表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/162

第六十六話 「カーカラシカの五番目の家」



 カーカラシカ国、月面亡命政府の中枢。

 巨大なドーム都市の中央に位置する評議会場に、四大家の代表が集まっていた。ボム家、イシュタル家、ベオルブ家、ナブ家。そして今日は、特別な客人がいた。

 セツナは、母ユキヒメと共に評議会場に入った。金髪に赤い瞳を持つ彼女の姿は、この場において違和感がなかった。むしろ、亡きメルベル・ボムの娘として、当然の権利を持つ者として迎えられた。


「セツナ様、お久しぶりです」


 ベオルブ家の代表が丁寧に頭を下げた。他の家の代表たちも、セツナに対して敬意を示した。

 評議会場の最上段には、ニーナ女帝が座していた。金髪に赤い瞳、セツナとよく似た容貌を持つ彼女は、静かにセツナを見つめていた。


「……セツナ」


 ニーナの声は、かすれていた。塩化爆弾の後遺症で、喉を痛めているのだ。しかし、その一言には絶対的な権威があった。

 セツナは深く頭を下げた。


「ニーナ陛下、お招きいただき光栄です」


 ニーナは小さく頷いた。そして、手で隣の席を示した。セツナに、自分の隣に座るよう促したのだ。

 会場がざわめいた。女帝の隣に座ることを許されるのは、四大家の長だけだ。それが、セツナにも許された。

 ユキヒメは、少し離れた席で静かに座っていた。純粋な日本人である彼女は、この場では異質な存在だったが、キモン家の当主として認められていた。


「……議題」


 ニーナが短く言った。すぐに、ボム家の代表が立ち上がった。


「北海道の実効統治について、提案があります」


 会議が始まった。内容は明確だった。日本の北海道を、カーカラシカの実質的な支配下に置く。そして、その管理をキモン家に委ねる。


「キモン家は、我々と日本の架け橋となる」


 ボム家の代表が続けた。


「そして、セツナ様の存在により、両国の結びつきはより強固になる」


 イシュタル家の代表も賛同した。


「セツナ様は、メルベル様の血を引く正統な後継者。我々の一員として認めるべきです」


 議論は続いたが、結論は最初から決まっていたようなものだった。


「……承認」


 ニーナの一言で、すべてが決定した。

 キモン家は、カーカラシカの五番目の大家として認められた。そして、北海道の実効統治権を正式に委任された。

 セツナは内心で喜んでいた。これで、自分の立場はさらに強固になる。日本の他の四家など、もはや相手ではない。

 会議が終わった後、ニーナはセツナを別室に呼んだ。


「……セツナ」


 ニーナは、セツナの顔を優しく撫でた。


「……あなたは……私に……似ている」


 途切れ途切れの言葉だったが、セツナには女帝の気持ちが伝わった。ニーナは、セツナを本当に気に入っているのだ。


「陛下……」


「……強く……なりなさい」


 ニーナの赤い瞳が、静かに輝いた。


「……この星を……守るために」


 セツナは深く頷いた。しかし、心の中では別のことを考えていた。


「強くなる。そして、七夕竹彦を必ず……」


           *


 東京、アマガワ事務所。

 キヨシが電話を切った。顔が青ざめている。


「どうしたんや?」


 アスカが心配そうに聞いた。


「北海道が……カーカラシカのものになるって」


 事務所が静まり返った。


「詳しく」


 マリアが促した。

 キヨシは説明した。おじさんから聞いた話を。キモン家がカーカラシカの五番目の大家として認められ、北海道の実効統治権を得たことを。


「つまり」


 京介が重い口を開いた。


「日本は、領土を失ったということか」


「形式上は日本のままだけど……」


 キヨシは頭を抱えた。


「実質的には、カーカラシカが支配する」


 竹彦が不安そうに言った。


「セツナさんの立場も、より強くなったということですね」


「最悪」


 マリアが短く言った。


「計画に見直し必要」


 事務所に重い空気が流れた。事態は、想像以上に深刻な方向へ進んでいた。


「でも」


 キヨシが言った。


「おじさんは、まだ諦めてない。他の三家と協力して、何とかする方法を探すって」


「希望的観測」


 マリアが冷たく言った。

 しかし、他に道はなかった。

 窓の外では、東京の街が平和に見えた。しかし、その平和の下で、大きな変化が起きようとしていた。

 セツナは今頃、カーカラシカで自分の新しい地位を謳歌しているだろう。そして、復讐の機会を狙っているに違いない。


「とりあえず」


 アスカが言った。


「エンジニアの買収、進めようや」


「了解」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ