第32話 武芸と固有スキルの実技試験
昼食を終え、午後からの試験が始まった。
武芸と固有スキルの試験は、並行して行われる。
試験官と、それぞれの得意な武器を用いて模擬戦をする中で、固有スキルを使用するのだ。
ただ、生産系のスキル所持者などは、戦闘では活用出来ない為、評価に加算される事がない。
なので彼らには、模擬戦とは別に時間をとってそのための試験を行うらしい。
僕の順番は後半なので、昨日と同じように、リノア姉さんと他の受験者達の模擬戦を観戦しながら会話を交わす。
「レティシアも、だいぶ細剣の扱いが熟れてきたわね」
とリノア姉さん。
その視線の先では、レティシアが細剣片手に女性の試験官と刃を交じらわせている。
もちろん、模擬戦なので刃は潰してある。
彼女は、固有スキルの〈植物魔法〉を織り交ぜつつ、試験官を翻弄している。
「そうだね。でも、ニベアの方は、慣れない片手剣に戸惑っているみたいだよ」
とニベアを見つつ。
彼女は鎌使いだからね。どうやらそれは用意されていなかったみたいだ。
固有スキルの〈断絶〉は使えない。殺傷力が高すぎる。
ちなみに、セリア嬢の模擬戦は、レティシアよりも先に終わった。
彼女は剣の腕も卓越していて、試験官を寄せつけなかった。
ただ、固有スキルは、その途中でレティシアの順番が回ってきたので見逃してしまった。
ゲームで知る、彼女が持つ『歌姫』の力を一度直に見てみたかったんだけど⋯⋯まぁそれは別の機会にとっておくことにしよう。
「魔法の実技ではあまりいいところが見せられなかったからね。試験官を圧倒して、最高の評価をもらってくるわ」
リノア姉さんは、そう意気軒昂に言うと、自分を呼んだ試験官の元に向かった。
しばらく、そのリノア姉さんの戦いを見ていたけれど、言葉通り、試験官はリノア姉さんに手も足も出ない状態だった。
最後は、〈付与〉で炎を纏わせた剣で、試験官の剣を叩き折って終了。
あの分なら、評価は最高のものが与えられるだろう。
次はいよいよ僕の番だ。
男性の試験官に呼ばれて、片手剣を選びとりそちらへと向かう。
「お願いします」
一礼して、剣をかまえた。
身体強化魔法は使わない。
今の僕は、それに頼らずとも、魔力を練り上げて身体に纏う事で、攻撃力も防御力も飛躍的に向上させる事が出来る。
以前、ラザールとの決闘の際に身体強化の魔法を唱えたのは、相手の油断を誘う為だ。
魔法には、上限があるからね。その程度だと踏んでくれると、意表をつく事が出来る。
「シッ!」
僕は、魔力の出力を手加減しつつ、試験官に接近し、剣を振るった。
──ガッ!
当然のように、剣で受け止められる。
即座に次の攻撃に移る。
そのまま連続で剣撃を見舞うものの、全て防がれてしまった。
一旦距離をとり、息を整える。
「固有スキルは使わないのか?」
試験官の男性が聞いた。
「そうですね。では、少しだけ」
僕は答えると、〈破壊〉を使い、彼の足元の地面を弾けさせた。
「──ッ!」
試験官が、慌てて両手で顔を庇う。
その一瞬の隙に距離を詰めて肉薄した僕は、手にした剣を振るい、彼の首に届く寸前で止めた。
「──まいった。私の負けだ」
試験官の男性が降参の意思を示し、模擬戦は僕の勝利で終わった。
「ありがとうございました」
一礼して、列に戻る。
「デュアル、手を抜きすぎじゃない? デュアルが本気を出せば、最初の一撃で決められたはずでしょ?」
とリノア姉さん。
「僕は程々でいいよ。あまり目立つことはしたくない」
僕は答えてから、気になる人物の方ヘと視線を向けた。
──シリウス・ディースターヴェーク。
彼は、試験官の男性と相対しているけれど、その手にはなにも持っていない。
あれを使うつもりだな。
その予想通り、彼は、片手を前に差し出すと、
「〈地獄の鞭〉」
唱えた。
その手に、五メートル程はあるだろう長大な燃え盛る炎の棒が現れる。
その棒が振るわれると、鞭のようにしなり、試験官を襲った。
「ひいっ!」
試験官が、慌てて身を動かして、その一撃を躱す。
地面に激突した炎の鞭が、土を溶かし、しゅうしゅうと音を鳴らす。
シリウスは、炎の鞭を引き戻すと、もう一度振るおうとしたけれど、
「ま、待て! 降参だ! だからもうそいつをしまってくれ!」
試験官の男性が、言葉をつっかえさせながら、慌てて制止を呼びかけた。
「他愛無い」
シリウスが見下すように。
昨日の魔法に続き、彼に圧倒された実技となった。




