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第31話 受験二日目 実技試験 魔法


 受験二日目。


 昨日と同じように、朝から王立学園へと赴き、試験会場となる訓練場に入った。


 間もなく、受験番号ごとに整列した僕達の前に、試験官を務める男性教師が立つ。試験の概要を説明するらしい。

 

 実技試験は、得意な魔法、得意な武芸、固有スキルの三つに分けて行われる。


 その説明が終わり、受験番号が早い順に、先ずは魔法の実技から始められた。


 その内容は、自分の持てる最大の攻撃魔法を使って、遠くにある的を狙い撃つというもの。


「皆、使っているのは初級魔法ばかりね」


 番号が前後している為、隣に並んで順番がくるのを待っているリノア姉さんが言った。


「そうだね。それが普通なんじゃないかな」


 僕がそう答えた時、違う列に並んでいる受験者達から、どよめきが起こった。


「凄え、中級の光魔法〈迸る光刃(ラーミナ・ルーキス)〉だぜ!」

「〈八芒星(ステラ・オクタングラ)〉の一角、クラウベルク家のご令嬢か!」

「〈白金薔薇の歌姫ディーヴァ・ローザ・プラティーナ〉は、魔法も卓越しているな!」


 そちらに視線を向けると、輝くプラチナブロンドの髪が目に映った。


 サリア嬢だ。


 狙われた的は、その光の刃によって切り裂かれてしまっている。


 彼女は、その結果を誇るでもなく、澄まし顔で颯爽と次の受験者に場所を譲って列に戻っていった。


「流石ね」


 リノア姉さんが称賛する。


「そうだね。僕達も負けてはいられないな。あ、レティシアの順番が回ってきたみたいだよ」


 別の列で前に出たレティシアが、今まさに片手を前に突き出して、魔法を唱えようとしていた。


「〈嵐の怒り(テンペスタス)〉」


 瞬間、暴虐とも呼べるような激しく強い風が吹き荒れた。

 結果、的は切り刻まれ、宙に巻き上げられてしまう事に。

 十分な距離がとられている為、受験者達に被害は出ていないものの、少々やり過ぎな感はある。


「こっちのハーフエルフは、中級の風魔法だぜ!」

「まるで嵐に襲われたみたいな威力ね!」

「あんなのと比べられたら、俺のしょぼい初級魔法なんて霞んじまうよ⋯⋯」


 受験者達は、セリア嬢に続いて現れた自分達よりも高度な魔法を操るレティシアに、羨望の眼差しを送っているようだ。


「レティシアもやるわね。続けて、ニベアの番みたいよ」


 とリノア姉さん。


 僕もそちらへと目をやると、ニベアが、地面に手をついていた。


「〈地の柱(コルナムエ・テラエ)〉」


 同時に、前方の地面が柱状に隆起し、その尖った先端が的に命中した。


 けれど、セリア嬢やレティシアのように、破壊したりは出来ない。


 初級魔法ならあんなものだろう。

 ニベアは死神の鎌ファルクス・モルティスでの斬り合いに特化していて、魔法はそれ程得意じゃないからね。


 受験者達も、騒ぎ立てる事なく並程度だと捉えているみたいだ。


「さて、次は私の番ね。ニベアと一緒で、魔法はあまり得意じゃないけど、やるだけやってみるわ」


 やがてそのリノア姉さんの番になり、


「〈炎の槍(イグニス・グラァンス)〉!」


 頭上に掲げた掌の上に、炎の槍を三本生み出し、腕を振り下ろして撃ち出した。


 三本の炎槍は、見事全弾的に命中し、爆音とともに弾けて盛大に火花を散らした。


 あの決闘の際に、ラザールが使用したのと同じ火魔法。

 初級だけれど、三本も炎槍を生み出せれば、評価は高い筈だ。


「まあ、私にはあれが限界ね」


 リノア姉さんは、自分なりに成果を発揮できた感を滲ませながらそう言うと、


「デュアルが、試験官を驚かせるのを見て楽しませてもらうわ」

「あはは。ちゃんと命中させられるか不安もあるんだけどね」


 僕がそう笑いつつ返すと、


「次、デュアル・フォン・フォルマ。早くしなさい」


 試験官に急かされて、僕は慌てて、「はい」と答えて前に出た。


「では、いきます」


 僕は掛け声を発すると、片手を前に突き出して、親指と人差し指を立て、他の指を曲げて銃の形を作り、


「〈魔弾グランディス・ディアボリ〉」


 唱えた。


 ほぼ同時に、


 ──ボスッ!


 前方に立つ的の方から、音が鳴った。


「ん⋯⋯? 君、今何かしたのかね?」


 試験官の男性教師が、怪訝に眉を顰めながら尋ねる。


「ええ。攻撃魔法を放ちました。結果は、的をよく調べてもらえば分かると思います」


 僕にそう言われて、試験官が、釈然としないようにしつつ的へと向かう。


 そうして暫く──。


 的を間近でじっと見つめていた試験官が、驚愕に目を剥いたかと思うと、足早にこちらに向かってきた。


「君、一体どんな攻撃魔法を使ったというんだ! 的を貫通する穴が空いていたぞ!」


 と興奮を露わにして詰め寄る。


「魔力を圧縮して凝固させて作った弾を、高速で打ち出したんですよ」


 僕は無属性にしか適正がない為、以前は攻撃魔法を使えなかった。

 けれど、色々と試行錯誤して、練り上げた魔力を固めて撃ち出す、〈魔弾グランディス・ディアボリ〉という技術を開発した。

 オリジナルの技だけれど、魔力を飛ばしているのだから、広義には攻撃魔法に含まれるだろう。


「なんだって⋯⋯!? そんな技術聞いた事もない!」

「ええ、そうでしょうね。僕のオリジナル魔法ですから」

「オリジナル⋯⋯! 君、ぜひ私にその魔法を研究させてくれ!」

「えっと⋯⋯」


 意気込んで申し出られてしまい、戸惑った。

 まだ合格を伝えられてさえいないのに、気が早いものだ。

 魔法マニアな教師なのかもしれない。


 僕が答えあぐねていると、周りの受験者達がざわめき始めた。


 なんだろうと、視線を横に向けると、そこから離れた列の前方で、広げた掌を上に向けて掲げる少年──その先の宙空に、巨大な炎の球体が形成されていた。

 まるで小さな太陽というように、至るところから炎を噴き上げている。


「〈太陽の矢(サギッタ・ソリス)〉」


 その少年が呪文を唱えて、掲げていた腕をゆっくりと振り下ろす。


 同時に、宙空に浮かんでいた巨大な炎の球体が、滑空し、前方の的ヘと直撃。


 ──ズガァアアアアン!


 地を揺るがすような轟音とともに爆発を起こし、炎の柱を噴き上げさせた。


 程なく、炎の柱が消えた跡には、消し炭にされた的だったものの残骸が。


 その凄まじい威力の魔法──それも上級のものを見せられた受験者達は、皆言葉を失ったようにして固まっている。


 ──シリウス・ディースターヴェーク。


 『八芒星(ステラ・オクタングラ)』の一角である、火を司るディースターヴェーク家の嫡男だ。

 ゲームでも強力な能力を有したキャラとして登場していたけれど、この世界でもそれは変わらないらしい。


 皆がそのシリウスに畏怖を抱きつつ、魔法の試験は終わりを迎えた。




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