第40話 帰還後
ダンジョン実習では、『変遷』に巻き込まれたことで、トラップにより最下層まで落とされ、SS級モンスターのアダマンタイトドラゴンと戦うことになった。
激闘の末になんとか倒すことができ、戦利品として巨大なアダマンタイトの塊を手に入れられたのはよかったのだが、その後が色々と問題だった。
「!? 貴方達、無事だったのね!」
地上に現れた僕達を、そこで心配そうに顔色を曇らせていたミスティ先生が、喜びとともに迎えた。
「アヴィ君は怪我をしているの!?」
僕が背負っていたアヴィは、未だ目を覚まそうとしない。
「大丈夫です。彼は恐怖で気絶してしまっただけですから」
その問いかけにはセリア嬢が答えた。
「そう。無事でよかったわ。『変遷』が起きて、他のグループは大丈夫だったけど、一番深く潜っていた貴方達のグループだけがその影響を受けることになってしまってね。それはそうと、一人増えてるみたいだけど、彼女は?」
ミスティ先生の視線の先には、隠し部屋で発見したオートマタのイヴがいる。
「ダンジョンの隠し部屋で発見した、古代の魔導王朝レガリアで製造されたオートマタらしいです」
僕が紹介すると、イヴが着ているドレスの裾を摘みながらカーテシーをしてみせた。
「イヴといいます。地上は日差しが強いですね。お肌に悪そうです」
「⋯⋯デュアル君、このオートマタ、変わってるわね」
「ええ、まあ」
「ところで、シリウスはどこに? 彼、自分だけ帰還結晶を使って脱出したんですけど」
「シリウス君なら、一言疲れたと言って帰っていったわ。集団行動を乱す行為は咎めたいところだけど、情けないことに、八大公爵の嫡男相手には私も強く出れなくてね」
「そうですか。先生も大変ですね」
そんなやり取りをしている内に、アヴィがようやく意識を取り戻した。
あれこれと嘘を並べ立てて誤魔化そうと考えていたんだけど、目覚めたアヴィは、『変遷』が起きた後のことを一切覚えていなかった。
恐怖で錯乱したことで、心が壊れてしまわないように防衛本能が働きそういう処置をとったのかもしれない。
理由はどうあれ、僕達には都合が良かった。
アダマンタイトについては、僕とセリア嬢で半分づつに分けて所有することにした。
セリア嬢は断ろうとしたんだけど、彼女が時間稼ぎをしてくれたおかげで倒せたわけだからね。
働きにはそれに見合うだけの報酬を。
それが美しいやり方だ。
その後、波乱のダンジョン実習を終えて『ニドゥス・アウィス』に帰宅したわけだけど、先に帰っていたレティシアとニベアには、特に心配されていなかった。
僕がいればどんな状況であっても、無事に戻ってこれると考えていたらしい。
帰還ゲートがあったからそれを利用したけれど、『破壊』の力を使えば、マーキングしているここに、空間を移動していつでも戻ってこれるわけだからね。
オートマタのイヴも、二人に歓迎されたよ。
僕の時と違い、彼女達に毒は吐かなかった。
マスターにだけ辛辣な態度をとるオートマタってどうなんだ。
そのイヴは、レティシア達と同じようにメイドとして、僕達が学園にいっている時は留守番をすることになった。
ひとまず、ここでそのイヴのステータスを開示しておこう。
【名前】イヴ
【種族】オートマタ
【性別】女性?
【年齢】1026歳
【状態】正常
【LV】65
【HP】582
【MP】623
【ATK】145
【DEF】141
【INT】207
【AGL】187
【能力】魔力操作 魔:光 闇 無
なんだこの強さ。
リノア姉さん達に匹敵するステータスじゃないか。
イヴの話によると、魔力を練って生み出した糸を操って戦うとのこと。
ちゃんとレベルアップもするそうだし、また強力な仲間が加わった。
秘密結社『モノクローム』の一員ともなった彼女のコードネームは、ラテン語で『4』を意味する『クアットゥオル』に。
口の悪さに目を瞑りさえすれば、メイドとしても優秀だし、いい拾い物をしたということで納得しておくとしよう。
§
「へぇ。ここが『ニドゥス・アウィス』。新しくて綺麗なところね」
「ニベアさん達と一緒に暮らせるなんて楽しみ!」
セリア嬢が、宣言通り一緒に暮らすことになった。
それは聞いていたのだが、なぜか妹のティアナ嬢もオプションとしてついてきた。
部屋にはまだ空きがあるから別にかまわないんだけど、女性が六人に対して、男が僕一人っていうのは少々居心地が悪い。
ネビュラは雄だけど、エンシェントドラゴンだしな⋯⋯。
その新たに『モノクローム』に加わったセリア嬢のコードネームは、ラテン語で『5』を意味する『クイーンクエ』。
これからの生活は、色んな意味で賑やかになるだろう。
ゲームのシナリオからはだいぶ外れてきているけれど、不測の事態にはフレキシブルに対応していくしかない。
あくまで美しく、ね。




