第三十三話「RVウイルス兵器」
銀河連盟の巨大宇宙船は、もはや戦場と化していた。警報が鳴り響く中、マリアたちは機関室から次のエリアへと突き進んでいた。
「ええ感じや!」
アスカが重火器を構えながら走った。
「警備員なんて敵やないで!」
キヨシも奪ったエネルギー銃で援護しながら、内心驚いていた。目の前に現れた爬虫類型のエイリアンを、反射的に蹴り飛ばす。エイリアンは壁まで吹っ飛んで気絶した。
「まじ?」
キヨシは自分の足を見下ろした。
「俺って、もしかして強くない?」
マリアは端末を操作しながら冷静に分析した。
「エネルギー値1050。銀河基準でも高レベル」
「へー、俺すげーじゃん」
キヨシが調子に乗り始めた。
「なんか覚醒しちゃった感じ?」
次の角を曲がると、別の警備員が三人いた。キヨシは勢いよく飛び出した。
「くらえ! 俺の必殺キック!」
一人目を蹴り飛ばし、二人目にエルボーを決める。三人目は怯えて逃げ出した。
「どうだ!」
キヨシが得意げに振り返った。
その時、船の外壁に何かが衝突した。轟音と共に、壁に大きな穴が開く。
「なんや!?」
アスカが身構えた。
穴から、黒い戦闘服を着た兵士たちが次々と侵入してきた。ミレニオンの私兵だった。
「増援か」
マリアが舌打ちした。
私兵たちは訓練された動きで展開し、一斉に銃撃を開始した。三人は物陰に隠れる。
「数が多い」
マリアが状況を分析した。
「正面突破は無理」
アスカが壁から身を乗り出して反撃した。
「でも、こいつらも大したことないで!」
確かに、ミレニオンの私兵は訓練されているが、アスカの怪力やマリアの正確な射撃の前では分が悪い。キヨシも調子に乗って飛び出していく。
「俺の覚醒パワーを見ろ!」
しかし、次の瞬間、状況は一変した。
私兵たちの後方から、異様な雰囲気を纏った部隊が現れた。全員が青白い肌をしており、目は虚ろで、まるで死人のようだった。
「RVウイルス兵器……」
マリアの声が震えた。
最前列を歩くのは、京介だった。手には日本刀を持ち、無表情で立っている。
「パパ……」
京介の後ろには、十人以上のRVウイルス兵器が控えていた。全員が異常な身体能力を持つ、不死身の兵士たちだ。
「あかん」
アスカが青ざめた。
「こいつらは別格や」
RVウイルス兵器たちが、ゆっくりと前進を始めた。その動きは機械的だが、恐ろしいほど正確だった。
キヨシは勢いよく飛び出した。
「関係ねー! 俺の覚醒パワーで」
京介が動いた。
一瞬だった。京介の拳がキヨシの腹に叩き込まれ、キヨシは廊下の向こうまで吹っ飛んだ。壁に激突し、ずるずると崩れ落ちる。
「が……はっ……」
キヨシは血を吐いた。
「あ、やっぱ……全然強くないわ……」
意識が朦朧とする中、キヨシはぐったりと倒れ込んだ。
「キヨシ!」
アスカが叫んだ。
京介は無表情のまま刀を抜いた。銀色の刃が、船内の光を反射する。
アスカは重火器を乱射した。しかし、京介は信じられない動きで弾丸を刀で弾いていく。火花が散り、弾丸は壁や天井に突き刺さった。
「なんやそれ!」
アスカが驚愕した。
「チートやんけ!」
他のRVウイルス兵器も攻撃を開始した。彼らは痛みを感じないのか、撃たれても倒れない。傷はすぐに塞がり、何事もなかったかのように前進を続ける。
マリアは二挺拳銃で応戦したが、効果は薄い。
「再生能力が高すぎる」
京介がアスカに斬りかかった。アスカは咄嗟に腕でガードする。
刃が肉に食い込む音がした。
「いってええええ!?」
アスカが絶叫した。
血が飛び散る。しかし、刃は骨で止まった。
ガキィン!
金属音が響いた。京介の刀が、アスカの骨に阻まれている。
「……なに?」
初めて、京介の表情に変化が現れた。わずかな困惑。
マルコも目を見開いた。
「何だと!?」
アスカは斬られた腕を見下ろした。筋肉は切り裂かれ、血が流れているが、骨は無傷だった。
「あ、あかん」
アスカは青ざめた。
「お手上げや……どないせーちゅうんじゃ!」
彼女の骨は特殊な改造を受けていたが、それでも京介の猛攻には耐えきれない。次々と斬りつけられ、じりじりと後退していく。
「興味深い」
マルコが顎に手を当てた。
「その骨、サンプルとして欲しいね」
ヴィンチェンツォが驚嘆した。
「信じられん。あの刀を止めるとは」
アントニオも興味深そうに観察した。
「どんな改造を受けたんだ?」
その時、通路の奥から激しい戦闘音が響いてきた。
「うわあああああ!」
絶叫と共に、RVウイルス兵器たちが次々と吹っ飛んでくる。壁に激突し、天井を突き破り、あちこちに転がっていく。
「なんだ!?」
ルカが慌てた。
煙の中から、小柄な人影が現れた。汗だくで、息を切らしている。褐色の肌に赤い瞳。七夕竹彦だった。
「はあ、はあ……みなさんん!」
竹彦は肩で息をしながら叫んだ。
「頑張ってええええ!」
彼の後ろからも、まだRVウイルス兵器が追いかけてきている。竹彦は振り返りもせずに裏拳で殴り飛ばした。




