第三十四話「常識外れの怪力」
竹彦の登場に、マルコ・ジョルダーノは不敵な笑みを浮かべた。
「おやおや、戦士連盟の0級がお出ましか」
マルコは優雅に髪をかき上げた。
「これは絶好の機会だ」
ヴィンチェンツォが頷いた。
「我々の製品の優秀さを証明する、またとないチャンスだな」
アントニオも腕を組んだ。
「0級を殺したとなれば、銀河連盟も我々の科学力を認めざるを得ない」
ルカが高笑いした。
「ミレニオンは銀河進出を果たすぞ!」
竹彦は汗を拭いながら、RVウイルス兵器の群れを見渡した。十体以上の不死身の兵士たち。そして、その中心には京介がいる。
「なんて連中だ……」
竹彦は歯を食いしばった。
「みんなを助けられるのか……?」
マルコは指を鳴らした。
「実験体K、そして全RVウイルス兵器。標的を変更。七夕竹彦を殺せ」
京介と兵器たちが、一斉に竹彦に向かった。
竹彦は深呼吸をした。そして、拳を構えた。
「だりゃあ!」
最初の一撃で、RVウイルス兵器の一体が吹っ飛んだ。いや、吹っ飛んだという表現では生ぬるい。上半身が完全に消滅していた。
「……は?」
マルコの笑みが凍りついた。
竹彦は止まらなかった。次の兵器の頭を掴み、握り潰す。再生が始まる前に、体を引き裂いた。
「だりゃあ! だりゃあ!」
常識外れの怪力だった。RVウイルスの再生能力が追いつかないほどの破壊力。兵器たちは次々と粉砕されていく。
「バカな!」
ヴィンチェンツォが叫んだ。
「再生速度を超えている!?」
竹彦の攻撃は無差別だった。邪魔だと判断した銀河連盟の警備員も、ついでに殴り飛ばしていく。
「うわあ!」
「化け物だ!」
警備員たちが逃げ惑う中、竹彦はRVウイルス兵器を文字通り蹴散らしていった。壁に叩きつけ、床に埋め込み、天井を突き破らせる。
アスカは血まみれになりながらも、嬉しそうに笑った。
「どや!」
彼女は幹部たちを指差した。
「うちの大将の常識の無さ、みたか! こら!」
マルコたちは言葉を失っていた。最強の兵器が、まるで紙くずのように破壊されていく。
京介が動いた。
鋭い剣閃が竹彦を襲う。しかし、竹彦は紙一重で避けた。そして、カウンターの拳を京介の腹に叩き込む。
「ぐっ……」
京介が初めて声を漏らした。数メートル後退し、片膝をついた。
「京介さん、すみません」
竹彦は申し訳なさそうに言った。
「でも、みんなを助けないといけないんです」
京介は立ち上がり、再び斬りかかった。竹彦は素手で刀を受け止める。
ガキィン!
火花が散った。二人の力がぶつかり合い、床にひびが入る。
「だりゃあ!」
竹彦が京介を投げ飛ばした。京介は壁を突き破り、隣の部屋まで吹っ飛んでいく。
竹彦はすぐに追いかけた。二人の戦いは、船の構造物を破壊しながら続いていく。
ドガン! ガシャン!
壁が崩れ、天井が落ち、床が抜ける。まるで解体工事のような激闘だった。
マリアは呆然と見つめていた。
「パパが……押されてる」
確かに、竹彦が徐々に優勢になっていた。京介の動きは正確だが、竹彦の純粋な暴力の前では分が悪い。
京介が大きく吹っ飛ばされ、瓦礫の山に埋もれた。
竹彦は肩で息をしながら、振り返った。
「マリアさん、アスカさん、大丈夫ですか!」
「なんとか……」
アスカが答えた。
キヨシもようやく起き上がってきた。
「うう……何が起きてんだ……」
マルコたちは青ざめていた。
「まだだ」
マルコが震え声で言った。
「京介はまだ戦える……」
瓦礫の山が動いた。京介が立ち上がる。服はボロボロだが、すぐに傷が塞がっていく。
竹彦は仲間の元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか!」
アスカの腕の傷を確認し、キヨシを起こそうとする。その隙を、マルコは見逃さなかった。
「今だ!」
マルコが叫んだ。
「動けない奴らを狙え!」
回復したRVウイルス兵器たちが、一斉にマリアたちに襲いかかった。
「くそっ!」
竹彦は咄嗟にマリアの前に立ちはだかった。RVウイルス兵器の爪が、竹彦の背中を引き裂く。
「ぐっ……」
血が飛び散った。竹彦は痛みに顔を歪めながらも、マリアを守り続ける。
「竹彦!」
マリアが叫んだ。
別のRVウイルス兵器が、倒れているキヨシに迫る。竹彦は身を翻してキヨシも庇った。今度は腹に深い傷を負う。
「がはっ……」
竹彦が膝をついた。
アスカが必死に応戦しようとするが、腕の傷で思うように動けない。
「あかん……みんなやられる……」
京介がゆっくりと前に出た。刀を構え直し、傷だらけの竹彦に狙いを定める。
ヴィンチェンツォが笑った。
「やはり数の力は偉大だな」
アントニオも頷いた。
「一人で全員を守るのは無理だ」
ルカが嘲笑った。
「0級も大したことないな」
竹彦は血を吐きながら立ち上がった。しかし、足元がふらつく。
「まだ……まだ終わってない……」
京介の刀が、竹彦に向かって振り下ろされた。




