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第10話 ポーション作り


 ここ最近で、また新たに作り始めたものがある。


 ただ今回のそれは、現代知識を利用したものじゃない。


 地球にはないけれど、このゲーム世界には古くからある回復薬のポーションだ。


 けれど、ポーションと言っても、錬金術師(アルキミスタ)が普通に作るものとは少し違う。

 僕の場合は、固有スキルの〈破壊と創造〉の力を利用したものだ。

 〈破壊〉で素材の不純物を取り除き、〈創造〉で薬草などの効能を活性化させて作っている為、効果がすこぶる高い。


 ちなみにだけど、〈創造〉の力で物質を生み出すには、まだ熟練度が足りていない。

 その為、制作に必要な薬草などの素材は、森で狩りをするついでに採取してきている。

 レクペラーレ草っていうやつで、ギルドの常設依頼で扱われている。


 そうして、計三十本のまとまったポーションが完成。

 それを買い取ってもらう為に、冒険者ギルドまで足を運んだ。



「デュアル君、いらっしゃい。今日はリノアちゃんは一緒じゃないのね」


 受付けカウンターに座るユナさんが、その前に立った僕を見てそう声をかけてきた。


「ええ。今日は、ポーションを買い取ってもらいにきました」

「ポーション? それ、もしかして自分で作ったの?」


 ユナさんが驚いたように尋ねる。


「はい。僕の固有スキルを使って作りました」


 ポーション作りにおいては、〈破壊と創造〉を使ってはいる。

 とは言っても、威力を抑えても十分に効果が得られる為、隠し立てする必要はない。


「デュアル君の固有スキルって言ったら、〈破壊と創造〉だったっけ。それじゃあ、効果も普通のものとは違うのかしら」

「ええ。通常出回っているものよりも、効果は高いと思います」

「それは助かるわね。今、ポーションの需要が高くて、在庫が心許ない状態なのよ」



 僕とユナさんがそんな会話交わしていると、それを遮るように、入口のドアが勢いよく開かれる音がした。


「怪我人だ! このままだと命に関わる! 金なら借金してでも払うから、ハイポーションを出してくれ!」


 そう男性が叫ぶ声が聞こえてくる。


 続いて、担架に乗せられて一人の二十代前半程の女性が運ばれてきた。

 なめし革で作られた軽装の革鎧に身を包んだ冒険者風の格好をしている。

 その鎧で覆われていない部分の中に着ているシャツが切り裂かれた腹部──。

 そこには、大きな裂傷が走っていて、今もどくどくと鮮やかな赤い血が流れ出ていた。


 モンスターにやられたのだろう。

 痛々しい傷だ。

 これは、一刻の猶予もままならない状態だろう。

 僕の〈創造〉の力を用いれば、すぐに治癒しててあげる事が出来るんだけど、衆目のあるこの場では、それは難しい。

 だとすれば──。



「おい! 聞こえなかったのか! 早くハイポーションを彼女に!」


 その女性と同年代くらいと思われるこちらも冒険者風の若い男性が、憔悴を露わにして急かす。


「非常に申し上げ難いのですが、ハイポーションは今在庫がない状態でして⋯⋯」


 カウンターを出て対応に当たった受付けの若い女性が、申し訳なさそうに告げる。


「なんだって!?」


 その言葉を聞いて、愕然とする若い男性。



「ユナさん、僕の作ったポーションを使ってください」


 その様子を見ていた僕は、そう提案した。


「その気持ちは嬉しいけど、いくら普通のものよりも効果が高いと言っても、ただのポーションじゃあの怪我は⋯⋯」


 ユナさんが口ごもりながら言う。


「大丈夫です。僕を信じて、試しに使ってみてください」


 まだミミズなどの虫でしか試せていないけれど、確実に通常のポーションよりは効果は高い筈だ。


「分かったわ。デュアル君がそこまで言うなら、ハイポーションが届くまでの時間くらいは稼げるかもしれないわね」


 意を決して頷いたユナさんに、ショルダーバッグに収めていたガラス製の小瓶に入れられたポーションを一本取り出して渡した。


 ユナさんはそれを手にカウンターを出ると、絶望に嘆く若い男性の傍に寄り、


「今、そこにいる彼からポーションの提供がありました。ハイポーションではありませんが、効果が通常のものよりも高く作られているそうですので、試しに使ってみてください」

「ハイポーションじゃないのか⋯⋯でも、何もしないよりはましか⋯⋯」


 不満を呟きながらも、藁にも縋る思いでいるらしい。

 ユナさんの差し出したポーションを素直に受け取った。


 蓋のコルクを抜き、中にはいっている半透明な青い液体を、苦しみに喘いでいる若い女性の傷口に振りかける。


 すると、痛々しく開いていた腹部の傷口が、見る見る内に塞がっていく。


 やがて傷があったのが分からないくらいに綺麗な肌に戻っていた。


 その様子を固唾を呑んで見守っていた冒険者達の間でどよめきが起きる。


「何だあの効き目!? 本当にただのポーションかよ!」

「あの変わった髪と目の色をした坊主が作ったってさっき聞こえたぜ」

「奇跡だ⋯⋯」

「俺、販売されたら並んででも買うわ」


 傷が癒えて苦しみから解放された若い冒険者風の女性が、まだ覚醒しきっていない様子で目を瞬かせながら、


「ここは⋯⋯?」

「マヤ!」


 若い冒険者風の男性が、彼女の手をとりながら呼びかけた。

 その顔は、先程までの絶望に染められたものとは真逆の、喜色に溢れたものに変わっている。


「そっか⋯⋯私、モンスターにやられて

⋯⋯」

「ああ。だけど、そこにいる少年が持っていたポーションのおかげで助かったんだ。本当によかった⋯⋯」


 涙ながらに無事を喜ぶ。


「運がよかったのね。そこの君、助けてくれてありがとう」

「俺からも礼を言わせてくれ。君はマヤの命の恩人だ。おかげで、来月の結婚式を無事に迎える事が出来る」


 二人から、素直な気持ちで感謝を伝えられた。


「僕の作ったポーションで人助けが出来たなら幸いです。お二人が幸せな結婚生活を送れるように祈っています」


 丁寧な態度で答え、祝福する言葉を添えた。


「うん。結婚式にはぜひ君を招待させて欲しいな」

「それがいい。君には言葉だけじゃないお礼もしたいしな」



 こうして、僕の作るポーションは、ハイポーションと比べても遜色ない効果だと冒険者の間で話題に。

 結果、通常の倍以上の値段で買い取ってもらう事が出来た。


 人助けが出来て、お金も手に入って、言う事なしだね。




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