第13話 ヴァイオリンのお披露目 化粧品
レティシアという新しい家族が増えてから、玩具箱をひっくり返したように賑やかな一年が経ち、僕は十三歳になった。
今は、ノワ・アエタース暦984年。
日々の訓練と狩りのおかげで、ステータスも大幅にアップ。
その値はご覧の通り。
【名前】デュアル・フォン・アイシュリング
【種族】人間
【性別】男性
【年齢】13歳
【状態】正常
【LV】58
【HP】428
【MP】516
【ATK】129
【DEF】107
【INT】145
【AGL】136
【能力】破壊と創造
【従魔】ネビュラ
【称号】破壊と創造の神の申し子
【加護】シヴァの加護
冒険者ランクは、B級。
上級冒険者の仲間入りを果たしている。
リノア姉さんも同じくB級だ。
一年前から狩りに参加するようになったハーフエルフのレティシアについては、まだE級止まり。
彼女の魔法は強力なんだけど、実績が追いついていない形だね。
ニコルさんに頼んでいる委託販売は、最近やっとで落ち着きを見せてきた。
チェスはある程度行き渡ったらしく、貴族向けの高級品も、依頼が月に十数個単位にまで減少した。
なので、その制作に追われるなんて事もなくなり、余裕を持って取り組んでいる。
石鹸とリンスに関しては、消耗品なので売れ行きはあまり変わらない。
けれど、ニコルさんが製造工場を造ってくれたので、作るペースは飛躍的に上がった。
僕は貴族向けの凝った容器の制作に専念するだけでいい事に。
後、ニコルさんに頼んでいた米、味噌、醤油が、念願叶ってようやく手に入ったんだ。
僕はすぐさま、醤油味の唐揚げや豚肉味噌漬け丼などを家族に振る舞い、好評を得たよ。
という訳で、相変わらず全て順調に進んでいる。
後は、シナリオ通りであれば、今年の冬に起きると予想される領主邸への盗賊団の襲撃──。
それを防ぎきれるかどうかにかかっている。
かなりのレベルアップは果たせたけれど、人の命をなんとも思っちゃいないやつらだ。
どんな卑劣な手を使ってくるか分からない以上、決して油断は出来ない。
その結果次第で、僕と愛する家族の未来が決まるのだから──。
§
「それじゃあ、デュアルの腕前を披露してもらいましょうか」
「デュアル君は多才ですから、きっとヴァイオリンも上手に弾いてくれますよ」
「楽しみだなあ。音楽なんて、舞踏会や祭りの際に奏でられるくらいで、普段はそうそう聴く事なんて出来ないからね」
「デュアル様、期待してます」
リノア姉さん、母さん、父さん、レティシアから期待の言葉を向けられた。
リビングには、他の使用人達も全員揃っている。
そのアイシュリング家一同の前に立ち、僕は愛器であるヴァイオリンを構えた。
「では、聴いてください。僕のオリジナル曲です」
そう告げ、弓を動かし、弦を振動させる。
奏でるのは、エルガーの『愛の挨拶』。
美しくロマンティックな旋律。
柔らかで精緻な構成。
豊かな色彩を持つ甘美なその曲を、聴衆となった皆は、時間を忘れて聴き入っているようだった。
やがて、計三分弱の演奏を終えると、皆から盛大な拍手とともに、称賛の言葉を浴びせられた。
「凄い! 演奏も上手かったし、曲も凄くよかったわ!」
「聴いていて温かい気持ちになりました。こんな曲を作るなんて、デュアル君は多才ですね」
「これは、宮廷楽士もかくやという腕前だね。参ったよ」
「流石はデュアル様です。尊敬します」
本当はオリジナルじゃないんだけど、まさか異世界で作られたクラシックだなんて言う訳にはいかないからね。
このように、僕の演奏者としての小さなコンサートでのデビューは、華々しい成功を収める事になった。
§
ヴァイオリンの腕を披露した後は、現代知識の活用も忘れない。
次に作るのは、化粧水と乳液。
ニコルさんに頼んでいた材料が、やっとの事で全部揃ったのだ。
実は僕は前世の大学時代は、薬学部に在籍していたのだ。
だから、そこで学び、作る為のレシピは全て頭の中に入っている。
化粧水作りに必要なのは、精製水とグリセリン。
作り方はとても簡単で、アルコールで消毒したボトルに、材料を入れてよく振って混ぜるだけ。
なんとこれだけで、手作りの化粧水が出来上がるのだ。
それと、乾燥が気になるなら、尿素を加えて保湿力をアップさせる事も出来る。
また、肌をパッと明るく見せたいなら、クエン酸を加えて、拭き取り化粧水を作ってもいい。
ついでに、自分好みの香りを楽しみたいなら、精油をプラスしてみるのもおすすめだ。
ただ、化粧水だけのスキンケアは、肌荒れの原因になる。
そこで、乳液の出番だ。
今回材料として用意したのは、アプリコットカーネルオイルと乳化ワックス、精製水だ。
作り方は、先ずオイルに乳化ワックスを入れて、半透明の灰色になるまで混ぜる。
それを精製水に入れて混ぜ合わせると完成。
お好みで精製水に植物エキスなどを加えてアレンジしてもOKだ。
そうやって完成した化粧水と乳液は、アイシュリング家の女性陣達に、使い方をレクチャーして試用してもらった。
「見て! 肌が潤ってプルプルなの!」
「肌に優しいですね。シミやそばかすの予防とケアも出来るそうですし、もう手放せません」
「流石はデュアル様です。天才としか言いようがありません」
「乾燥肌に悩まされていたのが、嘘のようです」
「デュアル様、ありがとうございます! これで若さを保って、女子力アップです!」
リノア姉さん、母さん、レティシア、ミアさん、クロエが、揃って喜びの声を上げてくれた。
好感触だ。
これなら、次にニコルさんがきた時に、新しい委託商品として紹介出来そうだな。
予想通りの展開に、思わず笑いが零れた。




