第二十四話「捕虜たちの作戦」
意識が戻ってきた。
「エネルギー値1050か……高く売れそうだ」
プレデターのような店員の声が、ぼんやりと聞こえる。
キヨシは冷たい肌の大男に背負われていることに気づいた。手足が動かない。バンテージのようなもので、がっちりと固定されている。
薄暗い部屋に放り込まれた。
周りを見ると、様々なエイリアンたちがいた。カバ型が特に多い。みんな、どこか絶望したような表情で座り込んでいる。
「おい!」
プレデター店員が、青白い男を怒鳴りつけた。
「ノルマは今月あと3匹だぞ! カバをもっと連れてこい! 愛想笑いぐらいして、もっと自然に誘い込めないのか!」
青白い男は無言だった。表情一つ変えない。
ガチャン。
重厚な金属製のドアが閉まり、鍵がかかった。
キヨシは懐を探った。高周波ブレードのナイフがまだある。携帯電話は圏外。
「ずさんだな……」
敵の警戒心の低さに、わずかな希望を見出した。
まずは情報収集だ。比較的話が通じそうな、人間型の女性エイリアンに話しかけた。
「ここは一体どこなんだ?」
「連中のアジトの一つよ」
女性は疲れた声で答えた。
「一日一回くらい、誰かが連れて行かれる」
「ドラッグストアから攫われたのか?」
「私はレストランからよ」
なるほど、複数の拠点があるらしい。
「暴れるのはやめた方がいいわ」
女性が指差した先には、瓦礫の山があった。
「岩石系のエイリアンが暴れたけど、あの男に……」
崩れた岩の残骸。それが元は生きていたエイリアンだったとは。
キヨシは捕虜たちを見回した。怯えてはいるが、結構強そうな見た目の者もいる。
「あの青白い男を倒せれば……」
少しずつ、まだ目に光が残っているエイリアンたちに話しかけた。
「あいつが入ってきたら、不意打ちで倒そう。このまま黙ってたら、全員殺されるぞ」
数人が頷いた。希望の火が、少しずつ灯り始める。
何時間か経過した。
「竹彦は俺を見失ったか……」
自力脱出しかない。そう覚悟を決めた時——
ガチャン。
鉄製の扉が開いた。
入ってきたのは——
「アスカさん!?」
アスカが部屋に叩き込まれ、目を回していた。
「えーっと……アスカさん?」
「あ?」
アスカがパッと目を覚ました。
「お前、一体どこ行っとったんや! 大騒ぎしとるで!」
「どうもこうも、捕まったんだよ! アスカさん、すごい殺し屋だったんじゃないんですか?」
「あかんわ」
アスカが服をめくった。腹部に刀傷。
「あいつ、ごっつう強い。お前探すために竹彦と別れて探しとったら、あっという間にやられてもうた」
傷は異常な回復力で既に血が止まっているが、深手だったのは明らかだ。
キヨシが不意打ちの計画を話すと、アスカは首を振った。
「たぶん無理や。相手は武器持っとるし、ウチは今丸腰」
「これがある」
キヨシが高周波ブレードを見せた。
「なるほど……これやったら何とかなるかも」
アスカが考え込む。
「けど、あいつの反応速度は普通やない。よっぽど注意引きつけんと無理かも」
どうすればいいか考えていると、アスカが手を打った。
「ええアイデアがある!」
「どんな?」
アスカは自分のスーツの胸元をバッと開けた。
「色仕掛けや!」
「は?」
「このダイナマイトボディで悩殺してる間に、お前が後ろからブスッと刺す。ウチはその後であいつの金玉蹴り上げる。完璧な作戦や!」
キヨシは絶句した。
「いや、絶対無理だろ」
「なんやて!?」
「あの男、表情一つ変わらないし、絶対洗脳されてる。人間的な方法が通じるとは思えない」
「ウチがブサイクやって言いたいんか!」
「そうじゃなくて! 相手に興味なかったら無理でしょ!」
「あいつがホモやなんて聞いとらんぞ! 絶対効果ある!」
アスカは胸を張った。文字通り。
周りの捕虜たちも、呆れた顔で聞いている。カバの一匹が小さく鼻を鳴らした。明らかに「バカじゃないの」という感じだ。
でも、他に案はない。
「……分かった。アスカさんが注意引いてる間に、俺が後ろから刺す」
「そうや! それでええ!」
アスカは自信満々だ。
キヨシは高周波ブレードを握りしめた。刃が微かに振動している。
これで、あの怪物のような男を倒せるだろうか。
いや、倒すしかない。
皆の命がかかっている。
次にドアが開くのを、息を殺して待った。




