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第19話 旅は道連れ


「どこも怪我はありませんか?」


 脅威が去り、状況が落ち着いたところで、二人の元に寄り優しい口調で声をかけた。

 ともに寄り添いながら成り行きを見守っていたルーシィという少女とセイブルという老人にだ。


「は、はい! 危ないところを助けていただき、ありがとうございます!」

「感謝するよ。君達いがいなければ、ベアトリスも私達も無事ではいられなかった」

「誠にかたじけない。私が不甲斐ないばかりに、お嬢様達を危険目に遭わせてしまった」

「運良く通りがかる事が出来て良かったです。僕の名前はデュアル・フォン・アイシュリング。こちらは、父のレオン・フォン・アイシュリングで伯爵家の当主。もう一人は、我が家で僕の専属メイドをしているレティシア・フェアウェザー」

「レオンです。よろしく」

「レティシアと申します」


 僕に紹介されて、父さんとレティシアがそれぞれ名乗る。


「ご丁寧に挨拶していただき恐縮です。私はルーシィ・フロストレインといいます。こちらにいるのは、セイブル・フロストレイン。私のお祖父ちゃんで、男爵家の当主です」

「紹介に預かったセイブルだ。アイシュリング家というと、確か、北方の辺境を領地としている中立派の貴族だったかな」


 セイブルさんが聞き質す。


「はい。フロストレイン家は、国王派ですよね」


 父さんが答えた。


 この国の貴族は、それぞれ、国王派、貴族派、そして中立派の三つある派閥のどれかに属している。


 国王派というのは、王権を強め、貴族の領地や軍事力を中央に集中させようとする派閥。

 新興貴族や実力主義の軍人、官僚などが主に含まれている。

 目的は、安定し統治と強力な国家の形成ってところ。


 貴族派というのは、従来の爵位や領地を保持したい派閥。

 歴史ある公・侯・伯爵家が中心になって構成されている。

 目的は、貴族の自治維持や王権の制限など。


 そして、中立派というのは、どちらの派閥にも属さず、領地の安定を最優先する派閥。

 争いは国家の不利益になると考える中庸の者達で、うちのアイシュリング家もこの派閥に属している。

 目的は、戦争回避、経済的実利、後、日和見だね。


「ああ。派閥は違うが、こうして可愛い孫と忠誠を尽くしてくれる従者とともに命を救ってもらった恩がある。互いの領地もさほど離れていないし、これからは親交を深めたいものだな」

「そうですね。フロストレイン家の領地は、葡萄の名産地で、美味しいワインが作られていますし、私もよく飲んでいるんですよ」

「それなら、今回のお礼に、今度年代物のワインを纏めて贈らせてもらおうか。私の秘蔵だよ」


 父さんとセイブルさんがそんな風に打ち解けた会話をする傍ら。

 僕とレティシア、ルーシィとベアトリスさんも、会話に花を咲かせていた。


「じゃあ、石鹸やリンスを作ったのは、デュアル君なんだね」


 ルーシィは僕と同い年の十四歳という事で、君づけで呼ばれる事になった。


「そう。愛用してもらえてるみたいだね」


 制作者として、ユーザーの喜びの声が聞けるってのはいいね。


「うん。一応うちは男爵家だけど、貴族向けのはお高めだから、私は一般向けのを購入しているの」

「チェスを作ったのも君なんだろう? 詰め所にいる時に、よく同僚とあれで勝負しているんだよ。それなりの腕前だと自負している」


 ベアトリスさんが得意げに言う。


「そうなんですね。機会があれば、ぜひ一度手合わせさせてください」

「デュアル様は天才ですから、そう簡単には勝たせてはもらえませんよ。私も今のところ、56戦して全敗しています」


 レティシアは悔しがるでもなく、むしろ誇らしげだ。


「ところで、ルーシィ達は、どこへ向かってたの?」

「王都だよ。第三王女の誕生祭で開かれる晩餐会に招待されているの」

「やっぱりそうだったんだね。実は僕達もなんだ。とは言っても、僕の場合は、その前に王宮で国王に謁見しないといけないんだけどね」

「国王に謁見? 凄いね。もしかして、色んな商品を開発した功績で?」


 ルーシィが興味深げに聞く。


「そうなんだよ。おかげで、この若さで叙爵される事になってしまってね」

「叙爵するの? 爵位は?」


 驚いたようにしつつ、問う。


「それは聞いていないけど、多分最下級の騎士爵ってところじゃないかな。幾つかの功績を挙げたけれど、このとおりまだ君と同じ十四歳の子供でしかないからね。領地を与えられても、上手く経営していけるとも思えないし」

「そうかなあ。デュアル君なら、領地経営も難なく熟しそうだけど」


 ルーシィにはこの短時間でかなり高い評価を得てしまっみたいだ。


「過分な評価だね」


 そこで僕は、ところで、と話題を変えると、


「君達の乗る馬車は壊れてしまっているみたいだし、よければ僕達の馬車に乗っていかない? 行き先が一緒なら不都合はないだろう?」

「いいの?」

「うん。そっちの馬車は、僕の空間収納に入れておいて、王都で修理してもらえばいいよ」

「凄い! そんな容量の大きい空間収納まで使えるんだ!」


 両手を合わせて感嘆する。


「まあね」


 僕は照れ隠しに頬を指で掻きながら頷いた。


 こうして、ルーシィ達は、僕達の馬車に同乗して王都までいくことになった。


「このトランプっていうカードゲーム? 凄く面白いね!」

「ぐぬぬ。レティシア嬢、その一枚だけ浮かしているのは、ババを引かせる為の罠なのか?」

「デュアル君は、次から次へと新しい発明をして楽しませてくれるな」


 ルーシィ、ベアトリスさん、セイブルさんがトランプで遊びながら言う。


 さらに賑やかになったキャビンでは、王都に辿り着くまで、笑いが絶える事はなかった。




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