第百五十八話「互角の激突」
瓦礫と化した公園で、竹彦はゆっくりと立ち上がった。全身に土埃をまとい、白いタキシードはもはやボロボロだったが、その目には闘志が燃えていた。
「まだまだ……」
商業地区から、デストロイヤーが地響きを立てながら突進してきた。
「パニッシャアアアア!」
二人の巨体が激突し、手四つで組み合った。筋肉と筋肉がぶつかり合い、地面がひび割れていく。
(組み合える……!)
竹彦は内心驚いていた。以前なら、デストロイヤーの怪力に一瞬で押し潰されていただろう。しかし今は、188センチまで成長した体と、アーティカルアームの補助で、なんとか拮抗している。
「ぬううう!」
デストロイヤーも予想外の抵抗に目を見開いた。しかし、その隙を竹彦は見逃さなかった。
「今だ!」
渾身の頭突きが、デストロイヤーの鼻っ面に炸裂した。
「ぐはっ!」
怯んだ瞬間、竹彦は素早く足払いをかけた。
「だりゃあ!」
気合と共に、連続パンチを繰り出す。黒いゆらめきを纏った拳が、次々とデストロイヤーの体に叩き込まれた。
「がっ、ぐっ!」
デストロイヤーはよろめきながら後退した。この一年で初めて、真正面からの殴り合いで押されている。
(なんだ、こいつは……前とは別人じゃないか!)
しかし、その驚きはすぐに怒りに変わった。花嫁を奪われた屈辱が、理性を吹き飛ばす。
「ゆるさんぞおおおお!」
咆哮と共に、デストロイヤーが反撃に転じた。巨大な拳が竹彦の腹部に突き刺さる。
「ぐふっ!」
竹彦が吹き飛び、オフィスビルの壁を突き破った。しかし、すぐに立ち上がり、ビルの中から飛び出してくる。
「まだだ!」
二人は街中を移動しながら、激しい攻防を繰り広げた。
デストロイヤーのエネルギー弾が商店街を吹き飛ばし、竹彦の黒い法力が高層マンションを崩壊させる。逃げ惑う市民たちの悲鳴が響く中、二人の戦いはエスカレートしていく。
「俺の花嫁をおおお! 返せええ!」
デストロイヤーは完全に我を失っていた。理性的な会話などもはや不可能で、ただ怒りのままに暴れ回る。
竹彦は冷静にデストロイヤーの動きを観察していた。そして、あえて挑発的な言葉を投げかけた。
「あんな美人が、お前に本気になるわけないだろうが!」
「なんだとおおお!?」
デストロイヤーの顔が真っ赤に染まった。
竹彦はさらに煽った。
「アスカさんは演技してただけだ! お前みたいな筋肉ダルマ、好きになるわけない!」
「うるさいいいい! アスカは俺を愛してる!」
「どこがだよ! いつも嫌そうな顔してたじゃないか!」
その言葉が、デストロイヤーの最後の理性を破壊した。
「ぎゃああああ!」
獣のような唸り声を上げ、デストロイヤーは完全に暴走状態に入った。手当たり次第にエネルギー弾を放ち、周囲の建物を次々と破壊していく。
飛空挺から戦いを見守っていたアスカが、呆れた声を上げた。
「あいつ、わざと煽ってるな」
マリアが冷静に分析した。
「理性を失わせて、動きを単調にする作戦。効果的」
「でも、街がめちゃくちゃや……」
確かに、戦場となった地区は既に壊滅状態だった。かつて賑わっていた繁華街は、瓦礫の山と化している。
竹彦はデストロイヤーの暴走を利用し、的確にカウンターを決めていく。理性を失った攻撃は威力こそ凄まじいが、単調で読みやすい。
「そこだ!」
黒い炎を纏った蹴りが、デストロイヤーの側頭部に直撃した。
「ぐおおお!」
デストロイヤーが横転し、地面に巨大なクレーターを作る。
しかし、すぐに立ち上がり、血走った目で竹彦を睨みつけた。
「殺してやるうううう!」
両手を合わせ、巨大なエネルギー球を作り出す。その大きさは、ビル一つ分はあろうかという規模だった。
「これで終わりだああ!」
竹彦も黒い法力を限界まで高めた。全身から黒いゆらめきが立ち上り、そこに突進していく。
「いくぞ、デストロイヤー!」
二人の最大出力がぶつかり合おうとしていた。
その瞬間、銀河中継の視聴率が90%を突破した。銀河中の人々が、固唾を呑んで見守っている。
萌が舞台袖で祈るように手を合わせた。
「竹彦くん……」
ニーナもカーカラシカから中継を見ながら、息子の無事を願っていた。
「メル、生きて帰ってきて……」




