表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/144

第九十七話 「まりえもんの装備」


 警報が鳴り響く中、技術者たちは完全にパニック状態だった。


「こんな公然とした襲撃は初めてだ!」


「どうしよう、どうしよう!」


「逃げ場がない!」


 右往左往する技術者たちを横目に、マリアは冷静だった。むしろ、目が輝いているようにすら見える。


「恩の売り時」


 そう言って、持参していた大きなケースを開け始めた。


「まりえもん!」


 アスカが嬉しそうに叫んだ。


「でた! 何でも出てくる魔法のポケット!」


 マリアは無表情のまま、装備を取り出していく。その顔は自慢げだ。


「なんでもではない、出てくるものだけ出る」


 ケースの中から、次々と宇宙活動用の装備が出てくる。薄型の宇宙服、酸素ボンベ、推進装置、そして各種武器。


「短時間なら、真空でも活動可能」


 マリアが説明を始めた。


「約三十分。それ以上は保証しない」


 キヨシ、京介、アスカ、竹彦が装備を受け取り始めた。

 その時、キヨシがハッと気づいた。


「いや待て!」


 全員が振り返る。


「なんかナチュラルに俺も出ることになってるけど、俺も大概素人なんだが!?」


 確かに、事務所に入って半年。いくつかの事件には関わったが、宇宙での戦闘なんて初めてだ。

 サムライたちの熱い眼差しが、キヨシに突き刺さった。


「頼むぞ、キヨシ」


 キヨタカが力強く言った。


「ハブ家の誇りを見せてくれ」


「日本の未来がかかっている」


 マサヨシも期待の目を向ける。


「お、おい……」


 キヨシは後ずさりしようとしたが、もう逃げ場はなかった。


「くそ! なんでいつもこうなるんだよ!」


 頭を抱えて叫んだ。

 マリアが冷たく言い放った。


「いつまでも新人ヅラは良くない」


「いや、でも……」


 アスカも肩をすくめた。


「まあ、もう戦力やし」


「そんな簡単に……」


 竹彦も頷いた。


「もう半年ですよね? 場数もそれなりにありますし」


 キヨシは目を剥いた。


「いうほどあったかなぁ!?」


 確かに、グレイ種との遭遇、ミレニオンとの戦い、カーカラシカでの騒動。色々あったが、どれも巻き込まれただけだ。自分から戦いに行ったことなんてない。


「グチグチ言わない」


 マリアが宇宙服を投げつけた。


「着て」


「うわっ」


 キヨシは慌てて受け取った。

 仕方なく、装備を身に着け始める。薄型とはいえ、宇宙服は思ったより重い。


「これ、本当に大丈夫なの?」


 山口が心配そうに見守っていた。


「大丈夫」


 マリアが断言した。


「多分」


「多分かよ!」


 キヨシが叫んだが、もう誰も聞いていなかった。

 京介が落ち着いた様子で装備を確認している。


「推進装置の使い方は?」


「背中のボタン。押せば進む」


 マリアの説明は簡潔すぎた。


「それだけ?」


「それだけ」


 アスカは嬉しそうに装備を身に着けていた。


「ウチ、宇宙で戦うの初めてや!」


「楽しそうだな……」


 キヨシは呆れた。

 竹彦は慣れた手つきで装備を整えていた。


「大丈夫ですよ、キヨシさん」


「お前は慣れてるからいいよ」


 四人が円陣を組んだ。


「よっしゃ!」


 アスカが気合を入れた。


「宇宙開発の大詰めで恩を売るんや! これで将来安泰や!」


「そういう問題?」


 キヨシがツッコんだが、無視された。

 外では、バンディットの船がどんどん近づいてくる。鳥頭の海賊たちが、武器を構えているのが見えた。


「エアロックへ」


 マリアが先導する。

 サヤカと二宮、山口は心配そうに見送った。


「無事に帰ってきてね」


「死なないでよ」


「頑張って!」


 ニーナとラムザは、複雑な表情で見ていた。まさか、自分たちを守るために戦ってくれるとは。

 エアロックの前に立つと、キヨシの足が震えた。


「マジで行くの?」


「行く」


 マリアが扉を開けた。

 減圧が始まる。プシューという音と共に、空気が抜けていく。


「やばい、やばい、やばい」


 キヨシが呟き続ける。

 そして、外扉が開いた。

 目の前に、漆黒の宇宙が広がっていた。そして、三隻の海賊船が、月面基地に向かって突進してくる。


「行くで!」


 アスカが最初に飛び出した。

 続いて京介、竹彦。

 キヨシは一瞬躊躇したが、意を決して飛び出した。


「うわあああああ!」


 叫び声は、真空の宇宙には響かなかった。

 人類初の、月面での宇宙戦闘が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ