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第27話 再びの王都


 僕の挙げた功績が認められて、男爵に叙爵されてから、約四ヶ月の月日が流れた。


 今は、ノワ・アエタース歴986年。


 僕はというと、王立学園の受験のために、皆とともに、再び王都へと向かっているところだ。


 時折、ちらほらと舞う雪を見て、そこに清らかさや純粋さを感じ、「美しいね」と常套句を口にしつつ、馬車に揺られる。


 そのメンバーは、僕、リノア姉さん、レティシア、ニベアの四人。

 今回は父さんは同行していない。

 もう立派に成長したんだから、経験を積む為にも、君達だけで遠出してみなさい、との事。

 母さんとネビュラも邸でお留守番だ。

 御者は前回と同じく厩番のティオ。


 レティシアとニベアも僕達と一緒に学園に通いたいと言い出した時は、どうしたものかと迷いはしたよ。

 彼女達は、僕の家族だけど、一応専属のメイドでもあるからね。

 でも、使用人を連れて学園に通う貴族もいると聞くし、何より彼女達の意思を尊重したいという思いもある。

 なので、その願いを承諾する事にしたんだ。

 学費や生活費については、僕のポケットマネーから出してあげる事に。

 二人は、借金でいいとその申し出を断ろうとした。

 けれど、僕は委託販売がこれ以上ない程に好調なおかげで、懐は潤いまくってる。

 だから、遠慮要らないと半ば強制的に受け入れさせたんだ。


 とまあ、そんなこんながあって、皆で仲良く受験に向かっていという訳だ。


 昨年の冬に、板バネを作って(それもニコルさんに、商品の一つとして加えてもらった)馬車を改造したので、以前にきた時とは乗り心地が雲泥の差ってやつだ。快適、快適。


「もうすぐ到着ね」


 対面に座るリノア姉さんが言った。


「私、王都にいくのは初めてだから、ちょっとワクワクしているわ」

「とても賑やかなところだよ。リノア姉さん、そういうの好きでしょ?」


 と胸を踊らせるリノア姉さんに。


「ええ。学園にも色んな生徒がいて、毎日が楽しそうだわ」

「辺境では、邸にいる以外は、森で狩りをするくらいしかやる事がありませんからね」


 僕の隣に座るレティシアが、相槌を打つ。


「そうそう。それに比べて、王都には、地下や近郊にダンジョンがあるからね。ダンジョンでは、モンスターのドロップアイテムや宝箱が手に入るし、森での狩りとはひと味もふた味も違うはずよ」


 と高揚感を滲ませつつ。


「ニベアは? 王都では何をしたい?」


 僕が水を向けると、リノア姉さんの隣で窓外の景色を眺めていたニベアが、こちらに顔を向け、


「私は、お花屋さんに、いきたい」


 花を愛でる彼女らしい答えを返した。


「王都には、大きなお店が沢山あるからね。きっとニベアが気に入るところが見つかる筈だよ」

「うん。楽しみ」

「でも、そうする為には、受験に合格しないといけないのよね。自信がない訳じゃないけど、やっぱり不安も感じているわ」


 とややその表情を翳らせながら。


「リノア姉さんなら大丈夫だよ。学力も申し分ないし、冒険者ランクはA級で、剣術と魔法も、今すぐに騎士団入りしても通用するくらいに卓越してるんだからさ」


 僕は勇気づけるように励ました。


「そうですよ。きっと私達全員が、上位で──ともすれば、Sランクでの合格になるでしょう」


 レティシアが、確信したように言う。


 王立学園では、そこに通う生徒達は、皆、序列システムによってランクづけされているんだけれど──。

 それについては、無事合格してから、また学園から詳しく伝えられるだろうね。


「序列か⋯⋯確か父さんは、Sランクで卒業したって言ってたわね。おかげで王立騎士団入りも楽だったとか。私もそんな風になりたいわ」

「皆Sランクに振り分けられれば、クラスも一緒になるからね。そうなればいいね」

「デュアル様とともに同じ教室で学べるなど、これ以上ない喜びです」

「私は、デュアルと一緒なら、どのクラスでもいい」


 そんな風に、待ち受ける学園生活への期待を語りつつ、時にトランプで遊んだりしながら、約八日間の旅を終えて王都に到着した。



   §


 検問所も引き止められる事なく通過し、無事王都入り。


「うわあっ! 凄いわね! 背の高い立派な建物があんなに並んでるわ!」


 キャビンの窓外に望む、辺境にあるイムルとはまるで違う王都の街並みを見ながら、リノア姉さんが感嘆の声を上げた。


「街をゆく人達の中には、エルフもいるようですね。私は混血ですので、彼らとはあまり関わらない方がいいでしょう」


 とレティシア。ハーフエルフは、時に人間とエルフの双方から差別を受けてしまう事があるからね。

 悲しい事だけど、それが現実だ。

 若者達はそれ程でもないんだけれど、古い考え方をする年配の人達はそういう傾向が強い。


「デュアル、お花屋さんがあった。綺麗」


 そう言って、珍しく微笑みを浮かべているニベアを見ると、ほっこりする。


 そうして、東区の通りを馬車は進み、今回もお世話になる父さんがいきつけにしている宿屋へと向かった。



   §



「それじゃあ、早速王都散策にいきましょう!」


 チェックインした宿屋の部屋に着くやいなや、リノア姉さんが言った。


 余裕を持って出発したので、王立学園の受験日は明後日だ。

 今は正午になったばかりだから、それまで、今日の午後と明日一杯は自由に行動出来る。

 本当は、試験に向けて、参考書なんかで最後の追い込みをかけるべきなんだろうけど⋯⋯。

 まあ、勉強を見てくれていた家令のアンセルさんのお墨つきももらえているし、固い事は言わなくてもいいだろう。

 僕としても、王都を見て回りたいしね。

 前回の叙爵式の時は、あまり時間がとれなかったから。


 という訳で、意気込むリノア姉さんの後について、僕達は王都の街へと繰り出した。




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