来てモンスターの被害により食べ物も減ってる中料理を振舞ってくれた村人にムドウは申し訳なくなり、配膳程度のことは各自にさせようとした。
だが村人たちはこれからモンスター退治に望む生徒の為に休めと促す。
そしてその言葉は生徒だけではなく教官にも向けられる。
「まぁまぁ教官殿もたまにはくつろいでくだせぇよ。生徒さん方もそちらに座ってお待ちくださいや。もうすぐ終わりますんでね」
そういうとその農夫は民家の中へと入って行った。
数分後、長机の上には村で採れた作物で作った、料理で埋め尽くされており、生徒たちはそれにむさぼりついた。
「おいフェルム…さっき食ったろ それおれのだ」
「俺消化早いからよ分かってんだろ? おーいおば…おねぇさぁーんお代わり」
「こらー!静かに食わんか!」
「こいつはいつどこでも変わらないな…」
ふと周りを見渡すと放心状態から我に返ったウルトルが一人中央の石碑のようなものの前で一人立っていた。
「どうしたウルトル?もう平気か?」
「あぁ、それよりこの石碑の楔文字カーラルイーナの執筆時期と近いかそれよりも古い時代に彫られたものだ」
「そうなのか?何故分かる?」
「カーラルイーナの原文と同じ種類の古代の楔文字が使われているからだ。これはとある時代の僅かな期間しか使われてない」
こいつはカーラルイーナの考察になるとすぐ熱くなる。
考察の為に当時の古代文字をすべて習得したほどに。
だからこそカーラルイーナと同じ年代に記されたであろうこの石碑に何かあるのではないのかと感じたのだろう。
「ふーん…んで?なんて書いてあるんだ?」
「英雄は星獣とともに悪神を打ち払った のち宝具は砕け散り再び星獣へ還った 続きもあるが…文字が欠けてて読めんな…最後に 聖なる獣たちは偉大なる山で眠りについたと 書かれてるな」
「おれが昔読んでもらった本にもそんなことが書いてたような」
「村の誰かに聞いてみるか……すいません少しよろしいでしょうか?」
ウルトルは、食べ物を配膳する農夫に話しかけた。
石碑のことが聞きたいと伝えると、農夫は「あんたは領主様のご子息の…詳しい人連れてくるからちょっと待ってて!」と、言って食べ物を机に置くと石碑の前にやってきた。
すると後ろから嗄れ老いた声がウルトルに飛んできた
「間近で見ると見るとレグレス公爵さまに似とるのぉ」
「あなたは?」
「わしはこの村の長老じゃて、レグレス公にはいつも村のことで大変お世話になっとってのぉ、レグレス公の子息が尋ねごとをしてきたって聞いてのぉ来たのじゃよ」
そして長老はウルトルが先程見つめていた石碑に視線を移す
「あーこれのぉ、わしらの曽爺ちゃんのそのまた曽爺ちゃんのそのもっと昔からこの村にあったらしくてのぉ、これをワシらはずっと守っとるんじゃが正直もう守る意味も分かっとらん。言い伝えだといつか来る災いを払う人のためにここに残していると前長老からは聞いとるが…」
「そうですか…」
村人に告げられたこの石碑の過去。
しかしウルトルが期待していた答えとは違う回答だった。
そうこの石碑の意味を知るものはもう居なかったから。
「そんなことよりはよ夕食を食わんとぜーんぶお仲間さんらがたいらげてしまいますぞ?」
「あぁ、今行きますお気を遣わせた挙句 足を止めさせて申し訳ありません」
少し気を落としながらも最低限のマナーを忘れずウルトルは礼を述べ頭を下げる。
しかし長老は自身の身分やウルトルの身分を考えて慌てて頭を下げるウルトルを止める。
「ええんじゃええんじゃ頭なんて下げなくて!わしらはラプソディア領の領民じゃからのぉ、小公爵様が頭を下げてはいかん!それより領主様によろしゅうな!」
言い終えるや長老は再び食材の配膳をするため自宅に戻って行った。
「どう思う?」
「これを見ただけじゃなんともな…」
「似た話が書かれた書物を見た気がする。あれは確か…」
「くっ…!」
石碑の前で少し頭を抱えた瞬間だった。
急に頭痛にウルトルはその場で膝を着く。
「お、おいどうしたんだウルトル」
「大丈夫だ…た、ただの立ちくらみだからあまり気にするな…」
「…そうか」
俺がウルトルに肩を貸そうとした瞬間、後ろから一際大きな声が響いてきた。
その声に反応してウルトルはいつもの澄ました顔になり俺の差し伸べた手を払い除け自身で立ち上がる。
「おーい!二人して何してんだ?」
「…お前には関係ない話だ」
突っぱねるウルトル しかしそこで引き下がらないのが空気の読めないこの男フェルム・凩である。
「仲間外れにしなでくれよぉ!なぁ!ウルちゃん!レっしー!そう思うだろ〜ぉファル〜?」
「暑苦しい!!」
「わぁこれはうざったいわぁ…」
ウルトルとはその場を離れた後別れ、フェルム達と食事をした。食事中も先程のウルトルとの会話をしつこく聞いてきたので、鬱陶しく感じたおれは、渋々フェルムとファルをテントに招き入れさっきのウルトルの話を教えてやった。
だが、内容を話し始めると言い出しっぺこフェルム本人は興味を失い鼻をほじりながら聞いていたが代わりにその内容に聞き覚えのあったファルが昔見た本の記憶を口にする。
「それってあれだよねぇ 星の英雄 って童話でしょぉ?よく母さんに読み聞かされてたわぁ」
「お前もやっぱりそう思うか!」
頭の中に浮かんで内容と一致したのはおれだけではなかったことがわかり思わず喜びから俺は勢いでその場から立ち上がってしまう。
すると先程まで鼻くそを飛ばし遊んでたフェルムが何かを思い出したかのように口を開く。
「おーそれならよ、俺の故郷にそういう似たような伝説がある武具があったらしいけど今はどこにあるか分からんけどな」
しかしおれたちの興味は武器ではなくフェルムの故郷へと移ってしまった。
「フェルムの故郷にそんな話が?お前どこだっけ」
「ジパングだ。まぁもうあそこに帰ることはねぇだろうがな」
おれの質問が出た瞬間 一瞬だがフェルムの顔が曇る。
「何かあったのか?」
「ん〜」
意味ありげに含みを持つフェルムの姿に触れてはいけないとこに触れてしまったと気付いたおれは急ぎ口を閉じたが逆効果になってしまった。
葬式のような雰囲気に気まずくなった空気をファルがすぐに本来の議論に話を戻す
「でもぉ似た時代にカーラルイーナと星の英雄みたいな二つの話が書かれてたとしてさぁ?何か気になることでもあったの?」
「おれも思ったんだけど聞こうとしたらあいつ急に頭抑えて話聞けなくてさ」
おれとファルが夕方のウルトルのことを話していると、鼻くそをおれのテントの壁に飛ばして遊んでいたフェルムが茶々を入れてきた。
「頭抱えるって 元カノのことでも思い出したんじゃねぇの?妊娠したの!どう責任取るの?みたいな事言われたみたいな悩みでもあったんじゃねぇ〜の?」
「アイツに限ってそんなこと…あるのか?」
「かっかっか」と独特な笑いをするフェルム。その声に反応したのか、それともフェルムの悪口の気配を感じ取ったのか、隣のテントからパキパキと何かが凍り付く様な音が聞こえる。
「さ、俺は少し散策してくるかな」
「ついてくぅ…」
「え、ちょっと?レシストくんファル?」
嫌な気配を感じたのかフェルムは立ち去ろうとするおれらの手を掴むがおれらはその手を振りほどきテントの出口へ走った。
おれとファルがテントを出た瞬間、タイミングを図ったかのように、後ろからフェルムの断末魔がこだました。
「ふむ…だがあの石碑どこか別の場所でも同じものを見たことがあるような…」
「死語を慎めレシスト!ムドウの小言が増える…」
「お前たち!静粛にしろ!」
フェルムを凍らせたウルトルと問題の種になったおれ、フェルム、ファルの4人はムドウ教官の喝が入り説教を食らっていた。おれの独り言を聴いたウルトルが早く帰りたいが為に余計なことを言うなと注意をしてきたが、その性格から余計な一言が付いていたせいで地獄耳のムドウ教官は全て聞き逃さず おかげで教官の有難いお話は大変長引いた。その後自分のテントに戻った俺は、どうにか石碑について思い出そうとしていたが、自分の過去の記憶がそこだけ霞がったようで、そのまま思い出せぬままいつの間にか眠りについていた。
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その日俺は夢を見た
真っ赤な髪の女性らしい人型のそれは、怨念に満ちた冷たい目と全身から冷や汗をかくような膨大な魔力を纏いまるで子供に期待する親のような表情でじっと、ウルトルのことを見ている。嫌な予感がした俺は、声を出そうとしたがうまく出せない
「ぐっ! ん! ん!」
すると次の瞬間、それはゆっくりウルトルを背後から抱きしめると、徐々にウルトルは闇に覆われ消える瞬間のあいつの目はとても冷たく感じた。黒いモヤで包まれたウルトルを見ているとそいつの顔がゆっくりとこちらを向き始め半分程こちらを向いた瞬間目が覚めた。
「うわ!!」
目を覚ますとまだ日が昇っておらず、タブレットフォンの時刻は、午前4時を指していた。
既に、クラスメイトの数人はキャンプ地の中央で、今日の戦闘に使う武具などの準備をしていた。その中には意外にも普段はぐーたらしているフェルムの姿もあり、愛刀を正座した膝の上に置き瞑想していた。
その姿は、いつもの間の抜けた様子は一切なく、一人の武人が静かに心を落ち着かせているかの様だった。
「さて…おれも」
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フェルムの姿に影響されたおれも、父から譲り受けた大剣イニティウムの手入れや、アイテムの管理状態を気にしていると、いつの間にか瞑想を終えたフェルムが目の前に立っていた。
「よぉレッシー朝早いな!」
「瞑想は終わったのか?」
「あぁもうばっちり。お前は?」
「この薬草の調合が終われば準備完了だ」
お互いの最終準備の確認をすると珍しくフェルムが真面目な顔で俺に提案を投げかける。
「ちょっと散歩しないか?」
「いいけど どうした?」
「裏にいるから終わったら来てくれ」
珍しく神妙な面持ちのフェルムは答えを聞く前にこの場を立ち去る。
二人で話したいらしく、村とは反対方向にある林の中へ入ってすぐ、他の生徒に自らの声が届かないことを確認して立ち止まった。
「どうしたんだ」
「…お前の親父ってどんな人だった?」
フェルムの質問、それは父親の事だった。
そして俺は自身の父のことを語る。
「父か…偉大な人かな…元帥であるウルトルの親父さん、公爵様の下で働いていたフォルトゥーナ帝国軍の大将の階級を持っていて地位に胡座をかくことなく、死ぬまでずっと民やラプソディア領の領民のことを考えていた俺の誇りの様な人だ」
「偉大、誇り…ねぇ」
しかし俺の回答を聞くやフェルムの表情はより曇ったように思えた。
だが俺は質問された以上それに答えた。
「あぁ、確かに今はもう肉体はこの星に還り一部となった。だけど、父の存在は俺はもちろん多くの人の中で尊敬する人間として生き続けているよ。」
「そうか」
父を誇りに思うと語る俺を見るフェルムの目はいつものような無邪気な輝きがなく 一瞬くらい闇が見えた気がした。
「どうした?」
「いや俺のオヤジは…母さんに暴力振るうわ、母さん居ない時は俺のケツ犯すようなクソだったからさ 父親の温かみっての知らなくてさ」
「…」
フェルムの過去に俺は思わず絶句してどんな言葉をかければいいのか言い淀んでしまった。
「わりぃさっきの童話の話で昔のこと思い出してさ。あん時なんも言えなかったからさぁ〜お前にだけはなんか話しててもいいかなと思って」
「そういうことか。大変だったなとは軽々しくは言えないけど、でも母親はお前のことを色々考えて育ててくれたんだろ?」
フェルムの過去を聞いたからこそ、その話の中に出てこなかった母はきっと加害者ではなくフェルムを思って接してくれてたことに悟る。
「まぁな」
「一人でも思ってくれる人がいるのはいいことだ 俺も父の仕事親が1人だったから分かる」
「そっか…」
おれらが雑談している周りを薄い煙が立ち込め始めたがこの瞬間はまだ特に気にも留めなかった。
「そういやお前とウルトルって中等部より前からの付き合いなんだろ?どこ出身だっけ?」
「ノーラ村だ」
「あ〜あのなーんもないとこか」
「は?自然とか聖杯装置とかあるだろ!…っ?!」
その時、ふと違和感を覚えた俺は足を止めた。同じくフェルムも、何かを感じ取ったようだ。
「あの木…」
「さっき見たよな」
「あぁ…」
フェルムは腰のホルスターから素早くリボルバーを抜き、背後の木の枝めがけて発砲した。
その瞬間木々の隙間から木霊するように声が聞こえてきた。
「あ、バレた?」
森の中から、少年らしき声が聞こえてきた瞬間、そいつはいつの間にかおれらの背後に存在していた。見た目は7,8歳ほどの少年に見えたがその佇み方に一切の隙を感じられない。
一番目を引いたのは、その身を包む緑の機械的な鎧だ。体にピタリと装着された鎧は、その胸元に五芒星が描かれ、背中には薬品を体内に流す為のタンクとそのタンクから体に繋がる管が伸びていた。掌にはあるつぶて程の大きさの、エレメンタル・ペトラが埋め込まれており、周囲の魔素を少しずつ吸っているように見える。
「しゅごいねぇ〜こんな早くバレたの久しぶりだからうれしいなぁ イヒ!」
少年の独特な話し方に呆然とする2人。
「お前…なにもんだ?」
「そんなことよりさぁ遊ぼうよ!かくれんぼは僕の負けだから次鬼ごっこしよ!」
その瞬間少年の足元から何かが俺たちの顔をめがけて飛んできた。
飛来した物体は背後の木へと突き刺さり正体がわかった。それはガーナイフだった。
「なんだこいつ?!これかなりやばくねぇか?!」
「あの胸元の印は軍事国家テネブラエの最高戦力の象徴セントグラムだ。一人一人が一騎当千の傑物と聞いてる…」
「ウっソだろ?!…あれが?」
セントグラムそれはフォルトゥーナ帝国と現在戦争してる国 軍事国家テネブラエ最強の5人でありフォルトゥーナで言うミーレスランクSのような存在。
その無邪気な言葉の幼い見た目とは裏腹に本能が負けを認めるほどの
「えへへへ!遊ぼう!二人とも強いからいっぱい遊べるね!」
「断れば?」
「じゃあいらないから死のうか?」
無邪気な声とは裏腹に本能が逃げろと促す程の殺気を俺らは見に浴びることとなった。
しかしそんな中でも冷や汗をかきながらフェルムは賭けの一手に出る。
「へっ…脅しても無駄だぜ近くにミーレス候補が何人も居るんだぞ それに教官もな」
「ンフフフむりだよ」
「なんだと!?」
「だって僕の力で二人とも捕まえたもん。だれも来ないよ」
「…さっきから同じとこ回ってたのはこいつのせいだったわけか」
「そゆこと。みんなに殺さないように言われてるからいまは殺さないからあんしんしていいよ」
「構えろフェルム!」
俺はいつも背にかかえてる、テュテインソードを構えようとしたが、すぐにテントに帰るつもりだったことを忘れており、今現在相手と渡り合える武器が、腰に差した護身用ロングソードしかないことに気が付く。
「しまった…支給用のロングソードしかない…」
「それでも…もうやるしかねぇだろ…」
「あそぼあそぼ!」
俺は何とか逃げる隙を作るため、右手にロングソードを構えると、刀身の棟の部分に触れ、雷の魔力を込めるとロングソードは雷を纏いだした。
「おぉぉぉ!!かっこいい!!ぼくもする!」
「な、なんなんだこいつ、やりずらい奴だな」
「油断するな」
レシストと同じポーズで自身の身につける装置の電圧で俺の剣のように雷をダガーナイフに纏わせようとした瞬間、天候が変わり一帯に紫電が少年の左手に降り注いだ。
莫大なエネルギーを溜め込んだ左手を自身の持つナイフに添えた瞬間あたり一帯が爆発した。
「むちゃくちゃな野郎だ!」
「来るぞフェルム」
「えへ、がんばって逃げてね」
少年は突然目の前から消えたかと思うと、側面にある木陰からダガ―ナイフを逆手に持って襲撃してきた。
俺らは、ギリギリのところで躱すことができたが、少年はまだまだ余裕そうに口元が緩んでいた。
「すっごーい!もっと遊べる!」
そう言って、木々を飛び回る少年は徐々に加速すると、まるでコガラシのような凄まじい速さになった。
だが俺とフェルムは、木々のしなる音や風の流れで、少年の居場所を感覚的に掴めることができていた。
そうやって何度も攻撃をいなしていると、突然攻撃が止んだ。
「さすが特別な人間だねぇ。今から2パーセントくらい本気出すね!」
「強がんなよキッズ君」
「へへっ 見せてあげる!」
突然、突風があたりに吹き荒れたかと思うと、次の瞬間かまいたちが起こり、レシストとフェルムともに全身切り傷を負った。
二人は、その場に膝をつくこととなり、危機を迎え冷や汗が頬を伝う。
「ぐあっ…こなくそ…負けてやれん…絶対に生きて帰る…ガハッ!」
「だ、大丈夫かレシスト」
「毒付いた僕の武器はどう?かっこいいし痛いでしょ?」
少年は更にスピードを上げ、もはや感覚だけで捉えることは不可能となった。
2人は、少年のダガーから滴る毒によって、体の自由を更に奪われると、その場に倒れて起き上がることができなくなった。
「わかったぞ…お前…その特殊合金製の強化外骨格に…風を纏った技の数々…テネブラエのディアボリッカー…か…」
「やっとわかった?これでも有名人なんだよ?それにしても別の国の兵隊さんにも知られてて…僕嬉しいよ」
「ぐっ…ふざけやがってこの野郎…がぁぁ!」
「フェルム!」
少年はフェルムの背中を踏みながら、話をしだした。
「死ぬ前に知れて良かったね。そうだよディアボリックイーター、ソロナ・セルゲイド!色々呼び名はあるけどこれがキミらを吹き飛ばす暴風の名前だ」
「なんで…こんな奴がここに…」
「ひょんなことはキミが知る必要ないよ最強の候補兵くん」
再び、少年は二人の眼前から消えたかと思うと、森の奥から楽しげなソロナの声が響いてくる。
俺達は、背後からわずかな魔素の流れを感じ取り避けようとしたが、その大砲のような突風の塊は俺を目掛けて吹き荒んだ。
「うわぁぁぁ!」
「レシストォ!」
一瞬で、10メートル程空へ吹き飛ばされた俺は、何が起こったかも分からず、気が付いたときには地面に叩きつけられていた。
「ぐっ…」
「レシストッ!…おい死ぬな!」
「もうムチの息か。ミーレス候補の特待生って言ってもこんなもんかぁ…」
「クッソォォ!」
「さってトドメ…は、刺しちゃいけないのか めんどくさいなぁ。じゃあ…」
地に伏したまま、体を動かすことができない俺たち二人に近づいてくるソロナ。
彼が、自分の腕に取り付けられた装置を、起動した瞬間周りの風景が歪み始めた。
「な、なにしやがった…」
「別になんでもいいでそ。知った所でキミらは連れてかれるだけだし」
「…俺達を連れ去ってどうする」
「イ業は…間違えた…僕はただキミらを連れてくのが仕事なんでねぇ…そこまでは知らないよん」
ソロナは耳に手を当てどこかに連絡を始めた。
「一応捕獲はちた…うん二匹…はいよ…その何とかプロジェクトの失ぱ…一度通信を切るわ。思ったより早く残りのが来た」
「はぁ!!」
密集した林を文字通り斬り開き、足に魔力を溜めると爆発的な勢いと共にウルトルがソロナに切りかかった。
「ぐっ…!」
「逃げれると思うなよ族め」
「へぇ…へへっ…たくさん来ちゃね〜」
「アンジュエル!凩!無事か!」
ウルトルがソロナの不意を突き、腹部にあるこぶし大程の大きさの、翡翠のような石に傷をつけたのと同時に、ムドウ教官の声で俺達を呼ぶ声が聞こえた。
「ははっ 血濡れの無道に要注意人物のミーレス始まっての怪傑候補か…やり合うのはラクしそう…間違えた…楽しそうだけど今回は様子見だけだし…こんなもんで帰ることにすりゅわ」
「この数を相手に逃げられると思っているのか?」
ムドウ教官は、腰に装着していた三節根を取り出すと、瞬く間に槍に変化し穂先をソロナに向けた。
「おいお前たちフェルムとレシストの治療をしてやれ」
「委員長として責任を持って連れて帰るわ!レシスト君は私に任せてあなたたちはフェルム君を!」
「お、おう!」
「ヒール!ヒーーーーール!」
続々とクラスメイトが現れたことで、態勢が不利になったことを感じたソロナは、腕に取り付けてある装置を操作すると、空に飛びあがり浮遊した。
「また遊びに行きゅからしっかり準備して待っててね!」
ソロナがそう言うと、凄まじい突風が吹いた後そこに少年の姿は無くなっていた。
しかし魔力の感知能力に長けているウルトルは正確にソロナの逃げた方面へと踵を返し追い掛けようと身体強化を施そうと魔力を操作しようとした時「待て!」とムドウ教官から静止がかかる。
「ラプソディア!深追いするな」
「ですが!」
「孤立したところをあのレベルの敵将に複数から叩かれたらお前と言えど対処は不可能だ」
「っ…」
「焦るな。己の力だけを過信するのはお前の悪い癖だ 仲間のことも考えろ」
「ちっ…特待科総員キャンプに帰投するぞ」
キャンプ地では、農夫達の手伝いもありレシストとフェルムの、傷の具合はそこまで深刻なものにはならずに済んだ。
だがテントの中で二人は己の無力さを実感していた。
「なぁレシスト…」
「どうした」
「まだまだだな」
フェルムの悔しさがおれの胸に刺さる。
敵から身も守れず友すら守れない。
挙句自身がライバルと定め対等に接する男に助けられる。
その悔しさがおれのを深く抉る。
「そうだな…」
「もっと強くなりてぇよ…俺…」
「おれもだ、…誰かを守れるくらい強くなりたい」
「だよな…戻ったら真面目に修行パート行っとくか?」
少し笑いながら話すレシストとフェルムの頬には光る粒が流れていた。
「…ウルトルにも勝ちたいしな」
「一発かまして鼻っ柱へし折ってやんねぇとな」
二人が笑いながら談笑していると、クラスメイトの医療生の女子と農夫が二人入ってきた。
「二人とも無事でよかったよ!」
「んだぁ〜あげな怪我で済んだんは奇跡じゃ神様に感謝せなねぇ」
「そうですね…皆さんありがとうございます…」
「えぇんじゃぁ〜お互い助け合いじゃけぇの 気にすっことねーべ それに異変に気付いたのはあんさんらのお友達。小公爵の坊ちゃんのおかげじゃ。ワシらは何もしとらんよ」
「そんな…」
この事態にいち早く気づき対応をしたのは他の誰でもなくウルトルだった。
そしておれはその事実と自分の無力さに拳を握りしめる。
(たくさんの仲間達に囲まれているのに、自分すら守れる力がない…情けないな…)
その日の戦力検査は延期になり俺達特待科は村にもう一泊することになった。
一人を除いて…
レシストとフェルムがテントで養生している頃
ウルトルは教官と別れ、集団輪の中から外れ一人近くの川辺で考え事にふけていた。
「…」
「考え事か青年」
ウルトルの背後に、いつの間にか中肉中背で赤い髪を逆立たせた、中性的で美しい顔立ちをした20代くらいの男が立っており、もの悲しそうな顔で空を眺めていた。
その男が放つ異様な雰囲気にウルトルは隣に置いておいた剣の塚に手を伸ばす。
「誰だお前…?」
ウルトルが一瞬で剣を抜くが、男は不気味な笑みを浮かべたまま慌てようともその場を動こうとはしなかった。
「武器を仕舞え。貴様にまだ俺は討てん」
「…舐めてるのか?なら試してみるか?」
ウルトルは握る剣に力を込めると踵から踏み込み3メートルほどの距離を一瞬で詰めた。
勝利を確信した瞬間――彼の胸部に赤髪の青年の蹴りが襲い、激しい痛みと共に川の中心まで吹き飛ばされた。
「ぐっ…あ…なん…だ…今のは…」
「力量の差が分かったか?」
足首程までの川の深さ。
立ち上がろうとしたが、呼吸をすることが難しく水辺の上に膝をついたままのウルトルに向かってゆっくり進みながら男は実力の差を思い知らせる。
しかしウルトルの闘志は依然として消えず、頭は常に冷静だったからこそ相手の正体を推測する。
「ぐっ…お前テネブラエの手の者だな……」
「お前たちの顔を見に来ただけだ…災いの因子を持つ者達がどのように成長したのかをな」
「災いの因子だと?」
災いの因子――全く聞き覚えの無い言葉にウルトルの脳は瞬時に悲鳴を上げる。
(なんだ?!災いの因子?!お前“たち”?!こいつは一体何を言ってる?!)
しかし答えは出ない。
「今知ったところで貴様には何も出来まい…」
「…なんだと?」
「ただ…貴様に一つ問う」
ゆっくり川の方へ足を進める男は、その気配が全く感じられない。それどころか、砂利の上を歩いているのにも関わらず、足音が聞こえてこない。男は水際で足を止めて話を続けた。
「自分が特別なのは自らの才覚のおかげだと思っていないか?」
「なに?」
「もし…貴様の運命…周りのすべての現象を一人の人間がそうなる様に設計し決めていたとしたら…お前はどうする?」
オレが辿ってきた運命は一人の人間がデザインしたものだったらーーそんな事はありえない。
イチ人間が人生に干渉することなど不可能だ。
合理の化身であるウルトルの脳は瞬時に今の話を否定する。
「そんな都市伝説みたいな話しを信じろと?」
「仮定の話だ」
「…オレはオレだ例えそうだったとしても生き方を変えることはしない アイツが…レシストを英雄にしてそれに並び立つまでは」
「ふむ…」
ウルトルの自信のある発言を聞いた男は彼に背を向けてから話を続ける。
「いい目だな…若さと無知故の気迫か…ふっそれもまたいい…友を大事に奢り高ぶり過ぎないことだ…」
そう言って男は、川沿いを上流に向かって歩いて行く。月明かりに一瞬照らされた、男の横顔を見ると、彼の右目が真っ黒に変色したように見えた。
「お前は一体…」
その瞬間、20メートル程ある断崖を飛び上がりウルトルへ向かい菜を名乗る。
「俺の名はレウス。レウス・クアランウィード。そのうちまた出逢うことになるさ」
その言葉を残しレウスと名乗る青年は夜の闇に消えていった。
消え入る最後ウルトルに向けた瞳は月明かりに照らされた夜空の様な青黒い瞳だった。
「なんだったんだあの変態は…レウス?あいつが?まさかな…それに災いの因子だと?」
身体の痛みが落ち着き川から上がったウルトルはしばらく思案していると、おもむろにポケットからタブレット型の小型通信機を取り出し、どこかに連絡を取り始めた。
「…調べたい物がある、協力してください」
こうしてウルトル・ラプソディアは1人キャンプを離れ暗い夜の森へと姿を消した…。
最後までご覧頂き誠にありがとうございます。
自分の中では文字量として少し物足りなく思っておりましたが皆様の心に刺さる作品を作って行けるようにこれからも尽力してまいります。
お気に召していただけた場合ブックマークと☆を頂けると心の支えになりモチベーションに繋がりますので是非よろしくお願い致します!
次回更新は9月25日を予定しております。




