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第17話 王宮からの使者


 まるで御伽噺(フェアリーテイル)の如く夢のように過ぎていった一年を経て、僕は十四歳になった。


 今はノワ・アエタース歴985年。


 多くの鍛錬を積んで強化された今のステータスを明かすとしようか。



 【名前】デュアル・フォン・アイシュリング

 【種族】人

 【性別】男性

 【年齢】14歳

 【状態】正常

 【LV】79

 【HP】652

 【MP】713

 【ATK】178

 【DEF】154

 【INT】225

 【AGL】199

 【能力】破壊と創造 魔:無

 【加護】シヴァの加護



 冒険者ランクは、A級。

 推しも押されもしない上級冒険者の中でも上澄みな選ばれた存在だ。


 リノア姉さんも、揃ってA級に。

 今やイムルで僕達姉弟の名前を知らない冒険者はいない。


 レティシアはC級で、僕達にすすめられて狩りに参加するようになったニベアはE級。


 そう言えば、ニベアのステータスをまだ公開していなかったから、ここで。



 【名前】ニベア

 【種族】人造人間(ホムンクルス)

 【性別】女

 【年齢】17歳

 【状態】正常

 【LV】62

 【HP】513

 【MP】456

 【ATK】147

 【DEF】135

 【INT】127

 【AGL】152

 【能力】断絶 魔:土 無

 【称号】転移者

 


 こんな感じ。

 レベルはリノア姉さんより高い。

 魔法適正に僕と同じ無属性があるね。

 彼女はその無属性の空間収納に、武器としている赤い刃の巨大な鎌──死神の鎌ファルクス・モルティスを入れている。


 それと、最近は暇つぶしなのか、たまにネビュラも狩りについてくるようになった。

 以前よりも多才になった竜言語魔法でモンスターを翻弄しているよ。


 父さんに許しを得て、森の最奥に踏み込めるようにもなり、A級のモンスターとも戦って、得難い経験を積む事が出来ている。


 そして、現代知識を使った数々の商品についてだけれど、その事で、ある転機が訪れるんだけど、それは──。



   §



 それは、午前中に、僕とリノア姉さん、レティシアとニベアが、いつものように邸の庭園で、父さんに剣の稽古をつけてもらっていた時だった。


 邸の門の前に、一台の馬車が停まり、その中から、一人の身なりの整った男性が降りてきた。

 年齢は三十代後半といったところ。

 短めの髪を、ラードで後ろに撫でつけている。


 ラードを使う人達って多いんだけど、臭いは強烈だし、頭皮で雑菌が繁殖して、かゆみや炎症、フケの原因になるし、髪が脂ギタギタ状態になる。

 それに、衣服や枕なんかにそれが移ったりもするんだよね。

 その上、洗っても中々落ちないから、頭皮環境を悪化させるし、デメリットばかりだ。


 その内、現代知識で整髪料も作った方がよさそうだな。


「お客さんみたいだね。丁度いい。ここらへんで休憩にしようか」


 父さんが言い、打ち合いをしていた僕とリノア姉さんは、構えていた剣を下ろした。

 それを見学していたレティシアが、近づいてきて冷えた果実水を僕達に渡す。

 ニベアは地面に腰を下ろしたまま、自分の周りをひらひらと飛ぶ蝶と戯れているみたいだ。


「貴方が伯爵家当主のレオン・フォン・アイシュリング殿ですか?」


 近づいてきた身なりの整った男性が、父さんに尋ねた。


「はい。うちにどんなご要件でしょうか?」


 父さんが頷いて質問を返す。


「私は、王宮からの使者です。ご子息のデュアル・フォン・アイシュリング殿はおられますか?」

「デュアルなら、僕ですけど」


 僕は呼ばれた事で、名乗り出た。


(王宮からの使者だって? 特に思い当たる事はないけれど⋯⋯まさか──)


「貴方がそうでしたか。今回デュアル殿が叙爵される事が決まりましたので、その事を伝えにきた次第です」

「デュアルが叙爵ですって!?」


 その言葉を聞いて、隣に立っていたリノア姉さんが、真っ先に驚きの声を上げた。

 父さんとレティシアも驚いたようにしている。

 ニベアだけは、まだ蝶と遊んでいるみたいだけど。


 叙爵か。

 考えなかった訳じゃないけど、こんなに早いタイミングでとは思わなかった。


「はい。石鹸やリンス、化粧品、チェスと言った非常に有用な商品の開発と普及。そして、ここ最近新たに開発したパルプ紙と活版印刷機による、活版印刷の普及。加えて、昨年の冬に、この地方一帯の治安を乱していた盗賊団の壊滅。以上、彼がこれまでに上げた数々の功績により、デュアル殿に爵位を授与する事が決定いたしました」


 使者の男性が、事務的な口調で淡々と述べた。


「それで、授けられる爵位は?」


 父さんが聞く。


「それは、叙爵式の際に、国王自らが伝えられます」

「そうですか。今の段階では分からないのですね」

「王宮には、来月の十二日朝九時までに訪れるようにしてください。その日には、王都で第三王女の生誕祭が行われ、夜に王宮で盛大な晩餐会が開かれますので、それにも出席して欲しいとの事でした。こちらがその招待状になります。貴方の身元を証明するものになりますので、検問所や王城へ立ち入る際に提示してください」

「分かりました」


 その王権の象徴である竜の紋章が刻印された封蝋で閉じられた厚手の羊皮紙を受けとりながら、僕が頷く。


「それと、新たに家を起こすのであれば、叙爵式の時までに家名の方を考えておいてください。では、私はこれで」


 それだけ告げると、使者の男性は、踵を返して再び馬車に乗って去っていった。



   §



「デュアル君が叙爵ですか。その才能を考えれば、いつかそういう日がくるとは思っていましたけど、実際にそうなってみると、中々実感が湧かないものですね」


 と、母さんが微笑みを湛えながら。


 ここはリビングで、いつものメンバーが揃っている。


「最初に聞いた時は驚いたけど、これまでの実績を考えれば当然ね。私も姉として鼻が高いわ」

「流石はデュアル様です。アイシュリング家の至高」

「デュアル凄い。私がお祝いに森から花を摘んできてあげる」

「主ー、お貴族様になるのー?」


 リノア姉さん、レティシア、ニベア、ネビュラがそれぞれ口にした言葉だ。


「デュアル君は、叙爵されれば、貴族家の当主という事になるね。そうなれば、アイシュリング家の分家という形になるだろう」


 父さんが言う。


「父さん、その事なんですけど、新しい家名を賜ってもいいですか?」


 僕は希望を告げた。

 もし叙爵されるような事になれば──と以前からひっそり温めていた家名があるんだ。


「それはかまわないけど、何か候補があるのかい?」

「はい。"フォルマ"です」

「フォルマか。『美しさ』を表す言葉だね」

「デュアル君に相応しい名前ですね」

「格好いいじゃない。イカしてるわよ」

「流石はデュアル様です。素晴らしい響きの家名」

「デュアル・フォン・フォルマ。うん。覚えやすくていい」

「主は綺麗なものに目がないからねー。ぴったりだと思うよ」


 皆、その家名に好感を持ったみたいだ。


 ちなみに、叙爵についてなんだけど、一度は、この年で爵位を持つなんて烏滸がましいと、断ろうかとも考えはしたんだ。


 けれど、王族の不興を買いたくはないし、これは逆に捉えればいい。

 美しい生き方をする為のこれ以上ない後ろ盾を得るまたとない機会だと。

 そう考えを改めて、承諾する事にした次第だ。





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