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もしも人狼ゲームの占い師が異世界に転生したら~スキル【審査創造】で、あらゆる事象を占います~

作者: 快速焼売
掲載日:2026/05/17

「……人狼審査はもう飽きた」

「……は?」


 おっと、いけない。

 あまりに退屈すぎて、思わず本音が漏れてしまった。

 

 私は紫のローブから両手を出し、水晶にかざす。そうして、何やらゴニョゴニョと呪文のようなものを唱える。

 すると、水晶に人の姿が映し出された。


 高級試験

『完全狼性鑑定』:コスト100


 占い師

 100/100 ⇒ 0/100


 目の前の男が感心するように声を上げる。


「この人物は狼なのか」


 私が首を振ると、男は立ち去った。

 

 そう言えば、今まで一度も根拠を聞かれたことはないな。『こんな水晶で何が分かるんだ』とか、『へっぽこ占い師が』とか、『消えろブス!』とか、ただの一度も言われたことがない。


 まあ、私は不細工ではないが。

 それにしてもこんなインチキ臭い占いで、誰一人疑問を抱かないとは。


 このまま、いつものように夜が更けて行くのだろうな。



 

 後で気づいたのだが、なんと今の占いは記念すべき2000回目の占いだった。キリの良い数字。4でも6でも9でもない。一見、縁起が良さそうにも見える。

 だが、占い師という枠に縛られなければ、普通に危ない。何しろ、かれこれ2000回も夜に占いをしているのだ。


 試行回数が多ければ、不幸に見舞われる確率も当然上がる。

 つまり、もっと警戒すべきだったのだ。


 遅かった。私が部屋に戻った時点ですでに異変が起こっていた。

 部屋の窓際に男が立っていたのだ。もちろん、先ほど占いをした人物ではないが、見覚えがないわけでもない。


 狼ってことだろう。私は自虐っぽく笑ってみせた。

 そうか。私は負けたのか。


「いや、お前は負けてない」


 薄暗い部屋なので判別できないが、狼は真顔で訂正した。


「お前の占いは正確だった。ただ推理した奴が悪かった」

「擁護してくれてありがとう。でも、もうどうでもいいよ。さあ、食べるんだろう。一思いにやれよ」


 私は狼に背を向けて、無防備であることをアピールした。そして、紫色のローブ、マスク、アクセサリを全て床に捨てた。これらは占い師であることを相手に印象付けるために必要なものだ。だが、もういらない。占いなんて二度とすることはないだろうから。


「……」


 狼は黙ったままだ。


「おい! 女にここまでさせておいて、だんまりか!」

「一つ質問をしていいか?」


 調子の狂うやつだ。

 狼って、こんなのばかりなんだろうか。


「もしも、占い師でなかったら、お前は何がやりたい?」

「答える義理はあるか?」

「相手を殺す前には、必ず質問している。俺の流儀なんだ」

「くだらない質問だ。決まってる。占い師だ。私にはそれ以外できることなんて、ないからな。ただ……」

「ただ……?」

「もう、人狼審査はこりごりだ。他にもやりたい審査は山ほどある。この答で満足か?」


 狼の望んでいた答えだったのだろう。

 少し考え込むと、私に言った。


「これは俺が前に食い殺した奴が言っていたことなんだが。実はこの世界は『人狼ゲーム』と呼ばれるゲームの中の世界で、他にも世界があるらしい」


 何言ってんだこいつ。他にも世界って……。


「狼が人を襲わなくていいし、占い師が人狼審査をしなくていい世界らしい。どうだ。行ってみたくはないか?」

「行ってみたいと言ったら」

「俺に食われたら、行けるかもしれない」

「……はは」


 なるほど。こいつが何をしたいのか、ようやく分かった。

 要するに、私を慰めてくれてるわけか。私が悲しみを感じて食われるのは、後味が悪いから。せめて明るい心持ちで食われるように、優しい言葉をかけてくれてると。


「ありがとう。でも、心配には及ばない。私はそんなにヤワじゃないから。恨んで化けて出たりはしないから。安心して食べな」

「……」

「おい! まだ、やるのか!」


 夜が明けるまでには食べろよ。と冗談めかして言ってみた。

 狼の質問の意図はもう一つある。

 たぶん、私が占い師に飽きていたように、こいつも狼であることに飽きていたのだろう。

 


 *



 ここまでで終わっていたら、この話は『人狼ゲームの占い師が狼に食べられる』というシュールなうえに実際のルールには基づかない意味不明な話として終わっていたことだろう。


 だが、この話にはまだ続きがあった。


「ーーーー」


 とりあえず、落ち着こう。私は右手を挙げて、それから、左手を挙げてみた。すると、鏡の中の見知らぬ少女が、右手を挙げて、それから、左手を挙げた。


 え? つまり、どういうこと?


 この状況の整合性が取れるように解釈すると……。

 鏡の中の見知らぬ少女が、私ということになるが。


「……ちょっと待て。私、頭がおかしくなってないか?」


 すると、私の口から今まで聞いたことのない声が聞こえた。私が頭を抱えると、鏡の中の見知らぬ少女が頭を抱えた。


 これよりも前の出来事を思い出そうとしてみる。まず、私は狼に食われた。命を落とした。だから、そもそも存在しない。それが大前提なわけで……。


「……」


 そこまで考えて、私にも合点が行った。


 狼の語っていたあの話だ。


「……占い師が人狼審査をしなくていい世界。そこに来れたっていうのか?」


 もっと、コンパクトに、今の状況をたった一言で表すなら……。


「私は生まれ変わったんだ」

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